「紅心王子」まさかの再開&完結・・・!

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 先日、「紅心王子」の作者である桑原草太さんが復帰され、「紅心王子」が再開するという話を耳にして、まさかとは思っていたのですがこれが本当でした。そして、先日12日に待望のコミックス続巻である17巻と最終18巻が同時発売され、かつての読者を中心に大きな反響が巻き起こっています。何らかの理由で連載が立ち消えになってはや6年。もはや連載が復活することはほとんどないだろうと思っていただけに、復活しただけで本当に驚きでした。

 

 「紅心王子」は、かれこれ2007年に少年ガンガンで始まった連載。ある課題(試験)をこなすために人間界にやってきた魔界の王子(悪魔)・さくら紅次郎が、とあるアクシデントから人間界の少女・花と共に暮らすことになる。当初は人間を悪魔よりも下等なものとみなしていた紅次郎ですが、心優しい花と暮らし、あるいは人間界の学校に通うことで、少しずつその心に変化が訪れる。悪魔や天使がなんらかの試験のために人間界を訪れるという話はよく見られますが、これはその中でも花を初めとするキャラクターの優しさ、愛おしさが全面に出たハートフルなコメディになっていると思います。

 

 加えて、紅次郎と花の過去(前世)からつながる秘密、このふたりを巡る魔界および天界の人々の思惑が交錯するシリアスなストーリーも見逃せないものがありました。連載が中断する直前には、いよいよクライマックスに差し掛かるまでに盛り上がっていたのですが・・・。

 

 桑原さんによる中性的で優しい絵柄、雰囲気も最大の魅力。総じて「ガンガン系」の持つイメージ(中性的である種少女マンガなイメージ)をそのまま体現したようなマンガでもあったと思います。桑原さんは、この連載と同時期に芳文社でも「ココロ君色 サクラ色」という連載を続けていましたが、そちらも同等の優しい雰囲気でひどく好感が持てました。かつては芳文社は今より女性向けの雑誌も多かったので、そちらの求める作風にも合っていたと思います。

 

 しかし、そうした活動が堅調であったはずの2014年頃、突然「紅心王子」が休載に入り、再開されなくなってしまいます。同時期に「ココロ君色 サクラ色」も連載終了。また、当時桑原さんはTwitter上でもかなり積極的に活動していた記憶がありますが、そちらの活動も次第に縮小され、ついにはネットでの消息も途絶えてしまいました。

 

 活動が途絶えた理由はいまだによく分からないところで、一部には病気療養のためと言う話も聞きました。いずれにしてもまったく音沙汰なくなってからはや6年近くが経ち、もう「紅心王子」の再開はまずないだろうと思っていました。そんなところでまさかの連載復帰&完結。これほど驚いたことはありません。久々に見た桑原さんの絵は、以前とまったく変わっておらず、懐かしいと思うと同時に本当にうれしいものがありました。今のところ「紅心王子」以外の活動はまだ見られませんが、それでもこうして生存が確認されただけでもうれしい。もうずっと過去の作品となってしまいましたが、これを契機に少しでも新しく作品に触れる人が出てくればこれ以上の喜びはないですね。