「なんで鳥取なのかしら?」

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 先日放送された「宇崎ちゃんは遊びたい!」10話。これが全編に渡って鳥取推しの観光ガイドのような特別編になっていて、驚いた人も多かったのではないかと思います。前話最後にくじ引きで鳥取旅行が当たったことをきっかけに、キャラクターたちがこぞって鳥取へと向かうという内容だったのですが、それまでの話で特に鳥取が出てくることはなく、あるいは原作でも特に鳥取と関連することもなく(いわゆるアニメオリジナル)、作中のキャラクターのセリフそのままに「なんで鳥取なのかしら?」という感想しか出てきませんでした。

 

 実際のところ、これは鳥取県と強力にタイアップした企画であり、そのために本当に観光ガイド的な1話になっていました。しかし、それが10話というアニメの終盤になって、特に予告もなく始まるのはかなり意外で、誰もが驚くのも無理はありません。(実際には7月の放送開始時からタイアップの企画は始まっていたようですが、それまでのアニメで鳥取が出てくることはほとんどなく、実質的なタイアップはほぼ10話のみに集中していました。)

 

 その内容も非常に気合の入ったもので、冒頭の空港でいきなり鳥取知事が登場したのを皮切りに、鳥取砂丘三朝温泉・白兎神社・大山・境港の水木しげるロードなど、鳥取県中の主な観光地を網羅する勢い。空港(鳥取砂丘コナン空港)が全面的にコナン推しになっている光景にもまず驚いたのですが、水木しげるロードでも彼の妖怪画をそのままアニメで動かすなど強いこだわりが感じられました(どちらも許可を得ての登場)。

 

 最も印象に残ったのは、この回だけの特別エンディングの画像で、本編で登場し切れなかったところまで鳥取の名所の数々が1枚絵で次々と登場。実際の風景を取り入れた膨大なカット数に驚いてしまいました。まさに1話まるごと鳥取観光ガイドと言ってよい。

 

 これを見てちょっと思い出したのが、先日春より放送された「邪神ちゃんドロップキック」2期の最後に登場した「千歳編」です。こちらは、なんとふるさと納税の制度を使って集めた資金で、千歳を舞台にしたアニメの特別編を制作するというもので、やはり千歳市ぐるみの企画。アニメ本編にも企画に関わった市長や関係者が登場、支笏湖を初めとした観光地各所を邪神ちゃんたちが巡るというもので、今回の宇崎ちゃん鳥取編とかなり近いコンセプトを感じました。

 

 このふたつの企画が、これまでの「聖地巡礼」を推す活動と異なるのは、作品の舞台となった地元が聖地(舞台)を推して盛り上げるのではなく、本来特に関係ない場所が外から作品を呼び込んで観光企画を行うというものです。どちらも行政が積極的に絡んでいる点も特徴で、これまでの聖地巡礼よりもさらに積極的で、これが今のコンテンツツーリズムの最先端なのかもしれない・・・と感心してしまいました。

 

 作品と本来まったく関係ない場所が、観光を盛り上げるために作品を利用するのはどうかと思う向きもあるかと思いますが、個人的には大いに歓迎したいところですね。詳細に描かれた実在の名所を見るだけで楽しいし、そんな場所でキャラクターがいつもどおりの行動を取るのも楽しい。なんで千歳? なんで鳥取? と視聴者の間でネタになるのも楽しい(笑)。いいんじゃないかと思いますね。