「のんのんびより」というもうひとつの現実の終わり。

f:id:kenkyukan:20210406230544j:plain

 先日、「のんのんびより」のアニメ3期が盛況のうちに終了し、さらにはそれに先立つ形で原作のコミック連載も終了、コミックス最終巻もほぼアニメ最終回と同じくして発売され、名実ともにひとつの作品が終わった感がありました。コミックアライブで原作の連載が始まったのが2009年、いつの間にか10年を越える長期連載になっていたのです。

 

 しかし、このマンガに関しては、ここで終わることがまだ信じられないくらいで、その日常が続いていく作風からも、これから先もずっと続いていくとばかり思っていました。ゆえに、アニメ3期の放送に先立つ形で、原作の終了が告知された時は、あまりの衝撃にそれが信じられないくらいでした。

 

 「のんのんびより」は、いわゆる日常もの、日常系の作品として、そうしたジャンルの作品を愛するファンにとりわけ支持された作品だったことは間違いないと思います。しかし、他の同系の作品、例えばきらら4コマの作品あたりと比較すると、その作風には独特のものがあったと思います。原作者のあっとさんの描くキャラクターエピソードには、明らかに他の作品とは何か違う切り口があった。今回は、ひとつの名作の最後のそれを振り返りたいと思います。

 

 まず、真っ先に取り上げてみたいのは、やはりキャラクターでしょうか。「のんのんびより」のキャラクターには、明らかに他ではあまり見られない独特の個性がありました。


 中でも誰もが思いつくのは、やはり「れんちょん」こと宮内れんげでしょう。小学1年生にして謎の知性と感性を持ち、独特の言動を次々と繰り出すキャラクターに惹かれた人は多かったと思います。そしてこのれんげ、非常に尖った個性を持ちながら、同時に実際にいる子供のような行動を取るところに注目しました。

 

 例えば、これはアニメ1期で見られたエピソードですが、家に帰ったときに夕食がカレーだと知って、急に叫びだして家の中に駆け込むシーンがあります。この行動、非常に突飛な行動に見えるのですが、実際の子供がこうした大人にはびっくりするような行動をとることは、本当にありえることだと思います。同じようなことは、ウサギ小屋に向かって駆け出すシーンで突然地面に身を投げ出す行動にも感じられますし(原作2話、アニメ1期7話)、あるいはアニメ3期で初登場した女の子・しおりちゃんとの噛み合わない会話にも感じられます(子供同士ならではの噛み合わないリアクション)。こうした思わぬ行動は、他のマンガやアニメのキャラクターでは中々見られないのではないでしょうか。いわゆる二次元的なキャラクター造形ではあまり見られない、現実にいる人間の子供のような行動。これが、いわゆる日常系の萌え作品だと思われる「のんのんびより」で見られることが非常に興味深い。

 

 そしてもうひとり、なっつんこと越谷夏海というキャラクターにも注目したい。このキャラクターも、実は他の同系の作品からは、それらに見られる二次元的なキャラクターからは、ちょっと外れた個性を持っているのではないかと思うのです。一言で言えば、現実に見られる遊び好き、いたずら好きの悪ガキそのもの。勉強は決して好きではないが、毎日の遊びや日常の作業に関しては抜け目ない能力を披露する。この能力は、夏海と同じくいたずら好きのひかげ(ひか姉)とつるむことで最大の力を発揮し、このふたりが会うたびに懲りずに悪巧みをする話は、「のんのんびより」でも毎回屈指の爆笑回となっています。こうした「現実に実際にいてもおかしくない子供」の行動をつぶさに描くという切り口は、他の同系の作品ではあまり見られない「のんのんびより」独特の方向性になっていると思うのです。

 

 (実は、こうした「現実にいる子供、それも悪ガキの行動をリアルに描く萌え日常作品」という点では、もうひとつだけ該当する作品を知っています。「三ツ星カラーズ」です。こちらに登場する主人公の小学生3人組も、他の作品のキャラクターではあまり見ない、まさに悪ガキそのものの行動を取ることが印象的でした。なお、こちらのアニメの制作も「のんのんびより」と同じSILVER LINK.で、アニメの方向性にはいろいろ共通したところも感じられます。)

