「ぼっちざろっく!」できらら作品を知った方のためのきららアニメガイド(2009→2022 けいおん!→ぼっちざろっく!)。


個人的にもきらら本命として期待していた「ぼっち・ざ・ろっく!」のアニメが、予想以上の大ヒットになって、嬉しさと同時にひどく驚いているところですが、ここで思ったのが、今回この「ぼざろ」に触れた視聴者の中には、他のきらら作品のアニメをまだ観てない、これで初めてきらら作品を知ったという人も大勢いるのではないか?ということです。

また、かれこれ13年前(2009年)のアニメでこちらも大ヒットとなった「けいおん!」を思い出したという声も多数見られますが、実際この「けいおん!」と「ぼっちざろっく!」しか知らない、見たことがないという人もかなりいるのではないかと思っています。

そこで、今回はこうした視聴者の方のために、他のきららアニメ(「まんがタイムきらら」系列の原作アニメ)のおすすめを紹介しようと思い立ちました。きららアニメには他にも熱心なファンを抱える人気作は多く、比較的注目されなかっただけでおすすめ出来る良作はたくさんあると思います。

2022年現在「ぼっち・ざ・ろっく!」を最新作として、きらら原作のアニメ化作品は全部で35あります。上記の画像は2021年末に開催された「きらら展」のメインビジュアルですが、この時点で32作品あり、その後さらに3作品追加されました。この作品のほとんどを私は見ていますが、一方でこうした作品をほとんど見たことがない人も大勢いると思うのです。そうした方のために、かつてのヒット作「けいおん!」の時代から年代順に主要作品を紹介していこうと思います。

まず、「けいおん!」と並ぶ初期きららの代表作として「ひだまりスケッチ」(2007)は挙げておきたいと思います。美術高校を舞台にした学園コメディとして高い人気を博し、シャフトの手で4回もアニメ化されるヒット作になりました。原作はいまだに連載が続く超長期連載であり、これは今でも知っている人は多いと思います。

そしてその「けいおん!」がアニメ化されるのが2009年。きららならではの楽しい日常+音楽作品として、何より京都アニメーションの手で圧倒的にレベルの高いアニメとなったことで空前のヒット作となります。

その「けいおん!」とほぼ同時期の開始作品で、少し遅れてアニメ化されるのが「Aチャンネル」(2011)「キルミーベイベー」(2012)「ゆゆ式」(2013)です。「キルミー」はきららの中でも異色のギャグですが、「Aチャンネル」と「ゆゆ式」はきらららしい学園コメディで、いずれも原作は10年を超える長期連載となります。この中でも2013年の「ゆゆ式」の存在はかなり重要で、この後のきらら作品の人気のきっかけとなった作品だと思っています。ひだまりやけいおんのヒットの頃とはまた違った、今に至るきららクラスタが登場するのがこの「ゆゆ式」からなのです。「ゆゆ式」自体も、オーソドックスな日常ものだけではない会話劇の面白さやアニメの叙情的な演出で、ある種のカルト的な人気を誇ります。

そして、この後に続くさらなる人気作品として「きんいろモザイク」(2013)「ご注文はうさぎですか?」の2作品ははずせません。いずれもきららを代表する人気作品で、とりわけ現在も連載が続く「ごちうさ」こと「ご注文はうさぎですか?」は、3期までアニメ化されいまだ人気は衰えない大ヒット作品となっています。今でもきららで最も知られた作品のひとつではないでしょうか。

個人的には、この「きんモザ」「ごちうさ」の代表的2作品に加えて、先ほどの「Aチャンネル」「キルミーベイベー」「ゆゆ式」あたりを、きらら未視聴者の方にはまず見ていただきたいです。

ごちうさと同年の2014年から「ハナヤマタ」も取り上げておきたいです。きららの原作は4コママンガが中心ですが、これは非4コマ雑誌フォワード掲載のストーリーマンガ。よさこいをテーマにした青春活劇で今でも心に残る名作だと思います。

その同じフォワード連載から2015年にアニメ化されたのが「がっこうぐらし!」。きららの中でも(当時)異色とも言えたホラー作品で、しかも当初その内容を伏せて放送したことから圧倒的な話題となりました。異色ではあるもののきらららしい楽しさも備えた作品で、これも是非押さえておきたいです。

翌2016年からは「あんハピ♪」「三者三葉」「ステラのまほう」「NEW GAME!」の4作品を挙げたい。この辺りからアニメ化作品が急激に増え、きららアニメが熱心なファンを抱えるジャンルとして完全に定着します。

