「ステイル/メイト」(あきま)

kenkyukan2018-10-23

 ヤングガンガン2018年No.21に「ステイル/メイト」(あきま)という読み切りが掲載されています。今回は他の読み切りも中々面白かったのですが、これはその中でも特に光るものがあり、思わず注目して読んでしまいました。

 その内容は、超未来的な光景が広がる都市を舞台にしたSF物語でしょうか。林立する高層ビル群の中にひときわ高くそびえ立つ巨大な塔があり、それは大昔からずっと建設が続いている。しかし、塔がなんのために建てられているのかもはや誰も知らない。その塔の居住区に住む1人の少女が、物語の主人公となっています。

 ひたすら上へ上へと建造を続ける塔は、しかしいつか限界を迎える。タイトルの「ステイルメイト」は、「手詰まり」という意味でチェスの用語にもなっていますが、その手詰まりで塔が限界を迎える時はもう迫っていました。最後にあるひとりのテロリストによって、塔は爆破されて崩壊。住人たちはほとんどが事前に逃げ延び、少女も辛くも逃げ延びて、塔のない世界という新しい現実を受け入れて生きていくことになります。絶望的な展開ではありましたが、最後は意外に明るく前向きに終わるエンディングとなっていて、心地良い読後感も印象に残りました。

 似たような話は「キノの旅」でもあったような気がしますが、この「ステイル/メイト」は、何よりもその塔の超未来的な外観に目を惹かれました。金属製の無機質な壁や配管が延々と上へ上へと多層的に連なるこの構造、弐瓶勉作品やあるいは「少女終末旅行」の世界を彷彿とさせるものがあり、その徹底的に描きこまれた精緻なビジュアルにどこまでも惹きこまれてしまったのです。わたし以外にも、こういう世界観が好きな人は多かったようで、発売直後の紹介ツイートに思いもよらぬほど多くの反応がありました。

 作者のあきまさんは、普段はイラストレーターとしての活動が中心で、先日も画集が出たばかりのようです。イラストでも精細なビジュアルが魅力の作品を描かれますが、それがそのままマンガでも見られるようで感激してしまいました。これから先マンガでもさらなる次回作を期待したいですね。