「ハクメイとミコチ」

kenkyukan2018-03-15

 今季のアニメから「ゆるキャン△」に「スロウスタート」、「三ツ星カラーズ」と自分の好きな作品をあれこれ紹介してきましたが、この「ハクメイとミコチ」も忘れるわけにはいきません。原作はKADOKAWAの『ハルタ』で連載中のマンガで、作者は樫木祐人。以前から一部の人にはその良さが知られた作品でしたが、アニメでその良さが大きく広まった感があります。
 「ハクメイとミコチ」は、多数の「こびと」たちの日々の生活を描いたファンタジーストーリー。主人公の「ハクメイ」と「ミコチ」を初めとして、すべてのキャラクターがミニチュアサイズのこびとで、そんな小さな存在の目線で描かれているところが最大の特徴です。普通のサイズの人間が出てこないので、本当のところはよく分からないとも言えますが、しかし周囲の草木や動物たちがみな巨大なサイズなので、やはり彼女たちはこびとなのでしょう。

 そんな小さな彼女たちが、日々あちこち出かけていく姿が、我々の目線からするとかわいらしくもちょっとした怖さもあってとても楽しい。小さなサイズなので木や石を乗り越えるだけで難作業で、時に巨大な動物や鳥に出くわしてピンチに陥ったりもする。彼女たちからするとそれも当たり前の日常なのでしょうが、わたしたちからすればちょっとした冒険に見える。そんな日々のこびとたちの活動を眺めるのがまず楽しいのです。

 ひとつひとつのエピソードもいい。何気ない日常のちょっとした楽しさ、面白さ。それを丹念に切り取ってくれて、時に本当に泣ける話も多い。アニメでもひとつひとつじわっと来るエピソードが多く、極めて丁寧に作られていると感じます。

 さらには、細かく描かれた背景から来る世界観が素晴らしい。小さなものから大きなものまで多数の道具が登場しますが、それが小さな部屋にごちゃごちゃぎっしりと描かれているとか、そうしたガジェット(小物)が好きな人ならたまらない作品になっていると思います。
 建築物や街並みの描写もいいですね。ハクメイとミコチが住む森の大楠の根元の家も情緒があって惹かれますが、何よりもこれはと思ったのが、彼女たちが頻繁に訪れる港町アラビの「積み木市場」。縦に縦に無数の家屋が連なったかのような巨大な建築物で、その雑多な賑わいに満ちた街並みの魅力に思わず見入ってしまいました。その街の一角にあるマスターの喫茶店の落ち着いた雰囲気も最高です。

 こうした雰囲気の世界観を持つ作品としては、少し前にアニメ化された「メイドインアビス」や「少女終末旅行」とも共通感があり、好きな読者も共通したところがあるような気がします。こうした作品が気に入った人なら特におすすめ。さらには、この2作品と違い、暗いところはほとんどなくほのぼのした話で満たされているので、心から安心して視聴することが出来ますね(笑)。小さなファンタジーの大きな魅力を味わってほしいと思います。