いずれも良作ですが、この中でも最大のヒットとなったのが「NEW GAME!」でしょうか。ゲーム制作会社での仕事を描いた作品で、きららの中でも社会人のお仕事を描いた作品として非常に注目を集めました。アニメ化以前に原作のセリフ「今日も一日がんばるぞい!」がなぜかネットミームとして大流行したという経緯もあり、きららの中でもとりわけよく知られた作品となっています。

翌2017年からは「ブレンド・S」を取り上げたい。メイドカフェのようなコンセプトカフェを舞台にした作品で、きららの中では珍しく男性キャラクターの活躍も光る楽しいコメディ。このあたりから海外でも配信が始まり、当時ネタ動画が流行ったこともあってとりわけ海外人気も高い作品となっています。

翌2018年はとりわけ注目すべき作品が多い。まず「ゆるキャン△」は絶対にはずせないところです。キャンプを楽しむ女子高生たちを主役にしたこの作品が空前の人気を博し、当時流行しつつあったキャンプブームを一気に沸騰させ、この一作だけでソロキャンブームまで生み出す大ヒット作となりました。キャンプに旅行にグルメと見ていてとにかく楽しい幸福度満点のアニメで、あまりに楽しすぎて「体感5分」と言われるまでです。「けいおん!」「ごちうさ」に匹敵する、あるいはそれ以上のヒット作かもしれません。

さらに「ゆるキャン△」と同クールのアニメで「スロウスタート」も取り上げたいところです。これは「ぼっち・ざ・ろっく!」と同じCloverWorksによるアニメ化で、こちらも数々の演出が光る良作でした。人見知りのする少女・花名の友達となったクラスメイト3人が彼女をバックアップする構成は、今思えば「ぼっち・ざ・ろっく!」と少し共通したところもあるような気がします。

もうひとつ2018年から「こみっくがーるず」も絶対外せないです。マンガ家志望の4人の高校生の活動を描くマンガ家マンガでもあるのですが、主人公の「かおす先生」こと萌田薫子の個性が異様で、その極端にネガティブでオタクな性格は多くの視聴者に強いインパクトを残しました。最近は「ぼっち・ざ・ろっく!」の主人公ような陰キャ系キャラクターがきららでトレンドになっているのですが、そのようなキャラクターが流行るきっかけになったような気がします。

翌2019年からはさらなるヒット作「まちカドまぞく」が登場します。まぞく(魔族)の少女と魔法少女の対決を軸にしたコメディですが、個性的すぎるキャラクターと意外なほど重いストーリー、神話や伝説や科学を元ネタにした数々のモチーフで非常に濃密で面白い作品となっています。連載初期からきらら最有力作品として長らく期待されていましたが、アニメも大ヒットする名作となりました。「ぼっち・ざ・ろっく!」とも並ぶ現在のきららの大名作として是非押さえていただきたいです。

2020年からは「恋する小惑星」というこちらも名作が生まれています。高校の地学部の部員たちの活動を描くこのアニメ、好きなものに対する積極的で楽しい活動ぶり、地質学や地理学・天文学に対する深い描写で今でも熱心なファンがとりわけ多い作品です。

同じく2020年から「おちこぼれフルーツタルト」もはずせないですね。おちこぼれのアイドルたちの笑える活動ぶりを楽しく描いたこの作品、下品なコメディがあまりに面白いのですが、同時にアイドルものとしてもレベルが高い良作だったと思います。

翌2021年はなんと1本もなし。このあたりからきららアニメの本数が減ってきた気がします。しかし、次の2022年には冒頭から「スローループ」という良作が登場。釣りをテーマに人と人、家族と家族の繋がりを描いたこの作品もまた秀逸です。

同年の「RPG不動産」はきららからはかなり珍しいファンタジー作品のアニメ化です。異世界を舞台にした不動産会社の従業員の活躍ぶりを描くこのアニメ、現実の社会とRPGネタを取り交ぜた作風が楽しく、これもまた近年の良作でした。

そして同年の2022年末。ついにこの異例の大ヒット作となった「ぼっち・ざ・ろっく!」に至るわけです。この作品がここまでヒットした理由は、作品自体の尖った面白さに加えて、CloverWorks制作で土曜深夜0時枠という今までにない力の入ったアニメであったことと、ガールズバンドという多数の一般の視聴者にも親しみやすいモチーフだったことが大きいと見ています。これは「けいおん!」にも共通したところだと思いますね。

