「なでしこドレミソラ」4巻5巻同時発売。

kenkyukan2018-11-15

 今月のきららフォワードの新刊から「なでしこドレミソラ」(みやびあきの)の4巻、そして最終巻となる5巻が同時に発売されました。さらに続く予定もあったようですが、同時発売のこの4巻・5巻をもって完結。フォワードの連載の中でも、非常に評価の高い作品でもあったので、この決定は意外で、終了を惜しむ声は多数聞かれたと思います。わたしも出来ればもっと続いてほしかったですが、ただここで完結としても文句のない作品でもありました。
 「なでしこドレミソラ」は、きららフォワードで2016年から始まった連載。和楽器を演奏するバンドに取り組む女の子たちの活動を描いた作品でした。和楽器の音やその世界に魅せられた彼女たちのひたむきな思い、楽しみながらも真剣な活動ぶりが印象に残るストーリーで、ひとりひとりのキャラクターを掘り下げたエピソードは、いずれも強く引き込まれるものがあったと思います。

 ひとつこの作品ならではの特徴として、「和楽器でのバンド」という日本でもそれほど知られていない活動に取り組む際の苦労が、丹念に描かれていることがあります。主人公の演奏する三味線を始めとして、尺八や筝など、個々の和楽器についてはまだ知られていると思いますが、それらを組み合わせた音楽活動となると、まだあまり触れたことがない人が多いでしょうし、そうした音楽を聞いてもらうための工夫、努力が描かれている点も、注目すべきポイントだったと思います。

 もうひとつ、当初から注目されたポイントとして、作中で奏でられる「音」の表現に特筆すべきものがありました。楽器での演奏シーンにおいて、そこから流れる音が、まるで帯のように川のように、華やかな色彩で彩られた流れで表現される。これは、他の作品ではあまり見られなかった表現で、初めて見た時には目を奪われました。流麗かつ澄んだ音を奏でる和楽器の魅力を存分に出していたと思いますし、これには実際に和楽器に触れている読者の間からも大きな反応があったようです。

 連載が続く予定でもあったので、これから先もさらに素晴らしい音の演出を見たかった思いもありますが、ただ5巻までのストーリーでも大きな盛り上がりを見せて綺麗にまとめられており、キャラクターたちが奏でる和楽器、その音に対する思いは十分に伝わるものがありました。名作だと思いますし、完結した今からでもさらに多くの人に読まれてほしいと思います。