「ぼっちざろっく!」できらら作品を知った方のためのきららアニメガイド(2009→2022 けいおん!→ぼっちざろっく!)。


個人的にもきらら本命として期待していた「ぼっち・ざ・ろっく!」のアニメが、予想以上の大ヒットになって、嬉しさと同時にひどく驚いているところですが、ここで思ったのが、今回この「ぼざろ」に触れた視聴者の中には、他のきらら作品のアニメをまだ観てない、これで初めてきらら作品を知ったという人も大勢いるのではないか?ということです。

また、かれこれ13年前(2009年)のアニメでこちらも大ヒットとなった「けいおん!」を思い出したという声も多数見られますが、実際この「けいおん!」と「ぼっちざろっく!」しか知らない、見たことがないという人もかなりいるのではないかと思っています。

そこで、今回はこうした視聴者の方のために、他のきららアニメ(「まんがタイムきらら」系列の原作アニメ)のおすすめを紹介しようと思い立ちました。きららアニメには他にも熱心なファンを抱える人気作は多く、比較的注目されなかっただけでおすすめ出来る良作はたくさんあると思います。

2022年現在「ぼっち・ざ・ろっく!」を最新作として、きらら原作のアニメ化作品は全部で35あります。上記の画像は2021年末に開催された「きらら展」のメインビジュアルですが、この時点で32作品あり、その後さらに3作品追加されました。この作品のほとんどを私は見ていますが、一方でこうした作品をほとんど見たことがない人も大勢いると思うのです。そうした方のために、かつてのヒット作「けいおん!」の時代から年代順に主要作品を紹介していこうと思います。

まず、「けいおん!」と並ぶ初期きららの代表作として「ひだまりスケッチ」(2007)は挙げておきたいと思います。美術高校を舞台にした学園コメディとして高い人気を博し、シャフトの手で4回もアニメ化されるヒット作になりました。原作はいまだに連載が続く超長期連載であり、これは今でも知っている人は多いと思います。

そしてその「けいおん!」がアニメ化されるのが2009年。きららならではの楽しい日常+音楽作品として、何より京都アニメーションの手で圧倒的にレベルの高いアニメとなったことで空前のヒット作となります。

その「けいおん!」とほぼ同時期の開始作品で、少し遅れてアニメ化されるのが「Aチャンネル」(2011)「キルミーベイベー」(2012)「ゆゆ式」(2013)です。「キルミー」はきららの中でも異色のギャグですが、「Aチャンネル」と「ゆゆ式」はきらららしい学園コメディで、いずれも原作は10年を超える長期連載となります。この中でも2013年の「ゆゆ式」の存在はかなり重要で、この後のきらら作品の人気のきっかけとなった作品だと思っています。ひだまりやけいおんのヒットの頃とはまた違った、今に至るきららクラスタが登場するのがこの「ゆゆ式」からなのです。「ゆゆ式」自体も、オーソドックスな日常ものだけではない会話劇の面白さやアニメの叙情的な演出で、ある種のカルト的な人気を誇ります。

そして、この後に続くさらなる人気作品として「きんいろモザイク」(2013)「ご注文はうさぎですか?」の2作品ははずせません。いずれもきららを代表する人気作品で、とりわけ現在も連載が続く「ごちうさ」こと「ご注文はうさぎですか?」は、3期までアニメ化されいまだ人気は衰えない大ヒット作品となっています。今でもきららで最も知られた作品のひとつではないでしょうか。

個人的には、この「きんモザ」「ごちうさ」の代表的2作品に加えて、先ほどの「Aチャンネル」「キルミーベイベー」「ゆゆ式」あたりを、きらら未視聴者の方にはまず見ていただきたいです。

ごちうさと同年の2014年から「ハナヤマタ」も取り上げておきたいです。きららの原作は4コママンガが中心ですが、これは非4コマ雑誌フォワード掲載のストーリーマンガ。よさこいをテーマにした青春活劇で今でも心に残る名作だと思います。

その同じフォワード連載から2015年にアニメ化されたのが「がっこうぐらし!」。きららの中でも(当時)異色とも言えたホラー作品で、しかも当初その内容を伏せて放送したことから圧倒的な話題となりました。異色ではあるもののきらららしい楽しさも備えた作品で、これも是非押さえておきたいです。

翌2016年からは「あんハピ♪」「三者三葉」「ステラのまほう」「NEW GAME!」の4作品を挙げたい。この辺りからアニメ化作品が急激に増え、きららアニメが熱心なファンを抱えるジャンルとして完全に定着します。