 

 そして、こうしたキャラクターたちが織り成すエピソードの現実性にも注目したい。現実性というか、実際に子供達がやるような遊びや行動がたびたび出てくるところが面白い。


 ひとつ例を挙げれば、アニメ2期で描かれた「定規飛ばし」の遊びでしょうか。机の上に定規を置いてそれを弾き合って落とすことを競う遊び、夏海のオーバーな解説がいちいち面白かったり、兄ちゃんが異様な技術性を見せたりと、見ているだけで爆笑もののシーン連発なのですが、そもそもこうした子供たちの素朴な遊びを詳細に取り上げること自体が面白いと思いました。こうした小学生や中学生が即興で遊ぶような子供の遊び、それを真正面からつぶさに描く切り口も「のんのんびより」ならではの作風だったと思います。

 

 さらには、そうしたキャラクターたちが暮らす田舎の光景。これはアニメで大きくクローズアップされた部分ですが、あえてキャラクターを小さく遠距離に置いて、それを取り巻く風景のパノラマを緻密に、しかもたっぷりと間を取って描く演出は、誰もが驚いたと思います。原作のマンガでも、あっと先生の描く背景は極めて濃いタッチで描かれる緻密なもので、これもまたある種の質感を持ったリアルさを感じさせます。これもまた、田舎という舞台を全面に打ち出した「のんのんびより」ならではの、最大の特徴と言えるかもしれません。

 

 こうした作風は、おそらくは原作者のあっとさんの経験に裏打ちされたものだと思っていますが、それが長い連載の中でまったく衰えずに、毎回新鮮な驚きと楽しさを見せてくれることが本当にうれしかった。あるいは連載を重ねるに連れて、さらにエピソードの面白さが増してくる感すらありました(アニメでも直近の3期収録のエピソードが一番面白かったと思います)。それゆえに、正直今でも連載が終わったことが信じられない。この独特の感性を持つあっと先生の次回作に期待したいところですが、この「のんのんびより」の長い長い連載の後に何が来るのか、まだ想像できないところです。

「裏世界ピクニック」にまつろう話まつろわぬ話。

f:id:kenkyukan:20210104224550j:plain


 先日、SFマガジンが2年ぶりにまた百合特集を組むと聞いて、「今ならば『裏世界ピクニック』を中心に据えた特集になるのかな」と予想したのですが、案の定その裏世界ピクニックが表紙で対談なども組まれる大きな特集となっていました。そう、かれこれ1年近く前にアニメ化が告知されていた『裏世界ピクニック』の放送が、ついにこの1月から始まるのです!

 

 『裏世界ピクニック』は、ハヤカワ文庫で2017年から刊行されているSF小説。作者は宮沢伊織。刊行当初から一部読者の間でかなり大きな話題になったことで、わたしもその噂は耳にしていましたが、直接的に知るきっかけとなったのは、翌2018年からガンガンで始まったコミカライズでした。「スパイラル」の作画でも人気を集めた水野英多さんが作画を担当し、その作画の出来が非常に良かったこともあって、一気にはまることになりました。

 

 「裏世界」というタイトルからも類推されるとおり、内容はSFでありつつオカルトやホラーの要素が強い。それも、近年ネットで盛んに噂になる「八尺様」や「きさらぎ駅」などの都市伝説をメインテーマに据えたことが、大きな注目を集めるきっかけとなったようです。また、より直接的に影響を受けた作品として、ロシアの作家ストルガツキー兄弟の小説「ストーカー」(原題:Roadside Picnic)が挙げられています。これは、異星人が残した謎の地帯「ゾーン」で遺物を求めて探索を繰り返す者たちの物語ですが、この「裏世界ピクニック」も、「裏世界」と呼ばれる異界の探索と物品を持ち帰る女子大生2人の冒険を描いた物語。また、この小説を原作に制作された映画や、あるいはFPSのゲームシリーズ(「S.T.A.L.K.E.R. 」)の影響もあるようです。とりわけ主人公のふたりが銃器を使って敵と戦ったり、アメリ海兵隊のような本格的な軍事装備をした部隊が登場する展開は、こうしたゲームからの影響や作者の趣味も強いのかなと思っています。

