思わぬ良作(?)「おちこぼれフルーツタルト」アニメ総括!

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 もうかれこれ2年近く前の話になるでしょうか。まんがタイムきららキャラットで「3号連続重大発表」という企画が発表されたことがありました。次号から3号に渡って重大発表を続けるというもので、その内容は当初すべて伏せられていて、一部読者の間では様々な推測で持ちきりになりました。

 

 アニメ化という推測が最も有力で、蓋を開けてみればやはりすべて連載作品のアニメ化でした。最初に発表された第1弾が「まちカドまぞく」、第2弾が「恋する小惑星」、そして最後に発表されたのが今回取り上げる「おちこぼれフルーツタルト」です。いずれも当時のキャラットで雑誌の中心的な人気作品だったので、おおむね納得できる結果ではあったのですが、ただこの「フルーツタルト」だけは、原作連載時から色々と物議を醸す問題作であっただけに、この時から「アニメ化されて大丈夫か?」という声が聞かれたことをよく覚えています。

 

 その後、2019年夏「まちカドまぞく」、2020年冬「恋する小惑星」とそれぞれのアニメ放送が好評を博し、そして最後に2020年秋になってこの「おちこぼれフルーツタルト」のアニメスタート。3つの作品の中では最も後になり、さらには新型コロナの影響での制作の遅れも手伝って、最初の発表からかれこれ2年近くが経過していたのです。

 

 タイトルの「フルーツタルト」は、作中で登場するアイドルユニットの名前。売れない子役・売れないミュージシャン・売れないモデルなど芸能界の「おちこぼれ」たちと、上京してきたばかりのアイドル志望の女の子で新規アイドルユニットを結成。彼女たちが住むアパートの存続をかけて再起の芸能活動に挑むという、明るくにぎやかなコメディとなっています。

 

 作者は浜弓場双さんで、あの名作「ハナヤマタ」の作者の新規4コマ連載でもありました。当初は並行して連載していたのですが、前作の「ハナヤマタ」と比較すると、シリアスだったり暗いエピソードはほとんどなく、ギャグとコメディに振り切れた明るいコメディとなっていたのが最大の特徴で、こちらの作風でも非常な好評を博しました。

 

 しかし、それと同時に色々と物議を醸す問題作でもあり、主人公が緊張すると漏らす(漏らしそうになる)癖があったり、ストーカーだったりにおいフェチだったり、どこか(性的に)汚いネタがとにかく多く、前作のハナヤマタに比べると圧倒的にきたない(笑)。そのため、アニメ化が決まった当初から、「これをアニメ化して大丈夫か?」という声が絶えなかったのです。

 

 そして、そんな噂が各所で聞かれつつも、ついにこの秋からアニメ放送がスタート。当初から期待と不安の声が入り混じっていましたが、ふたを開けてみると思った以上の出来となっていて、ハイレベルな演出とテンポの良いギャグで心の底から楽しめる良作になっていたのです!

 

 懸念されていたきたない系のネタも、明るい雰囲気とテンポの良さでうまく緩和されているようで、確かにやばいネタはいくらでも散見されるものの、それ以上に明るく楽しめるコメディに昇華されていて、これには感心してしまいました。なにげにアイドルものらしいライブシーンの素晴らしさは特筆に値します。また、原作の時から舞台は小金井に設定されていて、各所の風景が積極的に取り入れられている作品でもありましたが、アニメの制作も当地に本社を置くフィール(feel.)が担当。東小金井駅前を筆頭にやはり各所の風景が綺麗な作画で描かれ、さらには当地の行政も全面協力して聖地巡礼のコラボ活動を積極的に行うなど、ご当地アニメ的な魅力も十分なものになっていました。

 

 原作の方の汚さは、あと2回くらいレベルアップを残しているほどやばいものでもあるのですが、アニメとしてはこれで十分ではないかと思います(笑)。2年前から楽しみにしていたキャラット3大作品のアニメ化。それは最後の作品まで有終の美を飾るものであったと思います。