「やがて君になる」アニメ化決定!

kenkyukan2018-05-15

 このところ自分の好きな作品のアニメ化が相次いでいて、非常にうれしいかぎりなのですが、中でもこの電撃大王の連載「やがて君になる」(仲谷鳰)のアニメ化は、とりわけ特別なものがあるかもしれません。もともと以前よりずっと注目されていたマンガで、まず確実にアニメ化まで行くとは思っていましたが、連載3周年のここにきてついにアニメ化告知。ついにこの時が来たかと思うと同時に、もう連載が始まって3年も経っていたのかとも感じてしまいました。今でも電撃大王の連載としてはとても新鮮な感覚があります。
 肝心の内容ですが、とある高校(遠見東高校)の生徒会長・七海燈子(ななみとうこ)と、生徒会役員の1年生・小糸侑(こいとゆう)の特別な関係を中心に、ふたりを取り巻く周囲の人々の人間関係をも様々な視点で描く学園ストーリー、でしょうか。燈子と侑、ふたりの女の子の恋愛的な関係描写から、百合作品として大きな注目を集め、ここ最近では最大の期待作のひとつともなっているようです。

 しかし、単に百合的な関係のみならず、キャラクターごとにさまざまな恋愛の形が見られるのも、この「やが君」の大きな魅力だと思っています。例えば、主人公のひとり侑は、誰かを特別に思う気持ち、すなわち恋愛感情が理解できず、燈子と接点を持った今でも、いまだにそれで悩んでいる状態が続いています。また、彼女と同じ生徒会員の男子は、恋愛感情そのものを持っていないらしく(いわゆる無性愛)、しかしそれを寂しいとは思わず、むしろ他者の恋愛を眺めることを楽しみとしているという、こちらも興味深い設定のキャラクターとなっています。近年同性愛を始めとして様々な関係性がクローズアップされていますが、この作品もそうした点において現代性を持っているのかもしれません。

 加えて、主人公のひとりである七海燈子においては、恋愛とは別に大きなテーマが設定されているのも、注目すべきポイントと言えるかもしれません。かつて特別な存在として多くの人に慕われていた姉の存在を気にかけ、その代わりになろうと努力しつつも、しかし同時に大きな葛藤に悩まされている。そんな燈子が、姉の影に囚われた状態から自分らしさを取り戻すという物語が、もうひとつの大きな骨子になっている。こうして多層的に幾つものテーマを同時に織り込むことで、非常に奥深いストーリーにもなっていると思います。

 あるいは、そうした作りこまれたストーリーだけでなく、作者の仲谷さんの描くキャラクターや背景も素晴らしく、シンプルなビジュアル的な魅力も非常に大きいと思います。少女マンガ的な百合作品とはちょっと雰囲気の異なる、さらっとしたタッチのかわいらしいキャラクターと爽やかな背景描写。本編の作画のみならず、単体のイラストも非常に魅力的で思わず引き込まれるものがあります。個人的に特に好きなのはコミックス2巻の表紙で、春の鮮やかな新緑の小道をふたりが歩く光景です。ずっと遠くまで見通せる背景に吸い込まれるようで、緑の風が吹き渡るような爽やかな絵になっていると思います。

 今回のアニメ化告知に際して、早速キービジュアルが公開されていますが、こちらはより少女マンガ的な落ち着いた作画になっているようで、原作の仲谷さんの絵柄とは少々雰囲気の異なる点が、個人的にちょっと懸念しているところではあります。しかし、それでも楽しみなことに変わりはない。10月からと放送は少し先ですが、今から最大の楽しみです。夏からのハッピーシュガーライフと秋からのこれでまだ生きていける(笑)。