しかし、他のきららアニメも、基本的にすべて良作ではずれはない!と思っています。みんなこれに匹敵する面白さを持っていて、ここで紹介し切れなかった作品もみんな楽しい作品ばかりです。この「ぼっち・ざ・ろっく!」で初めてきららアニメを知った方、「けいおん!」と「ぼっち・ざ・ろっく!」しかまだ見たことのない方も、これをきっかけにひとつでもきらら作品に触れて、その楽しい世界に足を踏み入れてもらえれば幸いです。

個人的ぼっちざろっく以上の最大本命!新米錬金術師の店舗経営!


今季の秋アニメも始まって間もないですが、個人的に以前から期待していた作品が期待通り、いや期待を大幅に上回る出来になっていたので真っ先にこれを紹介したいと思います。「新米錬金術師の店舗経営」です!

今季も非常に多いライトノベル原作アニメの一角なのですが、その中でも最も自分の好みに合う、まるできらら4コマのような優しい世界とかわいい女の子の存在で以前から注目していたのです。原作ライトノベルの挿絵を手掛けるふーみさん、コミカライズを手掛けるkireroさんを以前から知っていたのも注目していた理由でした。

わたしはかわいい女の子が出てくるマンガやアニメやゲームは大好きですが、別にかわいい女の子が出てくればすべて良いというわけではありません。やはり好みというものがあって、中でもやはり前述のきらら4コマに代表される、幸福感に溢れる優しい世界観の作品を常に追い求めているところがあります。

ここ最近はほんとにライトノベル原作のアニメが多いのですが(今季8本くらいあるらしい)、その中でもこの条件を完全に満たす作品は多くなく、ゆえに今回の「新米錬金術師の店舗経営」は待ちに待った待望の作品となりました。ここまではまったのは「スライム300年」や「防御力に極振り」以来かもしれません。「くまクマ熊ベアー」も割と良かったですが、これは凶悪な魔物が跋扈していたり社会的不正が横行していたりするので、完全には幸福感に満たされた世界とは言えないところがありました。

この「新米錬金術師の店舗経営」も、主人公が孤児になるような厳しい状況や社会的不正のゆがみが垣間見える箇所もありますが、それ以上に周囲に優しい人々が多く、その優しい人たちに助けられて主人公の錬金術師・サラサが夢に向かっていく、多幸感溢れる世界に堪えられないものがありました。

幼い頃に孤児になったサラサが、日々孤独に努力して学校を卒業して錬金術師の資格を得るまでのくだりを描く1話が特にいいです。周囲の同級生との間に結局友達は出来ず、晴れて卒業しても一緒に祝福してくれるものは誰もいない。そんなけなげな努力を成し遂げたサラサの姿にひどく愛おしいものがありました。

そんなサラサをバックアップするのが周囲の優しい人々、とりわけ献身的に指導してくれる師匠の錬金術師と、さらには彼女が店舗となる物件を求めて移住した先の村の住人たちです。わざわざ僻地の村まで心配して視察に来た師匠、「村が好きになった」と言うサラサの言葉を聞いて積極的に彼女を助ける住人達。この展開を見てはっきりとこの作品のスタンスが分かった気がします。

そしてなんといってもサラサを始めとするかわいいキャラクターたち。これがほんとに最高(笑)。もともとふーみさんの原作イラストやkireroさんのコミカライズの時点で注目していたのですが、アニメでもそのキャラクターのかわいさを余すところなく再現。きめ細かい丁寧な造形と淡い色合いの作画で、いかに女の子のかわいさを再現するかに全力をかけていることが窺えます。これはほんとにグッジョブとしか言えない。

最近はきらら4コマでもキャラクターの闇を付くような作風が目立ってきている中、この新米錬金術師はある意味きらら上にきららしていると思いますし(笑)、なんなら今季絶賛放送中の「ぼっち・ざ・ろっく!」以上に個人的趣向に合っているかもしれないですね。まさに個人的今季最大本命! 来週以降も最後まで楽しみです。

「初恋*れ~るとりっぷ」連載終了の衝撃。

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 先日、きららMAXの連載告知で「初恋*れ~るとりっぷ」(永山ゆうのん)の次号完結が告げられ、あまりに意外な情報に驚きました。好調に連載を重ねていて、次期最有力候補のひとつではないかと思っていた作品のいきなりの終了告知。あまりにいきなりだったので「えっもしかして前号以前の終了告知を見逃していた?」と確認したくらいです。他の読者にとっても衝撃だったようで、同様の反応が各所で多数見られました。

