今回のルパンは面白いぞ!

kenkyukan2018-05-23

 先日より始まっているルパン三世の新作「PART5」。数年前に放送されたPART4に続く近年の新作ですが、これが予想以上に面白くて毎週楽しみに待つようになりました。過去のシリーズのファンに向けた回顧的な要素も盛り込みつつ、一方で最先端の時勢をも積極的に取り入れたストーリーで、最初に見たときにはかなり驚きました。

 1話から始まった最初のエピソードでは、ルパンがいきなり仮想通貨を盗み出そうというミッションに挑戦。侵入したサーバーの建物の奥底でハッカーの少女を救出、さらには敵対する相手から「ルパン・ゲーム」というSNSでルパンを捕らえようというゲームを仕掛けられ、その対応を要求されるという、まさに今のインターネットを大きくフィーチャーした内容になっていました。仮想通貨などは先日の事件から間もないまさにタイムリーすぎるネタ。今のルパンは仮想通貨まで盗むようになったようです(笑)。

次元「形のないものを盗むなんてどうもピンと来ないな」
ルパン「デジタルだろうが現金だろうがどちらも同じことだよ」

 この内容を見て少し思い出したのが、同じ日本テレビで数年前に放送された「ガッチャマンクラウズ」です。こちらもインターネット、とりわけSNSをメインテーマにしており、SNSを通じてユーザーたちが与えられたミッションに挑戦するという設定で、非常に通じるものがありました。救出されたハッカーの少女(アミ)が、いわゆるネット依存で、ネットで得られた情報や知識を優先しようとする在り方も、まさに現代的。「小さな頃からネットに依存してきた子供が最後にどうなるのか」 その結末が興味深くもありましたが、そのラストは思った以上に現実に溶け込んだ終わり方だったのも良い結末だったと思います。

 その最初のエピソードが5話で終わった後の次の6話では、一転して昔風の作画と演出でギャグ満載の幕間話を披露。こうした昔のシリーズをオマージュするような演出も、このPART5の大きな特徴で、かつてのルパンを見ていた視聴者へのサービス精神が感じられるのもうれしいところです。

 そしてその6話を挟んで7話から始まったセカンドエピソードは、さらに一転して絵画の贋作に関わる人たちの姿を取り上げた叙情的なストーリーを披露。贋作者やその絵画を売る画商たちが、ルパンと旧知の間柄という設定で、悪人同士の一物含んだかのような会話劇が面白い。賑やかな街並みを舞台に、敵対する諜報員相手に逃走劇を繰り広げるアクションシーンも見入るほどの出来でした。

 もうひとつ、今回のルパンで注目したポイントは、徹底的にこだわって描かれたと思われる背景美術です。ルパンたちがアジトにしているアパートの生活感溢れる描写や、細かく描かれた瀟洒で活発な雰囲気の街並み、一転して裏寂れた退廃的な雰囲気の田舎町など、極めて絵画的とも言える緻密な背景描写。この徹底的なまでの描き込みには思わず唸ってしまいました。

 5話(=トータル約2時間)で1エピソードが完結するなど、映画的な構成になっていると思われるのも今回のルパンの魅力。2クールは放送が続くようで、これから先のエピソードもまだまだ楽しみです。