「少女終末旅行」(1)

kenkyukan2017-12-14

 今季のアニメは本当に好きなものが多くて、これまでも「このはな綺譚」や「魔法使いの嫁」を紹介してきましたが、最後にひとつ「少女終末旅行」は絶対に取り上げたいと思います。これもまた最初からひどく期待していましたが、気が付けば他をも超えてこれが一番の好きになっていました。
 「少女終末旅行」は、原作はコミック@バンチの運営するウェブサイト「くらげバンチ」連載のマンガで、作者はつくみず。コミック@バンチからは、「BTOOOM!」や「GANGSTA.」「うどんの国の金色毛鞠」などのアニメ化作品が出ていますが、まさかこれがアニメ化されるとは思いませんでした。とりわけコア読者向けの人を選ぶ内容だと思っていたのですが、今はこういう作品も受け入れられる素地があるのかもしれません。

 内容は、いわゆる文明が崩壊した後の世界を旅するふたりの少女の道中を描くSF作品でしょうか。いわゆる「ポスト・アポカリプス」と呼ばれるジャンルのひとつだと思われますが、しかしこの作品の特徴的なのは、本来なら厳しく寂しい旅になるだろう終わった世界での旅が、ふたりの少女によるコメディによって毎回のようにコミカルに描かれること。基本真面目なチトと自由奔放な性格のユーリ、このふたりの掛け合いが面白く、笑ってしまうこともしばしば。崩壊後の世界でたったふたりしかいない孤独な旅なのに、ゆるいコメディとしても楽しめるその絶妙なバランス感覚が大きな魅力となっています。

 さらには、やはりそうした「終末世界」の細部を描くビジュアル、世界観の魅力が非常に大きいです。廃棄され壊れかけた巨大な鉄骨や鉄パイプが交錯し、あるいは廃墟となった巨大なビルや住居が整然と林立した光景。そんな都市が幾重にも上下に層をなしている。各層の基盤となる土台層(基盤殻層)の内部は、インフラを通し維持管理する巨大なシステムとなっていて、人間がいなくなった今でも自動機械によって維持されている(そのため建物は半壊した廃墟の街なのに水や電気は一部でいまだ稼動している)。作者のこうした世界のイメージは、あの弐瓶勉作品の影響を強く受けているようで、そうした作品が好きな人ならさらに惹かれるものがあると思います。

 また、原作の作画は比較的シンプルなものでしたが、アニメでは一気に細部まで徹底して描かれたビジュアルとなり、世界の魅力を一気に高めています。1話の最初のエピソードで、鉄骨と鉄パイプが林立する基盤層の暗闇を抜けたふたりが、ようやく外に出て思いもかけぬほど美しい星空を眺めるシーンは、冒頭からあまりに鮮烈な印象を残しました。原作は、比較的1話が短い構成となっていますが、アニメではそのシーンやセリフをひとつひとつ丹念に拾い上げ、さらにはその合間にさらに美しいシーンを入れて物語を補完するなど、さらに見応えのある作品になっていると思います。