 「初恋*れ~るとりっぷ」は、2018年にきららMAXでゲスト掲載を経て始まった連載。高校の鉄道部の活動を描く作品で、仙台駅を起点に仙台周辺の名駅や駅周辺の名所を積極的に巡っていく活動内容は、鉄道ファンを中心に当初より読者の注目を集め、コミックス1巻発売の頃にはすでに大きな人気作品となっていました(翌年の「4コマオブザイヤー」でも新作部門で5位以内に入っています)。

 作者の永山ゆうのんさんは、ずっと以前からきらら4コマ作品(ひだまりスケッチきんいろモザイク)の同人活動をしていて、そこから雑誌の連載作家へと抜擢された形となっています。最近ではちらほらこうした方面からの起用も目立ち、同じきららMAXで「社畜さんと家出少女」を連載するタツノコッソさんもそれに該当します。
 また、永山ゆうのんさんは、この「初恋*れ~るとりっぷ」以前にもきららMAXで連載を行っていて(「みゅ~こん!」)、そちらの方も好評だったと思いますし、こちらがコミックス2巻で終了したのも少し意外に思った記憶があります。しかし、こちらは作者の趣味であるスク水を全面的に推し出すなど少々マニアックで(笑)、そこがちょっと引っ掛かったのではないかと思いました。それがこの「初恋*れ~るとりっぷ」では、そうした描写はかなり控えめになり、さらには鉄道という広く支持される趣味をテーマに加えたことで、当初より幅広い人気を得て今度こそ行けるのではないかと期待していたのです。

 鉄道のような趣味を扱う作品は、最近のきららでは「ゆるキャン△」を筆頭に多数の人気作品を生み出していますし、さらには高校の鉄道部という部活を舞台にさらにはキャラクター同士の百合要素も全面的に推し出した作風で、他の同系のきらら作品に匹敵する支持を集めることが出来たと思ったのです。また、この「れ~るとりっぷ」ならではの特徴として、部活の顧問である先生(まひろ先生)が、活動の中心となってほかの部員たちを引っ張っていく点があると思います。他の作品でも顧問や担任の先生はよく登場しますが、大抵は生徒たちの一歩外側で活動のサポートを行う役割が多いようです。そんな中で、自分自身が部活の中心となって生徒を引っ張る積極的な性格の先生は、それだけで大きな魅力がありました。

 コミックス1巻発売以降も順調に人気を重ねていき、地元仙台を中心に読者による聖地巡礼のような活動も積極的に見られ、さらには書店などの店舗でもこの作品を推す動きが各所で見られるようになっていました。間違いなく次期有力候補の一角で、その中でアニメ化の期待も最も高い作品のひとつではなかったかと思います。それが、ここに来て何の前触れもなくいきなり次号終了の衝撃。

 実は、これ以前もきらら系列の雑誌では、こうした意外に思える連載終了が後を絶たず、毎回不思議には思っているのです。つい先日の「エンとゆかり」の連載終了もまさにそうで、こちらも特に終わるような兆しはなかったと思います。それ以前では「どうして私が美術科に!?」「なでしこドレミソラ」の連載終了がそうでした。他にも好評だったはずなのにコミックス2巻あたりをひとつの目途に終了する作品は後を絶ちません。コミックスの売り上げが連載継続の目安になっているのではとの推測もありますが、それにしても読者の抱く感覚との乖離が激しすぎます。

 その中でもこの「初恋*れ~るとりっぷ」の突然の連載終了は、個人的な衝撃度では一番ではなかったかと思います。それも通例数カ月前から何らかの終了告知や情報が出回ることが多い中で、つい1カ月前になっていきなりの終了告知。次期アニメ化決定に最も近いと思っていた矢先での出来事で、今はどう対応すればいいのか分からないのが正直なところです。

少年ガンガンの現在のおすすめをピックアップしてみる(2)。

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 前回の記事に引き続いて、今度は10年以上の長期連載からとある魔術の禁書目録のコミカライズ(原作:鎌池和馬、作画:近木野中哉)も屈指の名作として取り上げておきたいところです。


