萌え絵はどこから来てどこへ行くのか(2)。

kenkyukan2017-12-08

 前回の日記で「少女マンガ」「少年マンガ」「ゲームやファンタジー」と、いわゆる「萌え絵」に影響を与えたり起源となったと思われるジャンルを3つ取り上げました。しかし、萌え絵ということになると、やはり最後に「ギャルゲー・エロゲー美少女ゲーム)」を取り上げないわけにはいかないと思います。
 ただ、こうした美少女ゲームに関しては、他のジャンルよりも後発のジャンルで、最後にこうした萌え絵を確立する役割を果たしたと考えています。ギャルゲーやエロゲーと呼ばれるゲーム自体は、おそらくはかなり前から(80年代から)存在していたと思いますが、一気に大きなブームとなるのはおよそ90年代後半から2000年代前半あたりで、このあたりでオタクジャンルに与えた影響が非常に大きい。
 具体的には、この当時特に人気だったタイトルで、主にPCで出た作品だけでも、「To Heart」が1997年、「Kanon」が1998年、「AIR」が2000年、「月姫」も2000年末、今に至るシリーズとなった「Fate」が2004年に出ています。実際にはこれ以外にも数多くの制作会社から有名タイトルが多数出ており、あるいはコンシューマの方でもギャルゲー呼ばれるジャンルでやはり相当な数が出ていて、今思えば非常な活況を呈していました。

 なぜこの時期に美少女ゲームがこれだけ盛り上がったのか(あるいはその後下火になったのか)、その理由は難しいところですが、しかしいずれにしてもこれらのタイトルの圧倒的な人気・知名度が、他のコンテンツ、引いては萌え絵にまで多大な影響を与えたことは間違いないでしょう。とりわけ、初期に出た「To Heart」や「Kanon」の影響は、のちのこのジャンルを決定付けるものがあったと思いますし、ここでキャラクターを含めたビジュアルのイメージが確立、マンガやライトノベルなど他ジャンルまで影響を及ぼし、ここで現在に至る「萌え絵」のベースがおおむね完成したのではないかと思います。

 これは、こうしたゲームの表現形態、すなわち立ち絵とイベントスチル(1枚絵のイラスト)でキャラクターを見せるスタイルも大きく、これまでのゲームよりもはるかに大きくキャラクターの見た目の印象が伝わるようになりました。これによって、こうしたキャラクターのイラストが、より大きな形で見られる機会が劇的に増えた。さらにはこうしたビジュアルとウインドウに表示されたテキストで物語を見せる手法の効果も大きく、これも他のジャンル、とりわけライトノベルや、ひいてやマンガやアニメの見せ方にも大きな影響を及ぼしたことは間違いないと考えています。

 つまり、この時期までに少女マンガ・少年マンガRPGファンタジーなど多方面を起源にして形となりつつあったオタク向け作品のビジュアル(萌え絵)が、最後にこの時期に美少女ゲームが登場したことで、完全にひとつの形として確立した。萌え絵の成立までにはそうした流れがあったのではないかと考えています。