 

 また、昨今の都市伝説との関連でも、例えば「きさらぎ駅」に行ったとする体験者の報告が、この世界とは違う異世界のような場所に赴いて、そちらで異界の住人や何か恐ろしい存在に遭遇したとするものが見られるのも、こうした作品との共通性がありますね。こうした近年のオカルト的流行をうまく設定に取り入れた作品とも言えそうです。

 

 しかし、もうひとつ、この「ストーカー」と並んで、あるいはそれ以上に直接的な原点となった作品があると思われるのです。それは、ずばり「秘封倶楽部」。原作は一連の同人作品シリーズのひとつとして出た音楽CDですが、CDに付属されたブックレットのイラストとショートストーリーが人気を博し、一部のコアなファンの間で同人人気が発展。単独の同人イベントが開かれたり、あるいはこの人気に影響を受けたのか原作のCDも長いときを経て続編が出るなど、熱心なファンの間で息の長い人気作品になっています。

 

 そして、どうもこの「秘封倶楽部」に影響を受けて作られた作品も、かなり多くあるようで、その中でも一番の代表作と言えるのがこの「裏世界ピクニック」なのです。「秘封倶楽部」のブックレットに描かれたストーリーは、科学が発展した未来世界の女子大生ふたりが、大学でオカルトサークルを結成、オカルトスポットと思われる廃墟へと探索へ赴くいう掌編。あるいはごく明るい小旅行のような逸話もあり、一方で入り込んだ別世界から深刻な影響を受けて帰ってくるというシリアスな一編もある。これが「裏世界ピクニック」の直接的な原点となっているのは間違いないところです。主人公のひとり空魚の右目が、裏世界の存在を見通す異様な能力に目覚めているのも、「秘封倶楽部」のキャラクターからの直接の影響が感じられます。

 

 そして、これはそうしたオカルト的な探索設定だけではなく、キャラクター同士の関係性、とりわけ今回のSFマガジンの特集にもなっている「百合」的な関係も、作品最大のポイントとなっています。今回のアニメでも、むしろそちらの方で期待している視聴者も多いかもしれない。水野英多さんのコミカライズも、きれいな作画でキャラクターの魅力満点でしたし、アニメでもそうした楽しさに期待したいと思いますね。

思わぬ良作(?)「おちこぼれフルーツタルト」アニメ総括!

f:id:kenkyukan:20201207213550j:plain


 もうかれこれ2年近く前の話になるでしょうか。まんがタイムきららキャラットで「3号連続重大発表」という企画が発表されたことがありました。次号から3号に渡って重大発表を続けるというもので、その内容は当初すべて伏せられていて、一部読者の間では様々な推測で持ちきりになりました。

 

 アニメ化という推測が最も有力で、蓋を開けてみればやはりすべて連載作品のアニメ化でした。最初に発表された第1弾が「まちカドまぞく」、第2弾が「恋する小惑星」、そして最後に発表されたのが今回取り上げる「おちこぼれフルーツタルト」です。いずれも当時のキャラットで雑誌の中心的な人気作品だったので、おおむね納得できる結果ではあったのですが、ただこの「フルーツタルト」だけは、原作連載時から色々と物議を醸す問題作であっただけに、この時から「アニメ化されて大丈夫か?」という声が聞かれたことをよく覚えています。

 

 その後、2019年夏「まちカドまぞく」、2020年冬「恋する小惑星」とそれぞれのアニメ放送が好評を博し、そして最後に2020年秋になってこの「おちこぼれフルーツタルト」のアニメスタート。3つの作品の中では最も後になり、さらには新型コロナの影響での制作の遅れも手伝って、最初の発表からかれこれ2年近くが経過していたのです。

 

