「スライム倒して300年、知らないうちにアニメになってました」

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 この春より、ついに「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」のテレビアニメが開始されます。かれこれ2019年の10月に、同じGAノベルの「魔女の旅々」と同時にアニメ化が発表されてはや1年半。ついにこちらのアニメ放送の時がやってきたのです。

 

 「スライム倒して300年~」は、元々は「小説家になろう」で2016年に投稿が開始された小説。開始直後から非常に大きな人気を集め、半年後にはGAノベルでの書籍化が決定、その半年後にはスクエニガンガンONLINEでコミカライズの連載が始まっていました。こちらではスピンオフのコミックも次々に始まり、原作小説の刊行も重ねて5年後。ついにここでアニメになったのです。

 

 昨今のライトノベルでは中心的ジャンルとなっているいわゆる異世界転生ものの作品で、それも異世界でのんびり楽しくスローライフを送るという「異世界スローライフ」ものの代表的作品です。主人公は「高原の魔女」と呼ばれる、その名のとおり平和な高原地帯でのんびりした生活を送り続ける魔女アズサ。神様から不老不死の魔女として転生させてもらった彼女は、地道に日々スライムを退治して最低限の報酬を得て、元の世界でブラック企業のもとで過労死した反省を踏まえ、あとは畑を耕す程度できままな生活を送り続けて300年。転生直後はレベル1の平凡なステータスだった彼女は、気が付くとレベル99の最強のステータスに達していたのです。

 

 そんな彼女ですが、あくまで密かにスローライフを送りたいという意志は固く、近隣の村人にもそのことを絶対に広めないように念を押す日々。しかしそんな努力をもってしても、少しずつその噂が広がっていくことは避けられず、腕試しや弟子入り志願してくる冒険者やドラゴン、敵討ちにやってきたスライムの精(?)などの訪問を受け、やがては少しずつ同居人も増えてさらに楽しい日々を送っていく。そんな話になっています。

 

 特筆すべきは、主人公アズサがかつての世界で受けたブラックな経験を踏まえ、この世界の住人には決してそんなことはさせないと優しく接すること。それが彼女と出会う幾多の種族の住人に良い影響を与えていく。数ある異世界転生ものの中でも、とびきり楽しく優しい幸福度の高いストーリーになっていると思います。

 

 作者は森田季節さんで、前述のとおり2016年からこの作品の掲載を続けています。しかし、それ以前からずっと商業のライトノベル作家として活動を続けていて、商業デビューは2008年にまで遡ります。以来多数のタイトルを手掛けてきた作家さんで、以前からその作品はかなり高く評価されていたと思います。しかし、どういうわけか突き抜けた人気やアニメ化のような展開には長い間恵まれず、ここまでの実力のある作家がなぜと不思議には思っていたのです。

 

 それが、ここに来て「小説家になろう」への投稿をきっかけについにブレイク。ついにその真の実力が認められたようで、本当に良かったと思っています。これでさらに注目されるようになるとうれしい。個人的には、作者の趣味性が存分に出た女の子たちが寺巡りをする「てらめぐりぶ?」という短編が好きです。