大人にとっての「日常系漫画」とは?

kenkyukan2017-10-18

 少し前の話になりますが、地元紙の中国新聞の増刊誌で、「癒しの日常系漫画」という特集があり、思わず興味を持って手に取って読んでしまいました。しかし、実際に読んでみると、紹介されているタイトルが自分の予想とは違っていて、その意外性に驚くことになりました。
 記事で取り上げられていたタイトルは、「ワカコ酒」「異世界居酒屋のぶ」「サチのお寺ごはん」「はらペコとスパイス」「山と食欲と私」など。あれ? これはもしかして日常系というよりは食マンガだな?
 新聞の購読層は、やはり大人の社会人が中心ということで、社会人のライフスタイルに合った食マンガを取りあげることになったのでしょうか。先日アニメが放送された「異世界食堂」が、30代以上の年代に特に支持されていたというデータもあります。もしかすると、「大人にとっての楽しい日常=おいしい食事」という図式が成立するのかもしれません。

 「ワカコ酒」(新久千絵)は、26歳の女性会社員・ワカコの一人酒を描いた作品。おいしい料理とお酒の組み合わせにめぐり合えた瞬間の幸福感がよく描かれた快作で、この中ではとりわけよく知られた作品となっています。実在するお店が登場するのも大きなポイントでしょう。

 『異世界居酒屋「のぶ」』(蝉川夏哉・ヴァージニア二等兵)は、ファンタジー世界で現代の居酒屋が大流行するという話。ライトノベル原作のコミカライズで、先にアニメ化した「異世界食堂」と重なり比較されることも多い作品ですが、こちらも面白さは十分。アニメ化も控えていて期待も大きいです。

 「サチのお寺ごはん」(かねもりあゆみ)は、不摂生を続けていた女子・サチがお寺の精進料理に触れて食生活の改善にチャレンジする話。「はらペコとスパイス」(五郎丸えみ)は、社会人のOLが食文化の研究家と出会って世界の料理の魅力を知る話。いずれも社会人の女子が主役で、やはり大人向けのグルメマンガという気がします。

 きらら系作品からは、アニメ化を控える「ゆるキャン△」(あfろ)が入っています。数あるきららの日常系作品の中で、この「ゆるキャン△」が選ばれているのも、やはり大人の趣味のひとつであるキャンプ(とそこでの食事)にスポットが当たっているからだと思えます。まあ「ゆるキャン△」も半分はキャンプでのおいしい食事を楽しむ食マンガみたいなものだし(?)、そういうチョイスなのかなと。「山と食欲と私」(信濃川日出男)も、同じようなコンセプトを感じます。

 食マンガ以外の作品からは、あの「よつばと!」(あずまきよひこ)や、ベテラン作家が愛犬を描いた一作「コタおいで」(村上たかし)、男子高校生の笑えるトークを描いた「セトウツミ」(此元和津也)などが取り上げられています。こうした作品が、社会人にとっての癒やしなのかなと考えるとなかなか面白いと思いました。