 タイトルの「フルーツタルト」は、作中で登場するアイドルユニットの名前。売れない子役・売れないミュージシャン・売れないモデルなど芸能界の「おちこぼれ」たちと、上京してきたばかりのアイドル志望の女の子で新規アイドルユニットを結成。彼女たちが住むアパートの存続をかけて再起の芸能活動に挑むという、明るくにぎやかなコメディとなっています。

 

 作者は浜弓場双さんで、あの名作「ハナヤマタ」の作者の新規4コマ連載でもありました。当初は並行して連載していたのですが、前作の「ハナヤマタ」と比較すると、シリアスだったり暗いエピソードはほとんどなく、ギャグとコメディに振り切れた明るいコメディとなっていたのが最大の特徴で、こちらの作風でも非常な好評を博しました。

 

 しかし、それと同時に色々と物議を醸す問題作でもあり、主人公が緊張すると漏らす(漏らしそうになる)癖があったり、ストーカーだったりにおいフェチだったり、どこか(性的に)汚いネタがとにかく多く、前作のハナヤマタに比べると圧倒的にきたない(笑)。そのため、アニメ化が決まった当初から、「これをアニメ化して大丈夫か?」という声が絶えなかったのです。

 

 そして、そんな噂が各所で聞かれつつも、ついにこの秋からアニメ放送がスタート。当初から期待と不安の声が入り混じっていましたが、ふたを開けてみると思った以上の出来となっていて、ハイレベルな演出とテンポの良いギャグで心の底から楽しめる良作になっていたのです!

 

 懸念されていたきたない系のネタも、明るい雰囲気とテンポの良さでうまく緩和されているようで、確かにやばいネタはいくらでも散見されるものの、それ以上に明るく楽しめるコメディに昇華されていて、これには感心してしまいました。なにげにアイドルものらしいライブシーンの素晴らしさは特筆に値します。また、原作の時から舞台は小金井に設定されていて、各所の風景が積極的に取り入れられている作品でもありましたが、アニメの制作も当地に本社を置くフィール(feel.)が担当。東小金井駅前を筆頭にやはり各所の風景が綺麗な作画で描かれ、さらには当地の行政も全面協力して聖地巡礼のコラボ活動を積極的に行うなど、ご当地アニメ的な魅力も十分なものになっていました。

 

 原作の方の汚さは、あと2回くらいレベルアップを残しているほどやばいものでもあるのですが、アニメとしてはこれで十分ではないかと思います(笑)。2年前から楽しみにしていたキャラット3大作品のアニメ化。それは最後の作品まで有終の美を飾るものであったと思います。

「なんで鳥取なのかしら?」

f:id:kenkyukan:20200709170403j:plain


 先日放送された「宇崎ちゃんは遊びたい!」10話。これが全編に渡って鳥取推しの観光ガイドのような特別編になっていて、驚いた人も多かったのではないかと思います。前話最後にくじ引きで鳥取旅行が当たったことをきっかけに、キャラクターたちがこぞって鳥取へと向かうという内容だったのですが、それまでの話で特に鳥取が出てくることはなく、あるいは原作でも特に鳥取と関連することもなく(いわゆるアニメオリジナル)、作中のキャラクターのセリフそのままに「なんで鳥取なのかしら?」という感想しか出てきませんでした。

 

 実際のところ、これは鳥取県と強力にタイアップした企画であり、そのために本当に観光ガイド的な1話になっていました。しかし、それが10話というアニメの終盤になって、特に予告もなく始まるのはかなり意外で、誰もが驚くのも無理はありません。(実際には7月の放送開始時からタイアップの企画は始まっていたようですが、それまでのアニメで鳥取が出てくることはほとんどなく、実質的なタイアップはほぼ10話のみに集中していました。)

 

 その内容も非常に気合の入ったもので、冒頭の空港でいきなり鳥取知事が登場したのを皮切りに、鳥取砂丘三朝温泉・白兎神社・大山・境港の水木しげるロードなど、鳥取県中の主な観光地を網羅する勢い。空港(鳥取砂丘コナン空港)が全面的にコナン推しになっている光景にもまず驚いたのですが、水木しげるロードでも彼の妖怪画をそのままアニメで動かすなど強いこだわりが感じられました(どちらも許可を得ての登場)。

