2024年11月号をもってあの「まんがタイムきららMAX」が20周年を迎えるとのことで、それに対する各種企画が盛り上がっているようです。中でも発売号までのカウントダウンでラスト1日前に登場したのが、この雑誌のみならずきららでも屈指の代表作「ごちうさ」こと「ご注文はうさぎですか?」で、しかもこれが現時点でMAX最長連載となっているようです。2011年開始のこの連載が今の最長連載ということで、それ以前の最低でも7年間の作品はもう1つも残っていないことになります。
この「ごちうさ」の1年前に始まったもうひとつの代表作が「きんいろモザイク」で、こちらも非常な人気作品でしたが数年前には終わっています。ではそれ以前のMAXにはどんな作品があったのか? 実は、これがもう覚えている人はかなり少ないのではないかと思えるのです。
この「きんいろモザイク」と「ご注文はうさぎですか」をあたりを皮切りに、きらら作品が多数アニメ化されるようになり、アニメからのファンが一気に増加しました。アニメできらら4コマを知って参入する読者の方が主流となったのです。そして、MAXにおいてはこの2作品が雑誌の看板、ひいては雑誌のメインカラーとなり、逆にそれ以前の作品は、昔からこの4コマ誌を読んでいたコアな読者しか知らないような状態になったと思えます。この記事では、今年できららMAX20周年ということもあり、もはや遠く印象が薄れつつある初期のこの雑誌の連載について、少しでも多くを知ってもらいたいと思いました。
「きんモザ」「ごちうさ」以前のきららMAXはどんな雑誌だったのか。具体的に説明するのはかなり難しいのですが、確かにきらら系として共通した作風は当時からあったものの、昨今のきらら作品とは少し違った雰囲気でもあった気がします。具体的には、このMAXは他のきらら誌と比べてちょっとアクティブな作風、少年誌っぽい雰囲気だったりちょっとエッチだったり、そういう作品がやや多かったイメージがありました。(逆にかわいい系の印象が強いと言われたのが姉妹誌のきららキャラットで、こちらは「ひだまりスケッチ」や「GA」等初期の人気作品の影響が大きいと思われます。)
わたし自身も「きんモザ・ごちうさ以後のMAXとは多かれ少なかれちょっと雰囲気違ってたな」という印象があります。
では、具体的に当時の代表作としてはどんなものがあったのか。個人的な好みもありますが、まずは最初期の2005年から10年の長期連載だった「落下流水」(真田一輝)は押さえたい所です。弓道部の女の子たちの日常を描いた作品で百合要素とが強いのが最大の特徴。ちょっとエッチな作風でもあり当時のMAXを代表する人気作品だったと思います。
さらには「イチロー!」(未影)は外せません。タイトルのイチローは野球選手とは関係なく、これは大学受験に失敗し「一浪」となった女の子たちの日常を描く物語です。予備校での受験勉強ものでもありますがさほど重い作風ではなく、ルームメイトや近所の人たちとのドタバタ劇を描いた楽しい作品になっています。この作品は、2006~2009年頃に何度も表紙を飾ったことで、個人的に当時のMAXを代表するイメージがとても強いです。初期の代表作と言ってもいいかもしれません。
そしてさらなる人気作として「かなめも」(石見翔子)。これも絶対に外せません。何しろきんモザごちうさ以前、MAXで初のアニメ化を達成した作品であり、2000年代(2009年)にアニメ化を飾ったMAX作品はこれしかありません。新聞販売所で働く新聞奨学生たちが主役という点でかなり異色で、しかし個性的な同居人たちとの日常がとりわけ楽しい作風となっています。アニメもかなり人気を集めた記憶があり、初期のきららアニメの成功作のひとつに数えられるかもしれません。
これ以外だと「ひろなex.」(すか)「ぼくの生徒はヴァンパイア」(玉岡かがり)「○本の住人」(kashmir)あたりを挙げておきましょうか。他にも数々の作品を手掛けた荒井チェリーさんの「ワンダフルデイズ」も良作でした。
個人的に今でもやばいなと思っているのが最初期の連載「魔法のじゅもん」(あらきかなお)です。作者が成人マンガ家でもあるせいかぶっ飛んだ下ネタがめちゃくちゃどぎつい。しかもこんなマンガが当時何回も表紙を飾っていたあたり、やはり初期のMAXは今とはちょっと雰囲気や方向性違うなと感じるところでもありますね。
こうして初期の作品を振り返ると、確かに良作と言える連載は数多く見られたものの、のちの「きんモザ」「ごちうさ」と比べるとちょっと印象薄いかなと思えるところもあります。やはり2010年代初期からのこのふたつの新作の実力が突出しており、その後のMAXの方向性を一気に固めた感がありますね。その後さらなるアニメ化ヒット作品の「ステラのまほう」「こみっくがーるず」そして「ぼっち・ざ・ろっく!」へと繋がっていくわけです。
ただ、こうした初期の良作が、とりわけ目の肥えた4コマ読者の注目を集め、のちの飛躍への布石となったことも確かだと思います。奇しくも今創刊20周年を迎えたきららMAX、改めてこれら初期の作品を記録と記憶に残しておきたいと思います。