いずれも良作ですが、この中でも最大のヒットとなったのが「NEW GAME!」でしょうか。ゲーム制作会社での仕事を描いた作品で、きららの中でも社会人のお仕事を描いた作品として非常に注目を集めました。アニメ化以前に原作のセリフ「今日も一日がんばるぞい!」がなぜかネットミームとして大流行したという経緯もあり、きららの中でもとりわけよく知られた作品となっています。

翌2017年からは「ブレンド・S」を取り上げたい。メイドカフェのようなコンセプトカフェを舞台にした作品で、きららの中では珍しく男性キャラクターの活躍も光る楽しいコメディ。このあたりから海外でも配信が始まり、当時ネタ動画が流行ったこともあってとりわけ海外人気も高い作品となっています。

翌2018年はとりわけ注目すべき作品が多い。まず「ゆるキャン△」は絶対にはずせないところです。キャンプを楽しむ女子高生たちを主役にしたこの作品が空前の人気を博し、当時流行しつつあったキャンプブームを一気に沸騰させ、この一作だけでソロキャンブームまで生み出す大ヒット作となりました。キャンプに旅行にグルメと見ていてとにかく楽しい幸福度満点のアニメで、あまりに楽しすぎて「体感5分」と言われるまでです。「けいおん!」「ごちうさ」に匹敵する、あるいはそれ以上のヒット作かもしれません。

さらに「ゆるキャン△」と同クールのアニメで「スロウスタート」も取り上げたいところです。これは「ぼっち・ざ・ろっく!」と同じCloverWorksによるアニメ化で、こちらも数々の演出が光る良作でした。人見知りのする少女・花名の友達となったクラスメイト3人が彼女をバックアップする構成は、今思えば「ぼっち・ざ・ろっく!」と少し共通したところもあるような気がします。

もうひとつ2018年から「こみっくがーるず」も絶対外せないです。マンガ家志望の4人の高校生の活動を描くマンガ家マンガでもあるのですが、主人公の「かおす先生」こと萌田薫子の個性が異様で、その極端にネガティブでオタクな性格は多くの視聴者に強いインパクトを残しました。最近は「ぼっち・ざ・ろっく!」の主人公ような陰キャ系キャラクターがきららでトレンドになっているのですが、そのようなキャラクターが流行るきっかけになったような気がします。

翌2019年からはさらなるヒット作「まちカドまぞく」が登場します。まぞく(魔族)の少女と魔法少女の対決を軸にしたコメディですが、個性的すぎるキャラクターと意外なほど重いストーリー、神話や伝説や科学を元ネタにした数々のモチーフで非常に濃密で面白い作品となっています。連載初期からきらら最有力作品として長らく期待されていましたが、アニメも大ヒットする名作となりました。「ぼっち・ざ・ろっく!」とも並ぶ現在のきららの大名作として是非押さえていただきたいです。

2020年からは「恋する小惑星」というこちらも名作が生まれています。高校の地学部の部員たちの活動を描くこのアニメ、好きなものに対する積極的で楽しい活動ぶり、地質学や地理学・天文学に対する深い描写で今でも熱心なファンがとりわけ多い作品です。

同じく2020年から「おちこぼれフルーツタルト」もはずせないですね。おちこぼれのアイドルたちの笑える活動ぶりを楽しく描いたこの作品、下品なコメディがあまりに面白いのですが、同時にアイドルものとしてもレベルが高い良作だったと思います。

翌2021年はなんと1本もなし。このあたりからきららアニメの本数が減ってきた気がします。しかし、次の2022年には冒頭から「スローループ」という良作が登場。釣りをテーマに人と人、家族と家族の繋がりを描いたこの作品もまた秀逸です。

同年の「RPG不動産」はきららからはかなり珍しいファンタジー作品のアニメ化です。異世界を舞台にした不動産会社の従業員の活躍ぶりを描くこのアニメ、現実の社会とRPGネタを取り交ぜた作風が楽しく、これもまた近年の良作でした。

そして同年の2022年末。ついにこの異例の大ヒット作となった「ぼっち・ざ・ろっく!」に至るわけです。この作品がここまでヒットした理由は、作品自体の尖った面白さに加えて、CloverWorks制作で土曜深夜0時枠という今までにない力の入ったアニメであったことと、ガールズバンドという多数の一般の視聴者にも親しみやすいモチーフだったことが大きいと見ています。これは「けいおん!」にも共通したところだと思いますね。

しかし、他のきららアニメも、基本的にすべて良作ではずれはない!と思っています。みんなこれに匹敵する面白さを持っていて、ここで紹介し切れなかった作品もみんな楽しい作品ばかりです。この「ぼっち・ざ・ろっく!」で初めてきららアニメを知った方、「けいおん!」と「ぼっち・ざ・ろっく!」しかまだ見たことのない方も、これをきっかけにひとつでもきらら作品に触れて、その楽しい世界に足を踏み入れてもらえれば幸いです。