 

 最も印象に残ったのは、この回だけの特別エンディングの画像で、本編で登場し切れなかったところまで鳥取の名所の数々が1枚絵で次々と登場。実際の風景を取り入れた膨大なカット数に驚いてしまいました。まさに1話まるごと鳥取観光ガイドと言ってよい。

 

 これを見てちょっと思い出したのが、先日春より放送された「邪神ちゃんドロップキック」2期の最後に登場した「千歳編」です。こちらは、なんとふるさと納税の制度を使って集めた資金で、千歳を舞台にしたアニメの特別編を制作するというもので、やはり千歳市ぐるみの企画。アニメ本編にも企画に関わった市長や関係者が登場、支笏湖を初めとした観光地各所を邪神ちゃんたちが巡るというもので、今回の宇崎ちゃん鳥取編とかなり近いコンセプトを感じました。

 

 このふたつの企画が、これまでの「聖地巡礼」を推す活動と異なるのは、作品の舞台となった地元が聖地(舞台)を推して盛り上げるのではなく、本来特に関係ない場所が外から作品を呼び込んで観光企画を行うというものです。どちらも行政が積極的に絡んでいる点も特徴で、これまでの聖地巡礼よりもさらに積極的で、これが今のコンテンツツーリズムの最先端なのかもしれない・・・と感心してしまいました。

 

 作品と本来まったく関係ない場所が、観光を盛り上げるために作品を利用するのはどうかと思う向きもあるかと思いますが、個人的には大いに歓迎したいところですね。詳細に描かれた実在の名所を見るだけで楽しいし、そんな場所でキャラクターがいつもどおりの行動を取るのも楽しい。なんで千歳? なんで鳥取? と視聴者の間でネタになるのも楽しい(笑)。いいんじゃないかと思いますね。

「紅心王子」まさかの再開&完結・・・!

f:id:kenkyukan:20200915232135j:plain f:id:kenkyukan:20200915232152j:plain

 先日、「紅心王子」の作者である桑原草太さんが復帰され、「紅心王子」が再開するという話を耳にして、まさかとは思っていたのですがこれが本当でした。そして、先日12日に待望のコミックス続巻である17巻と最終18巻が同時発売され、かつての読者を中心に大きな反響が巻き起こっています。何らかの理由で連載が立ち消えになってはや6年。もはや連載が復活することはほとんどないだろうと思っていただけに、復活しただけで本当に驚きでした。

 

 「紅心王子」は、かれこれ2007年に少年ガンガンで始まった連載。ある課題(試験)をこなすために人間界にやってきた魔界の王子(悪魔)・さくら紅次郎が、とあるアクシデントから人間界の少女・花と共に暮らすことになる。当初は人間を悪魔よりも下等なものとみなしていた紅次郎ですが、心優しい花と暮らし、あるいは人間界の学校に通うことで、少しずつその心に変化が訪れる。悪魔や天使がなんらかの試験のために人間界を訪れるという話はよく見られますが、これはその中でも花を初めとするキャラクターの優しさ、愛おしさが全面に出たハートフルなコメディになっていると思います。

 

 加えて、紅次郎と花の過去(前世)からつながる秘密、このふたりを巡る魔界および天界の人々の思惑が交錯するシリアスなストーリーも見逃せないものがありました。連載が中断する直前には、いよいよクライマックスに差し掛かるまでに盛り上がっていたのですが・・・。

 

 桑原さんによる中性的で優しい絵柄、雰囲気も最大の魅力。総じて「ガンガン系」の持つイメージ(中性的である種少女マンガなイメージ)をそのまま体現したようなマンガでもあったと思います。桑原さんは、この連載と同時期に芳文社でも「ココロ君色 サクラ色」という連載を続けていましたが、そちらも同等の優しい雰囲気でひどく好感が持てました。かつては芳文社は今より女性向けの雑誌も多かったので、そちらの求める作風にも合っていたと思います。

