ドラマ性よりも趣味性がトレンドの時代に?

kenkyukan2018-11-06

 前回の日記で「ゆるキャン△」のあfろ先生のもうひとつの連載「mono」を取り上げました。いずれの作品も、旅やグルメや写真、車・バイクといった作者ならではの趣味性が存分に出ており、それが大きな共通点になっています。

 そして、こうした趣味を全面に出した作品が、ひとつのトレンドになりつつあるのではないかと、最近はそんな風にも感じるようになりました。「ゆるキャン△」は、なんでも円盤が12000枚くらい売れるヒット作になったらしいですが、それには優れたストーリーやキャラクターだけでなく、作中で取り上げられた「趣味」に、非常に共感を覚えた人が多かったという理由も大きいのではないか。また、キャンプやグルメ、旅行、オートバイに車と、作中で描かれた趣味が、いずれも大人の娯楽として広く認められたジャンルであったことも大きいと思います。アニメやゲーム、マンガといった趣味と違い、こうした幅広く一般層にも認められた趣味を取り上げている限りは、「オタク向けだからダメ」「子供向けだから興味なし」といった反応が来ることはない。ゆえに、広く大人の視聴者にも人気の出る作品になり、聖地巡礼やそれに対する地元の対応などのムーブメントも大きく盛り上がったのではないかと見ています。

 こうした趣味性が強く出た作品の先駆的なタイトルとして、あの「孤独のグルメ」を思い出すのですが、その実写ドラマの主演である松重さんが、以前「もう6シーズンもこのドラマをやっているが、いまだに何が面白いのか、なぜ人気があるのかも分からない」と発言したことがあります。確かに、個性的で魅力的なキャラクターが、ドラマチックな非日常の体験をするようなストーリーは、この作品では希薄です。従来のドラマ的な観点から見ると、一体なにが面白いのか分からないかもしれない。

 しかし、視聴者が求めているのが、そうしたドラマ性ではなく「趣味性」だと考えるとどうでしょうか。ここはと思える定食屋や居酒屋でひとり食事を楽しむという、大人ならではの楽しい時間。そうした自分の良く知る趣味や娯楽が描かれるだけで楽しい。そういう理由から幅広く大人の視聴者に受けたと考えると分かりやすいのではないかと思います。

 もうひとつ、先日アニメが放送された「ハイスコアガール」も格好の例として挙げたい。こちらは、主人公たちによるラブコメや青春ものとしてのストーリーにも見るべきものがありますが、同時に「90年代アーケードゲームを中心としたレトロゲーム」という趣味がテーマになっていることも、大きなポイントになっています。これによって、かつてのゲームファンを中心に非常な注目と話題を集めることになりました。
 もともと、原作マンガの連載の時点で、読者のそうした反応は顕著でしたが、アニメが放送されることで、さらに広く昔のゲームが再注目を集めるきっかけにもなりました。これもまた、かつてこうしたゲームを趣味にしていた大人の視聴者の人気を集めたと思われますし、こうした趣味性が前面に出ることで人気を集める作品は、今後ひとつのトレンドにもなるのではないかと思っています。