講談社シリウスから3冊同時に4コマ新刊発売!

kenkyukan2018-02-08

 先月末のコミックス新刊から「にちぶっ!」「水曜日の夜には吸血鬼とお店を」「漫画家ちゃんは眠れない」と3冊の4コママンガが同時に発売されました。一見して萌え4コマにも見える(というか萌え4コマそのものの)装丁で、きららかキューン連載のマンガかな?と思ってしまうのですが、これが実は3つとも講談社月刊少年シリウスの連載なのです。
 「にちぶっ!」(石川沙絵)はタイトルどおり高校で日本舞踊に取り組む部活(日部)の活動を描いた作品。部活説明会で演じられた日本舞踊部の「藤娘」の美しさに魅せられた新入生の少女が、部活に入って一から日舞に取り組んでいくというもの。部活はそれほど厳しいものではなく、主人公が入るまではまるで活動してなかった生徒もいるくらいでしたが、そこに主人公が入ることで少しずつ活動が始まっていく。日舞や着物、昔の日本の文化を解説していく話も要所でふんだんに盛り込まれ、これは勉強にもなって感心しました。

 一方で、ゆるやかな日常を描くエピソードも多く、実家がカフェをやっている女の子が持ってくるお菓子やお茶でのパーティー、メイド服の制服を着てのバイト、浴衣を着て出かけた夏祭りでの縁日など、楽しい話も多いです。厳しい活動はあまりないのんびりほのぼの部活動4コマという感じですね。

 「水曜日の夜には吸血鬼とお店を」(羽戸らみ)は、ゴスロリショップ(ゴシックロリータの衣装店)を運営する吸血鬼の女の子と、ひょんなきっかけで彼女の店の手伝いをすることになった人間の女の子の話。古風でちょっと世間知らずの吸血鬼に、現代的な人間の女の子たちが協力して店を盛り上げていく流れで、こちらもほのぼのしたワーキングコメディとも言える作品になっています。
 設定的に同じく吸血鬼と人間のコメディ「となりの吸血鬼さん」を思い出すところがありました。あるいは、このところ4コマや百合作品で吸血鬼と人間のコメディや恋愛ものがよく見られるので、今のひとつのトレンドかもしれない。ただ、この「水曜日の夜には〜」は、ゴスロリの衣装という大きなテーマがあり、ハロウィンやクリスマスに合わせたコスチュームや、時には和服と合わせたコーデなども見られ、ファッションとしてかなり本格的でビジュアルも映える内容になっているのが大きな魅力だと思います。

 この2作品の作者、石川紗枝さんと羽戸らみさんは、かつて創作同人でその活動を知っていたのですが、これが商業初コミックスとなりました。石川さんの方は、おそらくこれが商業マンガ初連載だと思います。羽戸さんは、かつて「ガレッド・デ・ロワ」というフルカラーのウェブコミックを手掛けていたことがありましたが、残念ながらコミックスにはなりませんでした。ゆえに今回のコミックス発売はとてもうれしい。

 そしてもうひとつ、「漫画家ちゃんは眠れない」(ゆあみ)も同時に発売されています。こちらは女子高生のマンガ家の日々の活動を描くほのぼの4コマ。女子高生のマンガ家4コマと言えば、あの「こみっくがーるず」も思い出してしまいますが、こちらも負けず劣らず面白い4コマになっていると思います。作者のゆあみさんは、これまでは「むにゅう」名義で主に美少女ゲームの原画やライトノベルの挿絵の仕事を手掛けており、あるいはコミックアライブでもマンガ連載がありましたが、今回名前を変えての萌え4コマ連載はちょっと意外で驚きました。

 そして、こうした作品が、あの月刊少年シリウスで連載され、3冊同時にコミックスが発売されたというのが驚きです。シリウスは、かつて2005年に新創刊された雑誌で、当時創刊が相次いだ時代に創刊されたマンガ雑誌のひとつ。基本的には少年誌ながら、当初からファンタジー作品や小説原作の作品が多い傾向で、マガジン系列のほかの講談社の雑誌に比べるとややコア読者向けの印象があります。アニメ化もされた「夜桜四重奏 〜ヨザクラカルテット〜」や「将国のアルタイル」「妖怪アパートの幽雅な日常」、あの進撃の巨人の前日譚「進撃の巨人 Before the fall」などが今の代表作品でしょうか。

 こうした少年向け作品中心の雑誌で、まさに萌え4コマとしか言いようのない作品の連載が始まったこと自体がまず驚きでした。それも、たまたまひとつほど作品を載せてみたという感じではない。3つの作品がほぼ同時に始まり、コミックスも3作品同時発売となると、こうしたジャンルの作品を集めて連載させようという明確な意図が感じられます。まさに「シリウス萌え4コマ始めるってよ」「講談社萌え4コマ始めるってよ」とでも言うべき意外なニュースでした(笑)。

 現在、こうした4コマはやはり芳文社のきらら系列の雑誌の勢いが圧倒的で、人気作品の多くがここから出ています。アニメ化作品も多いし有望な新規作品も数多い。そのきららをかろうじて一迅社ぱれっとやメディファクトリーのコミックキューンが追随している状況ですが、規模としてはまだまだというところです。そんな中で、講談社シリウスがこうした作品に手掛けるようになった期待感は大きい。この3作品を見る限り、きらら連載と比べてもまったく遜色ない出来だと思いました。今後の展開にも注目していきたいと思います。