 連載が始まったのは2007年で、もはや14年の長期連載となりました。他社(この場合電撃)のライトノベルスクエニがコミカライズする、これは今では定番中の定番の企画となっていますが、おそらくはこれがその最初のきっかけとなりました。これと同時に、こちらはスピンオフである「とある科学の超電磁砲」の連載が本家電撃大王で始まり、今でも揃って長期連載が続いています。


 原作の面白さもさることながら、作画担当の近木野さんによるコミカライズが非常に巧み。それも連載を重ねるごとに作画のうまさがさらに際立っていき、キャラクターの見せ方やバトルの演出にも見るべきものがあります。連載のペースはかなり遅く、10年以上連載を重ねながら、先日放送されたアニメ3期とほぼ同時期に内容が重なり、しかし展開の速いアニメにあっと言う間に追い抜かれてしまいました。現在(2021年6月現在)でも、いまだ聖人「後方のアックア」と激闘を繰り広げています。


 しかし、かなりいまいちの評判だったアニメ3期より、こちらの方がずっと面白く楽しめることは間違いありません。基本同じストーリーでも演出、構成でここまで違うのかと考えさせられます。スピンオフの「超電磁砲」のコミカライズと並んで文句なくおすすめですね。

 

 最近のアニメ化作品から、無能なナナ」(原作・るーすぼーい、作画・古屋庵も取り上げておきましょう。一見して能力者ものバトルに見えて主人公の少女(ナナ)が能力者を殺す、あるいは能力者と協力して殺人の謎を解くというミステリー仕立ての作品で、その意外性からかアニメも非常な反響を呼びました。原作の「るーすぼーい」さんは、元々はPCの美少女ゲームシナリオライターで、同じくスクエニでのコミック原作(「アカメが斬る!」)で人気を博したタカヒロさんとは旧知の仲であるようです。かつてゲームシナリオで見せた才能が、時代の流れか今ではスクエニの雑誌で花開いているというのも面白いですね。


 アニメは割といいところで終わってしまいましたが、原作はその後も面白い展開が続き、今では新たな強敵との戦いでひとつのクライマックスに差し掛かっています。もう一度アニメでも続きを描いてほしい作品でもありますね。

 

 昨今のスクエニは、異世界ものライトノベルのコミカライズがすっかり主流となってしまいましたが、それはガンガンでも例外ではなく、連載ラインナップのひとつの中心となっています。その中でも最近の作品からひとつ「双翼の武装使い」(原作:進行諸島、作画:sanorin)を最後に取り上げたいと思います。辺境の地で幼い頃から修業を積んで強くなったふたりの少年が、国から派遣された魔道士たちとともに「永遠の嵐」と呼ばれる人類を滅ぼす巨大な災害に立ち向かう物語。「無双系異世界ファンタジー開幕!」というキャッチコピーどおり、主人公の少年たちがとにかく強い設定なのですが、数ある同系の作品の中でもとりわけ面白いと感じました。


 理由としては、一方は身体能力、一方は知性に長けた少年が協力してのバトル、身体を張った戦闘を後方から理に適った判断でサポートする面白さに惹かれたのかもしれません。また、コミカライズの作画がトップレベルと言えるほどうまいのもあまりに大きいです。圧倒的な迫力と緻密さを兼ね備えていて、昨今のラノベコミカライズでも一番に惹かれました。最近のスクエニでのコミカライズ作品は、アニメ化が相次ぐほどヒット作が続いていますが、これもまた「次にくる」最も期待している作品です。個人的には今のガンガンで最も楽しみな作品になっています。

少年ガンガンの現在のおすすめをピックアップしてみる(1)。

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 先日、少年ガンガンが創刊30周年を迎えたようです。しかし、ここ最近のガンガンは、もう部数がめっきり落ちて久しく、毎月雑誌を買って追っている人もほとんどいなくなってしまい、特に大きな反応も見られず寂しい節目の30年となりました。また、来月であのハガレンこと「鋼の錬金術師」が連載開始20周年を迎えるようですが、これも約10年前に連載を終えて久しく、同時期に同じくガンガンの人気連載だった「ソウルイーター」や「スパイラル」も終了を迎えたことで、この時期にガンガンを読むのをやめた人も多かったと思います。ひとえにこの10年のガンガンは、もうその具体的な内容を知る読者もめっきり少なくなってしまいました。

 

