「ハイスコアガール」ついに最終回。

kenkyukan2018-09-28

 7月よりアニメも好評放送中の「ハイスコアガール」。しかし、原作の方は先日最終回が告知され、大いに衝撃が走ったのですが、ついにこのビッグガンガン9月発売号において終了を迎えることになりました。最終回は、もはや多くを語ることもない万感の内容で、これまで登場したゲームキャラクターたちが揃ってハルオの後押しをする展開は、これまでの集大成のようで思わず泣けてしまいました。

 「ハイスコアガール」が始まったのは、まだビッグガンガンヤングガンガンの増刊だった2011年。気が付けば約8年もの長い連載になっていました。しかし、連載途中で巻き起こった著作権問題により不慮の中断となり、2014年から2016年にかけて2年もの間連載を休止していたことは、大いに心に留めておく必要があるでしょう。これによって連載の勢いは一時大きく削がれ、再開後も著作権に関わる場所(主にSNKのゲームに関する描写)は多くが差し替えとなり、当初望んだ形での内容にならなかったのは、あまりにも残念なところでした。さらにテレビアニメに関しては、2013年に企画が始まり、2014年には放送される予定だったはずが、この騒動で完全に未定となり、実際に放送されるまでに4年を要することになってしまいました。

 作品の内容も、そうした連載の経緯に合わせるかのように激動と言えるものでした。90年代のゲームセンターを舞台に、日々進化するゲームを追いかけるかのように、主人公のハルオ(矢口春雄)は、小学生から中学生、そして高校生へと成長し、その間に大野晶や日高小春らヒロインたちとの恋愛物語を展開していく。「90年代アーケードラブコメディー」というコピーになっていますが、実際にはひどく重い展開が多数訪れ、それに必死で立ち向かっていくハルオの成長物語になっていたと思うのです。このマンガの読者には、かつての90年代のゲームの描写に興味を持って読み始めた人と、こうしたラブコメや恋愛・成長物語に惹かれて読んだ人がいると思いますが、その双方を満足させるに十分な内容だったと思います。

 もうひとつ、このマンガならではの要素として、この双方を絡めた「90年代ならではの時代性」を挙げたいと思います。作品の舞台である90年代は、時事や世相的に見ても激動の時代とも言え、例えば95年には阪神大震災オウム真理教事件で大いに揺れました。しかし、このマンガの作中では、そうした出来事はあまり描かれず、むしろハルオが日々取り組むゲームの流れが詳細に描かれる。95年と言えば、いまだアーケードは盛り上がりを持続していて、新興の3D格闘を中心にいまだ話題作が次々と出ていた時代。さらには家庭用ゲームでも、当時発売直後だった次世代ゲーム機の話題で持ち切りでした。そんな時代に、ハルオは日々新しいゲームの情報を敏感に追い掛け、真剣にゲームに取り組んで腕を磨いていく。そんなあの時代ならではの努力がダイレクトに描かれているのです。

 これが、もし普通の物語だったら、震災やオウムのような当時の時事的な話題が、物語の背景として描かれるのだと思います。しかし、当時のゲーマーにとっては、日々登場するゲームを追い掛けることがすべてだった。わたし自身も、当時は新作の情報には常に眼を光らせていましたし、どこのゲームセンターに何が入荷したかすべて覚えていましたし、日々自分のキャラクターをどう強くするかとかステージの攻略法とかそんなことばかりを考えていた。そしてこの「ハイスコアガール」は、そんな当時の時代性のもうひとつの一面を、間違いなく捉えた名作だったと思うのです。