 

 しかし、そうした活動が堅調であったはずの2014年頃、突然「紅心王子」が休載に入り、再開されなくなってしまいます。同時期に「ココロ君色 サクラ色」も連載終了。また、当時桑原さんはTwitter上でもかなり積極的に活動していた記憶がありますが、そちらの活動も次第に縮小され、ついにはネットでの消息も途絶えてしまいました。

 

 活動が途絶えた理由はいまだによく分からないところで、一部には病気療養のためと言う話も聞きました。いずれにしてもまったく音沙汰なくなってからはや6年近くが経ち、もう「紅心王子」の再開はまずないだろうと思っていました。そんなところでまさかの連載復帰&完結。これほど驚いたことはありません。久々に見た桑原さんの絵は、以前とまったく変わっておらず、懐かしいと思うと同時に本当にうれしいものがありました。今のところ「紅心王子」以外の活動はまだ見られませんが、それでもこうして生存が確認されただけでもうれしい。もうずっと過去の作品となってしまいましたが、これを契機に少しでも新しく作品に触れる人が出てくればこれ以上の喜びはないですね。

「魔女の旅々」待望のアニメ放送迫る!

f:id:kenkyukan:20200910220017j:plain

 かれこれ1年近く前でしょうか。GA文庫からふたつのライトノベルのアニメ化が発表されました。ひとつは「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」、そしてもうひとつが「魔女の旅々」。いずれもスクエニの雑誌でコミカライズされており、非常に面白い作品として追いかけていただけに、どちらもアニメ化発表はとてもうれしいものがありました。そしてあれから1年。まずは「魔女の旅々」の方がこの秋からの放送が近づいてきたので、いよいよおすすめの記事を書きたいと思います。

 

 「魔女の旅々」は、原作・白石定規によるライトノベル。ジャンルはおそらくは純粋な異世界ファンタジーと言えるもので、近年目立つ異世界転生やMMORPGの要素のない本格ファンタジーとして注目していました。加えて、あずーるさんによる挿絵イラストが素晴らしく、それを目にして注目し始めたという理由も大いにあります。

 

 タイトルの「魔女」は、この物語の主人公である魔女イレイナ、あるいは同業の魔女たちのこと。この世界では、魔法の技術が広く普及し、その中でも最も優れた能力を持っているとされるのがこの「魔女」たちのようです。魔女や魔女見習い、あるいは魔道士たちは、特定の仕事を受け持っている者も多いようですが、イレイナは特定の仕事には就かず、タイトルどおりこの世界の旅を続けながら、行く先々で何らかの依頼を受けて路銀を稼ぐのがなりわいのようです。

 

 18歳と若くして魔女として非常に優れた能力を持つイレイナですが、彼女が旅先で遭遇する出来事の数々は、魔女ですら容易には対応できないようなものも多い。むしろ、彼女の卓越した能力でも本質的な解決は出来ず、そのまま通りすぎるような形で旅を続けることも多いのです。人間の負の側面をまざまざと見せ付けられるような暗い話に遭遇することもしばしばで、むしろそれが彼女の旅の本質かもしれない。このあたり、過去の名作から「キノの旅」や「棺担ぎのクロ。」を彷彿とさせるところもありますね。

 

 しかし、必ずしも暗いばかりの物語でもありません。その魔女と魔女の繋がり、知識と技術の継承と思えるエピソードも、この作品のもうひとつの骨子となっています。イレイナが旅先でたまたま出会った異国の魔女志願の少女・サヤを助けて導いたり、かつて自分を導いてくれた師匠・フラン先生と再会して旅を続けるアドバイスを受けたり。そのフラン先生に教えを受けた時の過去エピソードも大きな見所になっています。フランの教えは、必ずしも明るいことばかりではない彼女の旅を助ける大きな力となっているようです。

 