 ゆえに、現在のガンガンでどんな作品が連載されているのか、もう知っている人は多くないと思います。しかし、自分が追って読んでいる感想としては、確かにかつてのガンガンの面影はほとんど残ってないものの、それでもここ最近は小粒ながら中々読める連載が増えてきたのではないかと思っています。今回は、そうしたガンガンの現行連載からいくつかピックアップしてみました。

 

 まずは、最新の話題として、先日アニメ化が発表された社畜さんは幼女幽霊に癒されたい。」(有田イマリ)は取り上げておきたいですね。昨今ではすっかり定着したTwitterの掲載マンガの商業化作品ですが、しかし作者の有田イマリさんは、このマンガ以前にガンガンで別の連載をしていて、その連載終了後にTwitterでこのマンガが大人気となったという経緯があります。つまり、もともとガンガンで活動していた作家がヒットしたとも言えるわけで、その点では誇っていいと思います。肝心の内容は、社畜として日々しんどい仕事をしているOLの伏原さんのもとにかわいい幽霊がやってきて癒されるという筋立てで、個人的にはあのメイドラゴンとも近い親和性を感じる作品でもあり、こちらもほんとに面白くてヒットするに足る作品だと思っていました。ゆえに今回のアニメ化はまさに規定路線! 今一番期待している作品です。

 

 もうひとつ、同じくTwitter掲載マンガの商業化として「おじさまと猫」(桜井海)も外せないところです。妻の死をきっかけに活動をやめたピアニスト・神田冬樹と、彼がペットショップで見かけて迎え入れた猫・ふくまるの日常を描くハートフルコメディ。どこか寂しかった2人(1人と1匹)が、互いに相手を思いやり、あるいは周囲を取り巻く温かい人々にも見守られて立ち直っていくストーリーは、文句なくほろっとさせるところがあります。音楽に対する造詣も深く、主人公が著名なピアニストとして周囲に与えてきた影響から、数々の個性的なアーティストたちが周囲を優しく取り巻き時には共に活動していく。傷ついた人々の再生を描くストーリーでも見逃せないものがあると思います。
 先日テレビ東京で実写ドラマ化されましたが、やはり最も望むべくはこちらもアニメ化でしょう。こちらもさらなる朗報を待ちたいところですね。

 

 アニメ化作品としては、先日放送を終了した「裏世界ピクニック」(原作・宮澤伊織、作画・水野英多のコミカライズも外せないところです。「スパイラル」の作画担当として長く人気だった水野英多さんの最新作でもあり、都市伝説を絡めたオカルトホラーの原作の魅力を重厚な絵柄で再現しています。正直、アニメの出来は数々の改変と省略で微妙なところがあり、このコミカライズの方がずっと楽しめるのではないかと思います。コミックス収録の原作者による描き下ろし短編も面白く、原作小説の読者にもおすすめできますね。

 

 「ばらかもん」の原作者・ヨシノサツキさんの新作「18 エイティーン」も中々面白い。うだつのあがらない父親に連れられて何度も転校を繰り返した結果、すれた性格となってしまった主人公の高校生が、新しい転校先で個性的すぎる同級生に出会うことで、少しずつほだされ周囲へと溶け込んでいく。トリッキーでぶっ飛んだキャラクターたちに最初は戸惑うけど、その内面が分かってくるとほんとに面白い。「ばらかもん」終了後の連載は、この名作と比べると注目度が低くなっているのが残念ですが、しかし毎回確実な面白さを持っていると思ってます。

 

 オリジナルの新作からもうひとつ、ワンルーム、日当たり良好、天使つき。」(matoba)もおすすめしておきたいですね。かつて「魔女の心臓」や、アニメ化もされた「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」の連載を長く続けたmatoba先生の最新作。今回の作品は、主人公の高校生のもとにかわいい天使の女の子がやってくるという、これまでとは少し違ってスタンダードなラブコメとなっているようです。かつての連載とは少しジャンルを変えてきた気もしますが、しかし洗練された美しい絵とかわいいキャラクターは健在。個人的には主人公森太郎の同級生で雪女ののえるさんが好きです。

「スライム倒して300年、知らないうちにアニメになってました」

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 この春より、ついに「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」のテレビアニメが開始されます。かれこれ2019年の10月に、同じGAノベルの「魔女の旅々」と同時にアニメ化が発表されてはや1年半。ついにこちらのアニメ放送の時がやってきたのです。

 

