これが異世界コミケ! 「魔法使いの印刷所」

kenkyukan2018-06-08

 夏コミの当落発表を間近に控えた昨今、皆さんいかがお過ごしでしょうか。ここでひとつ、そのコミケをテーマにした新作をひとつ紹介したいと思います。電撃G'sコミックで連載中の「魔法使いの印刷所」です。

 そもそも以前から、作中にコミケが登場するマンガやアニメは枚挙に暇がありません。同人やイベントそのものをテーマにした作品もありますが、そうでなくともマンガやアニメを扱う作品で、それと関連が深いイベントである同人イベント、その代表であるコミケが出てくる作品は数多い。最近ではかなり詳しくリアルにコミケを描く作品も当たり前になりました。そんな時代において、異世界転生ものと組み合わせた「異世界コミケ」ものが出てくるのは、もはや必然とも言えるでしょう。

 作品の舞台は、まさにスタンダードな剣と魔法のファンタジー世界。そんな世界にコミケ帰りに飛ばされた少女が、異世界から帰る魔法の手がかりを求めて、そんな魔道書が集まるイベント「マジックマーケット」を開催する主催として奮闘するというストーリーです。
 作中で登場するイベントこそコミケならぬ「マジケ」ですが、やっていることはコミケそのもの。徹夜組の防止や開催後の列の整理、事前のカタログの製作などの作業に全力を尽くし、自身も精一杯楽しむ。そんなわたしたちがよく見るコミケの光景が、ファンタジーの世界でそのまま繰り広げられているところが非常に面白い。最初の開催を無事終了させた主人公は、さらに魔道書を求めて印刷所まで運営することになります。そんな印刷所の仕事ぶりも、何度もサークル参加している人たちにとってはよく知られた光景でしょう。

 1巻の範囲で気に入ったエピソードは、平和な世界に物足りなさを感じていた屈強の騎士が、イベントの列整理の仕事に駆り出され、そこで溢れる参加者たちを必死に導く作業を通じて充実感を覚えるというもの。身動きが取れないほどの会場内での大変な作業、しかしその最中に胸に満ち溢れる高揚感! 「わたしは・・・楽しんでいたのか?」と後になって振り返る彼は、今までにない充実感に満ちていたのです。

 元々はウェブ掲載のマンガだったようですが、商業化に当たって新たに作画担当が抜擢され、徹底的に描きこまれた濃い作画が味わえるのも魅力です。重厚な異世界ファンタジーの絵柄でやっていることはコミケというそのギャップも面白い。コミケを描くマンガにまたひとつ良作が加わった気がします。