「魔女の旅々」待望のアニメ放送迫る!

f:id:kenkyukan:20200910220017j:plain

 かれこれ1年近く前でしょうか。GA文庫からふたつのライトノベルのアニメ化が発表されました。ひとつは「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」、そしてもうひとつが「魔女の旅々」。いずれもスクエニの雑誌でコミカライズされており、非常に面白い作品として追いかけていただけに、どちらもアニメ化発表はとてもうれしいものがありました。そしてあれから1年。まずは「魔女の旅々」の方がこの秋からの放送が近づいてきたので、いよいよおすすめの記事を書きたいと思います。

 

 「魔女の旅々」は、原作・白石定規によるライトノベル。ジャンルはおそらくは純粋な異世界ファンタジーと言えるもので、近年目立つ異世界転生やMMORPGの要素のない本格ファンタジーとして注目していました。加えて、あずーるさんによる挿絵イラストが素晴らしく、それを目にして注目し始めたという理由も大いにあります。

 

 タイトルの「魔女」は、この物語の主人公である魔女イレイナ、あるいは同業の魔女たちのこと。この世界では、魔法の技術が広く普及し、その中でも最も優れた能力を持っているとされるのがこの「魔女」たちのようです。魔女や魔女見習い、あるいは魔道士たちは、特定の仕事を受け持っている者も多いようですが、イレイナは特定の仕事には就かず、タイトルどおりこの世界の旅を続けながら、行く先々で何らかの依頼を受けて路銀を稼ぐのがなりわいのようです。

 

 18歳と若くして魔女として非常に優れた能力を持つイレイナですが、彼女が旅先で遭遇する出来事の数々は、魔女ですら容易には対応できないようなものも多い。むしろ、彼女の卓越した能力でも本質的な解決は出来ず、そのまま通りすぎるような形で旅を続けることも多いのです。人間の負の側面をまざまざと見せ付けられるような暗い話に遭遇することもしばしばで、むしろそれが彼女の旅の本質かもしれない。このあたり、過去の名作から「キノの旅」や「棺担ぎのクロ。」を彷彿とさせるところもありますね。

 

 しかし、必ずしも暗いばかりの物語でもありません。その魔女と魔女の繋がり、知識と技術の継承と思えるエピソードも、この作品のもうひとつの骨子となっています。イレイナが旅先でたまたま出会った異国の魔女志願の少女・サヤを助けて導いたり、かつて自分を導いてくれた師匠・フラン先生と再会して旅を続けるアドバイスを受けたり。そのフラン先生に教えを受けた時の過去エピソードも大きな見所になっています。フランの教えは、必ずしも明るいことばかりではない彼女の旅を助ける大きな力となっているようです。

 

 イレイナという個性的な主人公自身も、また作品の大きな魅力のひとつ。原作のあずーる先生の絵がかわいすぎるというのがまずあるんですが、アニメの作画でもその魅力を存分に再現しているようで期待十分。また、自分のことを「清廉な魔女」「誰もが振り返り、ため息をこぼしてしまうほどの美貌」などど自称するような飄々とした性格で、ある意味非常に俗っぽい性格とも思えます。ある国では偽占い師として本当に詐欺行為を働くほどで、そうしたイレイナの活躍(?)を追うのも楽しい。原作小説は常に一人称なのですが、アニメではそのあたりどう描かれるのかそれも楽しみです。

 

 現在、原作小説は13巻まで出ていますが(最新14巻が10月刊行予定)、スクエニからコミカライズも行われており、こちらはコミックスが2巻まで出ています(作画:七緒一綺)。こちらの七緒さんの作画は、原作イラストのあずーるさんとは若干の絵柄の違いが感じられますが、しかし原作の面白さをコミックでよく再現していると思います。まだ刊行数も浅く作品の導入には最適だと思いますし、アニメと合わせてこちらもおすすめしておきたいですね。