 「スライム倒して300年~」は、元々は「小説家になろう」で2016年に投稿が開始された小説。開始直後から非常に大きな人気を集め、半年後にはGAノベルでの書籍化が決定、その半年後にはスクエニガンガンONLINEでコミカライズの連載が始まっていました。こちらではスピンオフのコミックも次々に始まり、原作小説の刊行も重ねて5年後。ついにここでアニメになったのです。

 

 昨今のライトノベルでは中心的ジャンルとなっているいわゆる異世界転生ものの作品で、それも異世界でのんびり楽しくスローライフを送るという「異世界スローライフ」ものの代表的作品です。主人公は「高原の魔女」と呼ばれる、その名のとおり平和な高原地帯でのんびりした生活を送り続ける魔女アズサ。神様から不老不死の魔女として転生させてもらった彼女は、地道に日々スライムを退治して最低限の報酬を得て、元の世界でブラック企業のもとで過労死した反省を踏まえ、あとは畑を耕す程度できままな生活を送り続けて300年。転生直後はレベル1の平凡なステータスだった彼女は、気が付くとレベル99の最強のステータスに達していたのです。

 

 そんな彼女ですが、あくまで密かにスローライフを送りたいという意志は固く、近隣の村人にもそのことを絶対に広めないように念を押す日々。しかしそんな努力をもってしても、少しずつその噂が広がっていくことは避けられず、腕試しや弟子入り志願してくる冒険者やドラゴン、敵討ちにやってきたスライムの精(?)などの訪問を受け、やがては少しずつ同居人も増えてさらに楽しい日々を送っていく。そんな話になっています。

 

 特筆すべきは、主人公アズサがかつての世界で受けたブラックな経験を踏まえ、この世界の住人には決してそんなことはさせないと優しく接すること。それが彼女と出会う幾多の種族の住人に良い影響を与えていく。数ある異世界転生ものの中でも、とびきり楽しく優しい幸福度の高いストーリーになっていると思います。

 

 作者は森田季節さんで、前述のとおり2016年からこの作品の掲載を続けています。しかし、それ以前からずっと商業のライトノベル作家として活動を続けていて、商業デビューは2008年にまで遡ります。以来多数のタイトルを手掛けてきた作家さんで、以前からその作品はかなり高く評価されていたと思います。しかし、どういうわけか突き抜けた人気やアニメ化のような展開には長い間恵まれず、ここまでの実力のある作家がなぜと不思議には思っていたのです。

 

 それが、ここに来て「小説家になろう」への投稿をきっかけについにブレイク。ついにその真の実力が認められたようで、本当に良かったと思っています。これでさらに注目されるようになるとうれしい。個人的には、作者の趣味性が存分に出た女の子たちが寺巡りをする「てらめぐりぶ?」という短編が好きです。

「のんのんびより」というもうひとつの現実の終わり。

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 先日、「のんのんびより」のアニメ3期が盛況のうちに終了し、さらにはそれに先立つ形で原作のコミック連載も終了、コミックス最終巻もほぼアニメ最終回と同じくして発売され、名実ともにひとつの作品が終わった感がありました。コミックアライブで原作の連載が始まったのが2009年、いつの間にか10年を越える長期連載になっていたのです。

 

 しかし、このマンガに関しては、ここで終わることがまだ信じられないくらいで、その日常が続いていく作風からも、これから先もずっと続いていくとばかり思っていました。ゆえに、アニメ3期の放送に先立つ形で、原作の終了が告知された時は、あまりの衝撃にそれが信じられないくらいでした。

 

 「のんのんびより」は、いわゆる日常もの、日常系の作品として、そうしたジャンルの作品を愛するファンにとりわけ支持された作品だったことは間違いないと思います。しかし、他の同系の作品、例えばきらら4コマの作品あたりと比較すると、その作風には独特のものがあったと思います。原作者のあっとさんの描くキャラクターエピソードには、明らかに他の作品とは何か違う切り口があった。今回は、ひとつの名作の最後のそれを振り返りたいと思います。

 

 まず、真っ先に取り上げてみたいのは、やはりキャラクターでしょうか。「のんのんびより」のキャラクターには、明らかに他ではあまり見られない独特の個性がありました。


 中でも誰もが思いつくのは、やはり「れんちょん」こと宮内れんげでしょう。小学1年生にして謎の知性と感性を持ち、独特の言動を次々と繰り出すキャラクターに惹かれた人は多かったと思います。そしてこのれんげ、非常に尖った個性を持ちながら、同時に実際にいる子供のような行動を取るところに注目しました。

