今年のきらら系アニメを振り返る。

kenkyukan2018-12-30


 先日最後まで「アニマエール!」と「となりの吸血鬼さん」を見終わって非常に満足感(と喪失感)を覚えているところですが、振り返ってみると今年はきらら原作アニメ、いわゆるきららアニメや、あるいは同系の日常ものと呼ばれるアニメが、非常に盛況でありました。1年通して楽しい良作続きで、本当に豊作で幸せな1年だったと思います。
 まず年初の2018年1月からの冬アニメ。このクールはなんといっても「ゆるキャン△」のヒットがあまりにも鮮烈でした。女の子たちがゆるいキャンプを楽しむというコンセプトが大ヒット。キャンプという広く認められた趣味の楽しさを改めて再認識させてくれたこと、中でも「ソロキャンプ」というひとりならではの楽しみをクローズアップして、「離れていてもSNSでつながっている」というキャラクターの関係性で見せてくれました。他の日常もの以上の新鮮さがあったと思います。

 同クールの冬アニメでは、「スロウスタート」も大変な良作でした。事情により1年留年してしまった主人公の高校生・花名の隠された悩みを中心に据えたストーリーは、楽しい高校生活の中でも常に暗い影を落としていて、これが独特の不安定な雰囲気を生んでいたと思います。とはいえ、普段は非常に面白いコメディで構成され、個性的なキャラクターと「新鮮なライチ」に代表される独特のえろ要素(おい)に魅せられる楽しい作品だったと思います。

 もうひとつ、同クールではきらら系ではないものの、電撃大王の「三ツ星カラーズ」のアニメ化も非常な良作でした。上野の街を駆け回って楽しむ小学生3人組と、彼らを暖かく見守り時には一緒に遊んでくれる寛容な大人たちの姿は、卓越した背景演出の力と共に、上野という街の舞台の魅力をも存分に見せてくれました。毎回爆笑できるほどのコメディの面白さもぴかいちで、非常に面白かったと思っています。

 次いで4月からの春アニメでは、「こみっくがーるず」があまりにも面白かった。女子寮に住む4人の女子高生マンガ家の日常の活動を描くこの作品。とにかく主人公の”かおす先生”こと持田薫子の個性が面白すぎました。極端にネガティブで卑屈でありながら、オタク趣味にどっぷりとつかっているその独特の性格は、一部の人たちの共感を呼ぶに十分で、そんな彼女が必死にマンガに取り組む姿には、ある種の突き抜けた感動を呼び覚ますものがあったのです。少女マンガ家の小夢、TLマンガ家の琉姫、少年マンガ家の翼と、寮に集う仲間たちの個性も最高で、作中の編集部として芳文社(をそのままモデルにした出版社)が登場するなど、いかにもきらららしいマンガ家マンガになっていたと思うのです。

 次いで夏からは「はるかなレシーブ」。きららではありますが、日常ものと言うよりは部活、スポーツもので、沖縄を舞台にビーチバレーに取り組む高校生たちの活動を描く、テーマ的に新鮮で興味深い一作でした。作中ではかなりしんどいと思われる練習・試合風景もしっかり描かれるものの、同時にビーチバレーに取り組む楽しさが常に全面に出ていて、そのどこまでも明るい雰囲気は、やはりきらららしい作風であったと思います。

 同クールでは、一迅社ぱれっとから「すのはら荘の管理人さん」も挙げておきたい。すのはら荘というアパートを舞台に、中学生の少年亜樹(あっくん)を管理人の彩花さんが(主に性的に)管理するという中々に過激な設定のえろコメディでしたが、しかしその柔らかな雰囲気の作風は、過激すぎない優しさも感じられるもので、寮に集う個性的なメンバーたちによるお笑い要素も面白く、これもまた日常ものの良作であったと思っています。

 そして秋。このクールもきららからはスポーツものといえる「アニマエール!」が屈指の良作でした。チアに取り組む高校の部活動を描くこの作品、最初は主人公こはねの思い付きで始まった活動が、彼女の積極的な活動で次第にその仲間と応援者を増やしていき、「チアの輪」が広がっていくその展開には、すがすがしい感動をも与えてくれるものがありました。きららの部活・スポーツものの中では、かなりギャグ要素が強いのも特徴で、毎回のごとく独特すぎる個性を持つメンバーたちの行動で心の底から笑わせてくれました。

 もうひとつ、これもきららではないものの、MFのコミックキューンから「となりの吸血鬼さん」があまりにも素晴らしい傑作になっていたと思います。吸血鬼という人間にとって恐ろしいはずの存在が、近所の家でごくつつましく現代的で庶民的な生活を送っているという、そのギャップがことごとく面白く、また「人外の吸血鬼と人間でも分かり合えて交流出来る」という優しさと寛容性に満ちたテーマで、感動を呼び起こす屈指のエピソードを何度も見せてくれました。これが終わるのは本当に寂しいものでしたが、楽しかった今年の日常もののラストを飾るには最高の作品だったと思います。