今こそ「ハイパーレストラン」を語ろうか。

kenkyukan2017-11-22


 今季のアニメではきらら4コマから「ブレンド・S」も好調で、同じレストランやカフェを舞台したヒット作品「WORKING!!」を引き合いに出されることも多いみたいですが、ここはさらに昔のエニックスのマンガから、90年代の怪作にして名作「ハイパーレストラン」(霧香&聖娜)を紹介してみたいと思います。
 「ハイパーレストラン」は、97年にエニックスのギャグ王で開始された連載で、のちに同誌の休刊に伴って99年にガンガンWINGへと移籍され、そちらで完結を迎えています。コミックスは全6巻。作者は、当初は「霧香&聖娜」として実の姉妹によるコンビのマンガ家だったようですが、のちに聖娜さんの方は活動をやめられたようで、3巻以降は単独の活動で「たかなし霧香」となっています。同作者の連載として、同時期のガンガンで連載された「ワルサースルー」もあり、掲載誌の関係でこちらの方がよく知られているかもしれません。

 肝心の内容ですが、レストランが舞台のマンガとはいえ、残念ながら「WORKING!!」のようにお仕事をそのまま扱う普通のマンガではなく、シュールで過激な変態ギャグとなっていました。自称・レストランを救うという勇者だと名乗る奇行男・林田ベランメルジェと、彼に連れ回されるかわいそうなウエイトレス・増井メルルーサが、愉快な仲間たちと共に「レストランを救う旅」に出るというストーリー。連載後半では旅をやめ、自ら究極のレストラン(これが「ハイパーレストラン」)を作って経営するという話にもなります。

 さらには「レストランキラーズ」というなぜかレストランを壊滅させようとする悪の組織と戦うという展開にもなり、「ブリード呉樹」なるゴキブリを操る変態男や、「ヤナモン★イレルディー」なる毒物混入が必殺技のやばすぎる敵が登場。主人公の林田自身もモモンガに変身して空を飛び、同じくゴキブリに変身して空を飛ぶブリード呉樹と空中で乱舞してバトルする展開など、まさにこのマンガを象徴する変態バトルを存分に見せてくれました。

 しかし、これだけのギャグ作品ながら、一方で意外にもレストランの仕事や経営のあり方をシリアスに見せるパートもあり、そこでは考えさせられることも多々ありました。今でもよく覚えているのは、林田が「ハイパーレストラン」を開店した直後に、汚いみすぼらしい客が最初の客として入ってくる話です。
 見るからにひどい姿の客を見て、店員たちはみな嫌がって追い返そうとしますが、林田だけは優しく手を差し伸べ、ひとりのお客様として変わらぬおもてなしを見せたのです。どんな客でも優しく座席に案内して注文を取る。その姿に感化された他の店員たちも、すぐに心を入れ替えて心からおもてなしをするようになる。これを受けた客の方も「こんなみすぼらしい自分にこれほど優しくしてくれるとは」と涙を流して喜ぶ。このシーンには本気で感動してしまいました。

 また、この「ハイパーレストラン」連載当時は、今ほどレストランの仕事を扱ったマンガは多くなく、比較的珍しい存在だったのも貴重でした。今でこそWORKING!!とかブレンド・Sとかごちうさとかレストランやカフェを舞台にした人気マンガは枚挙に暇がありませんが、当時はレストランの仕事や業務の方にスポットを当てたマンガはまだ少なかったのです。その点において、この「ハイパーレストラン」は、今のレストランマンガの先駆的存在でもあったと思います。一般向けのマンガ情報誌でも評価されるなど、コア読者向けのエニックスのマンガの中でも幅広い読者に楽しまれる作品でもありましたし、今改めて見直されてもいい作品だと思いました。