次にくるきらら4コマを考える。

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現在、「芳文社70周年記念キャンペーン」と銘打って、Kindle芳文社のコミックス約1200冊以上が一冊77円で販売されるというセールをやっています。

芳文社といえば(我々にとって)きらら4コマこそが最大の目当てであるわけですが、このコミックスは1冊900円前後とかなり高めで、コミックスの購読には躊躇する人も実は多いのではないかと思っています。そのため、今回の77円は破格の大チャンス。この機会にこぞっておすすめのコミックスを紹介する動きが広がっているようですが、わたしも期間終了間際(7月16日まで)に駆け込みでいくつか紹介したいと思います。

とりわけ、ここ近年の新作から、「次にくる」とも呼べるきらら4コマの期待作からいくつか紹介したいと思いました。

 

「初恋*れ~るとりっぷ」(永山ゆうのん)

かつてはきらら作品で同人活動を長く続け、きららでもすでに「みゅ~こん!」で連載デビューしていた永山ゆうのんさん最新作。前作も期待していたけど早期の終了で残念に思っていたのですが、こちらの作品はのっけからかなり評判いいようで今度こそ期待したい。

仙台駅を中心に高校の鉄道部の活動を描く。仙台圏の有名どころの駅を積極的に訪問するエピソードは、鉄道趣味の魅力十分。さらには鉄道部をひとりで守ってきた顧問の先生が、部活の部員の中心になっている点が、またちょっと新鮮かもしれません。

きららにも百合的な関係が見られる作品は数ありますが、かわいい顧問の先生に憧れて活動を進める展開には、独特の微笑ましさと年上の指導者に守られ導かれる心地良さがあります。絵柄なども含めて個人的な好みでは一推し。

 

「旅する海とアトリエ」(森永ミキ)

こちらは海外の旅紀行4コマ。旅先で知り合ったふたりの少女がポルトガル・スペイン・イタリアと南欧諸国を巡っていく。自らのルーツややりたいことを旅の果てに求める感傷的なストーリーと、グルメネタを中心とした軽快なコメディがバランスよく織り込まれた良作観光地や街角の描写、その薀蓄の解説など名所観光ガイド的な魅力も十分。

ゆるキャン△(キャンプ)あたりがそのきっかけだと思いますが、ここでも鉄道に旅とアウトドアな趣味を描く作品が、ひとつのトレンドになっているような気がします。

 

「ぼっち・ざ・ろっく!」(はまじあき)

おそらくは次にくるきらら最有力作品。陰キャ・オタク属性全開の高校生ぼっちちゃんが、あえてバンド活動でロックに挑む。

ずっと以前からオタクを主役にした作品には枚挙に暇がありませんが、これは本格的な音楽活動とがっちり絡めた作品として、ひとつの決定版にして最大の名作になるかもしれません。オタク・コミュ障ならではの笑える(笑えない)自虐的なコメディでひたすら爆笑し、一方で懸命にバンド活動に取り組む熱い物語にも強烈に引き込まれる。

主人公たちのモデルがアジカンなのも個人的にはポイントが高い。有名CDのジャケットをタイトルイラストに採用したり、積極的に盛り込まれた音楽ネタも魅力ですね。

 

「みわくの魔かぞく」(ごぼう

母親の再婚によって魔王の父親と吸血鬼の姉妹と家族になった女の子の話。金髪美少女の吸血鬼と黒髪美少女の人間の女の子。こ、これは・・・。

きんいろモザイク」リスペクトの「となりの吸血鬼さん」が、一周回って芳文社きららに帰ってきた!(笑) コミックス表紙はすごく綺麗でかわいいですが、中身は思ったよりコミカルな絵柄でギャグ度も中々に高い作風。芳文社ならではの異種族コメディを存分にご堪能あれ。

 

「紡ぐ乙女と大正の月」(ちうね)

大正時代にタイムスリップした現代の女子高生・紡と同時代の女子学生が同居して学校に通う大正モダンコメディ。この時代ならではの慣れない慣習と厳しい世相を描きつつも、それでも存分に楽しいと思えるのは、紡を助けてくれた公爵令嬢・唯月(いつき)のおおらかな優しさにあると思うんですよね。自身も必ずしも恵まれない境遇にありつつも、それでも大いなる寛容さで紡を守ってくれる。

学校で出会い友人となる女子学生たちもみんなかわいくて、百合的な展開も存分に楽しめます。当時の風俗を積極的に取り入れた描写も魅力。この時代を舞台にした作品は数ありますが、きららならではの明るい作風になっていると思います。