自主制作アニメ「ケムリクサ」まさかのテレビアニメ化決定!

kenkyukan2018-02-13

 先日、「けものフレンズ」のたつき監督を中心とするアニメ制作サークル「irodori」が、かつて制作した自主制作アニメ「ケムリクサ」がテレビアニメ化されるという告知があり、これには本当に驚いてしまいました。けものフレンズで一気に知られることになったたつき監督ですが、かつて同人サークルで作ったアニメがテレビアニメ化されることになるとは思わなかった。「アニメのアニメ化」というまさに謎の企画となってしまいました。
 折りしもたつき監督の久々のコミティア参加に合わせたかのような告知。あのけものフレンズに関わる大きな事件により、続編への参加は覚束なくなってしまいましたが、自分としては、これからもかつてのように自主制作アニメをマイペースで続けてくれればいいと思っていました。それが、テレビアニメと言う形で急にまた表舞台に出ることになって驚きです。

 「ケムリクサ」は、かつて2011年から2012年にかけて制作され、ニコニコ動画に投稿されていた自主制作アニメ。irodoriは2008年から投稿を始めていましたが、これは比較的後期の作品でかなり本格的なシリアス作品となっています。長い間一部の人にしか知られていませんでしたが、けものフレンズのヒットによりたつき監督の過去作にも注目が集まるようになり、改めて再評価される形となりました。

 肝心の内容ですが、これは特異な世界観が特徴のハードSFでしょうか。人間が完全に滅び危険な「虫」たちが跳梁跋扈する荒廃した世界で、「村」と呼ばれる壁に守られた本拠地で活動する七姉妹の物語です。そこにある日ひとりの人間の男が紛れ込むことで、壁の外の世界への探索の物語が幕を開けることになる。簡単にキャラクターが死んでいくハードでシビアな世界ではありますが、人間らしい温かみも感じられ、演出もスタイリッシュで極めてレベルの高い作品だと思いました。
 また、のちのけものフレンズに通じると思われる要素が散見されるのも注目すべきポイントで、ある意味ではその原点、プロトタイプとも言える作品となっています。主人公と言える人間の男は、あのかばんちゃんと立ち位置がよく似ていて、まったく同じセリフも出てきます。ここから何らかの発想を得たことは間違いないでしょう。

 投稿された作品は全部で28分程度の長さで、テレビアニメなら1話分、内容的にはプロローグでこれから旅が始まるというところで終わっています。これだけできれいにまとまった良作ですが、これがテレビアニメ化されて続きが観られるとなると一気に楽しみが広がります。外の世界は、あの弐瓶勉の世界観を彷彿とさせる廃墟が折り重なる世界で、最近では「少女終末旅行」と言えばいいでしょうか。そんな世界を旅する物語が見られるというだけでわくわくしますし、あるいは自主制作どまりだった作画のレベルが、今のテレビアニメのクオリティで見られるとなると本当にすごいものになりそうです。

 個人的には、この作品にとどまらず、irodoriの他の自主制作作品も日の目を見てほしいと思います。最初の作品である「眼鏡」も、こちらはパロディ満載のギャグコメディですが本当に面白い。あるいは、たつき監督の最新作である「傾福さん」も、ゆったりした雰囲気と不思議な世界観で魅せられる作品。これらの作品を1クールのまとまったテレビアニメにするのは難しいかもしれませんが、短編シリーズのような形で構成するのはどうか。今回の「ケムリクサ」テレビアニメ化で、そんな夢も広がってしまいました。