 

 例えば、これはアニメ1期で見られたエピソードですが、家に帰ったときに夕食がカレーだと知って、急に叫びだして家の中に駆け込むシーンがあります。この行動、非常に突飛な行動に見えるのですが、実際の子供がこうした大人にはびっくりするような行動をとることは、本当にありえることだと思います。同じようなことは、ウサギ小屋に向かって駆け出すシーンで突然地面に身を投げ出す行動にも感じられますし(原作2話、アニメ1期7話)、あるいはアニメ3期で初登場した女の子・しおりちゃんとの噛み合わない会話にも感じられます(子供同士ならではの噛み合わないリアクション)。こうした思わぬ行動は、他のマンガやアニメのキャラクターでは中々見られないのではないでしょうか。いわゆる二次元的なキャラクター造形ではあまり見られない、現実にいる人間の子供のような行動。これが、いわゆる日常系の萌え作品だと思われる「のんのんびより」で見られることが非常に興味深い。

 

 そしてもうひとり、なっつんこと越谷夏海というキャラクターにも注目したい。このキャラクターも、実は他の同系の作品からは、それらに見られる二次元的なキャラクターからは、ちょっと外れた個性を持っているのではないかと思うのです。一言で言えば、現実に見られる遊び好き、いたずら好きの悪ガキそのもの。勉強は決して好きではないが、毎日の遊びや日常の作業に関しては抜け目ない能力を披露する。この能力は、夏海と同じくいたずら好きのひかげ(ひか姉)とつるむことで最大の力を発揮し、このふたりが会うたびに懲りずに悪巧みをする話は、「のんのんびより」でも毎回屈指の爆笑回となっています。こうした「現実に実際にいてもおかしくない子供」の行動をつぶさに描くという切り口は、他の同系の作品ではあまり見られない「のんのんびより」独特の方向性になっていると思うのです。

 

 (実は、こうした「現実にいる子供、それも悪ガキの行動をリアルに描く萌え日常作品」という点では、もうひとつだけ該当する作品を知っています。「三ツ星カラーズ」です。こちらに登場する主人公の小学生3人組も、他の作品のキャラクターではあまり見ない、まさに悪ガキそのものの行動を取ることが印象的でした。なお、こちらのアニメの制作も「のんのんびより」と同じSILVER LINK.で、アニメの方向性にはいろいろ共通したところも感じられます。)

 

 そして、こうしたキャラクターたちが織り成すエピソードの現実性にも注目したい。現実性というか、実際に子供達がやるような遊びや行動がたびたび出てくるところが面白い。


 ひとつ例を挙げれば、アニメ2期で描かれた「定規飛ばし」の遊びでしょうか。机の上に定規を置いてそれを弾き合って落とすことを競う遊び、夏海のオーバーな解説がいちいち面白かったり、兄ちゃんが異様な技術性を見せたりと、見ているだけで爆笑もののシーン連発なのですが、そもそもこうした子供たちの素朴な遊びを詳細に取り上げること自体が面白いと思いました。こうした小学生や中学生が即興で遊ぶような子供の遊び、それを真正面からつぶさに描く切り口も「のんのんびより」ならではの作風だったと思います。

 

 さらには、そうしたキャラクターたちが暮らす田舎の光景。これはアニメで大きくクローズアップされた部分ですが、あえてキャラクターを小さく遠距離に置いて、それを取り巻く風景のパノラマを緻密に、しかもたっぷりと間を取って描く演出は、誰もが驚いたと思います。原作のマンガでも、あっと先生の描く背景は極めて濃いタッチで描かれる緻密なもので、これもまたある種の質感を持ったリアルさを感じさせます。これもまた、田舎という舞台を全面に打ち出した「のんのんびより」ならではの、最大の特徴と言えるかもしれません。

 

 こうした作風は、おそらくは原作者のあっとさんの経験に裏打ちされたものだと思っていますが、それが長い連載の中でまったく衰えずに、毎回新鮮な驚きと楽しさを見せてくれることが本当にうれしかった。あるいは連載を重ねるに連れて、さらにエピソードの面白さが増してくる感すらありました(アニメでも直近の3期収録のエピソードが一番面白かったと思います)。それゆえに、正直今でも連載が終わったことが信じられない。この独特の感性を持つあっと先生の次回作に期待したいところですが、この「のんのんびより」の長い長い連載の後に何が来るのか、まだ想像できないところです。