 イレイナという個性的な主人公自身も、また作品の大きな魅力のひとつ。原作のあずーる先生の絵がかわいすぎるというのがまずあるんですが、アニメの作画でもその魅力を存分に再現しているようで期待十分。また、自分のことを「清廉な魔女」「誰もが振り返り、ため息をこぼしてしまうほどの美貌」などど自称するような飄々とした性格で、ある意味非常に俗っぽい性格とも思えます。ある国では偽占い師として本当に詐欺行為を働くほどで、そうしたイレイナの活躍(?)を追うのも楽しい。原作小説は常に一人称なのですが、アニメではそのあたりどう描かれるのかそれも楽しみです。

 

 現在、原作小説は13巻まで出ていますが(最新14巻が10月刊行予定)、スクエニからコミカライズも行われており、こちらはコミックスが2巻まで出ています(作画:七緒一綺)。こちらの七緒さんの作画は、原作イラストのあずーるさんとは若干の絵柄の違いが感じられますが、しかし原作の面白さをコミックでよく再現していると思います。まだ刊行数も浅く作品の導入には最適だと思いますし、アニメと合わせてこちらもおすすめしておきたいですね。

時!本当に来てるぞ!「まちカドまぞく」2期決定!

f:id:kenkyukan:20200827220454p:plain

 きらら作品のアニメで2期を期待している作品は枚挙に暇はないわけですが、その中でも「まちカドまぞく」は間違いなく最有力候補のひとつで、絶対にやってくれるだろうとずっと期待していましたし、反面もしこのアニメまで2期なかったらどうしようとずっとやきもきしていたところもありました。それがついにこの時期に決まってほんとにうれしい! いやうれしいだけでなく、まさにほっと胸を撫で下ろしたところまでありました。

 

 「まちカドまぞく」は、原作者本人の紹介によれば、「まぞくが魔法少女に挑むアニメ」らしいですが、その紹介のとおりのコミカルなギャグコメディとしても存分に楽しめつつ、魔族と魔法少女の過去から続くシリアスなストーリーにも見ごたえがあり、さらには個性的なキャラクターとその関係性の魅力でも人気を集めました。

 

 もともと原作の4コマの時点で評価は非常に高く、きらら4コマの中でも大本命と言われていましたが、アニメの出来も良くまさに期待通りの大ヒット。百合的な作品としてもひときわ注目を集め、それを発端としたよく分からないワードが流行するという珍現象でも話題を集めました。円盤の売り上げも予想以上のものがあったようで、放送後のイベントの競争率も予想外の高さだったようです。近年のきららアニメの中でも突出したヒット作となり、これが2期なければどうなるんだと思っていた矢先だったのです。

 

 アニメ1期は原作の2巻までの範囲で終わり、これは原作の密度の濃さとストーリーの区切りを考えれば必然でもあったものの、しかし3巻以降でさらに面白いエピソードを多数抱えている作品でもあり、それが見られなかったのは本当に惜しいと思っていました。その点でも今回の2期に期待するところは大きい。

 

 個人的に2期で見たいエピソードは、まずは3巻以降で登場する「純喫茶あすら」の白澤店長と妖狐のウェイトレス・リコちゃん絡みのすべてですね。とりわけリコちゃんは個人的にも一、二を争うほど気に入ってるキャラクターだっただけに、アニメでついに見られることになって本当にうれしい。
 さらには4巻のメインストーリーとなるミカンとウガルルのエピソード。ミカンが「ミカンママ」と呼ばれるようになった最大のゆえんであり、彼女の”呪い”の正体に迫る感動のエピソード。これはアニメ2期では大きな見せ場となるエピソードに違いないでしょう。
 さらに先に進むならば、5巻で登場する”多魔川の水神”こと蛟(みずち)絡みのエピソードでしょうか。こちらはごせんぞことリリスが活躍する笑って泣ける面白い話になっていて、これも(もしそこまで進むなら)是非とも見たい話ですね。

 

 ただ、1期が2巻分までしか進まなかったことを考えると、2期はもしかして4巻まで?とも考えられますし、あるいはあえて今回も2巻分にとどめて、さらに3期以上の展開まで期待するのもありかなと思ってます。そこまでの大作として末永く楽しめるコンテンツになってほしい。今からそんなことまで期待してしまいました。