90年代Gファンタジーを振り返る(1)。

 先日、グルグルの再アニメ化や刻の大地の連載再開に際して、かつてのガンガンの話をしたところ、やはり相当な反応が見られ、改めてかつてのガンガンの人気を実感したところです。やはり90年代のガンガンの作品は、今でも覚えている人がたくさんいるくらい大きな人気がありました。
 しかし、当時のエニックスは、ガンガンだけでなく、その姉妹誌であるGファンタジーガンガンWING、ギャグ王にも無視できない人気がありました。また、これらの雑誌すべてで共通した雰囲気があり、何よりもエニックス雑誌全部、ガンガン系全部が好きという読者が多数いたのです。
 ただ、さすがに中心雑誌のガンガンに比べれば読者数や知名度で劣るところがあり、今では知る人がさらに少なくなっているのが残念なところ。今こそ、そうした作品にも今一度光を当てる好機だと思いました。中でも、ガンガンの次に93年という早い時期に創刊されたファンタジー誌・Gファンタジーの存在はとりわけ重要です。

 Gファンタジーは、93年に創刊された当時の雑誌名は「ガンガンファンタジー」で、1年後にGファンタジーと改名されました。タイトル通りファンタジーにより特化した雑誌というスタイルで、対象年齢も高めに設定され、あるいは少女マンガ的な作品も多く、やや女性読者向けの雑誌としても位置づけられていたと思います。しかし、一方で男性向けと思われる連載も少なからずあり、あるいはそれ以上に当時のエニックスの雑誌がどれも近い雰囲気を持っていたこともあり、ガンガンの読者とかなりの部分で共通したところもあったと思います。

 創刊当初に雑誌の看板として打ち出されたのが、当時ドラクエの関連小説として刊行されていた「精霊ルビス伝説」のコミカライズでした(原作・久美沙織、作画・阿部ゆたか)。しかし、これはあまり評判はいいとは言えず、ある程度連載は続いたものの最後までぱっとせず終わってしまいます。また、あの高河ゆんの「超獣伝説ゲシュタルト」も創刊号からの看板作品でしたが、こちらも休載が非常に多く最後まで安定しませんでした。

 変わって真っ先に人気を得たのが、「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」(箱田真紀)と「聖戦記エルナサーガ」(堤抄子)です。前者は同名ゲームのコミカライズですが、当初から抜群の構成と作画の素晴らしい出来で、箱田さんのFEと言えば今でも名作として思い出す人は多いです。連載後半で調子を崩して中途半端に終了したのが極めて残念。「聖戦記エルナサーガ」は、対してオリジナルのファンタジーで、緻密に練り上げられた世界観とストーリー、社会性を帯びた奥深いテーマで、いまだに名作として語り継がれる屈指の一作。こうした実力のある作品がしっかりと雑誌の中心に存在したことが、最初期から好調を維持した大きな理由と言えそうです。

 創刊から遅れて1年ほど経って始まった「レヴァリアース」(夜麻みゆき)も絶対外せないところ。「幻想大陸」「刻の大地」と続く夜麻みゆき三部作の最初の作品で、魅力的なキャラクターと世界観、楽しいコメディや衝撃のクライマックスで、今でも三部作で一番好きと言う読者は多いです。
 同時期に始まった「魔神転生」(上田信舟)も挙げておきましょう。のちに「女神異聞録ペルソナ」でさらなる人気を獲得する上田さんの最初の連載で、これが上田さん初の女神転生メガテン)シリーズのコミカライズでした。原作のシンプルなストーリーに様々な要素を追加し、はるかに楽しめる奥深いストーリーに仕上げると同時に、ゲームを知らない読者にも分かりやすく設定を説明する配慮にも行き届いていました。のちの作品に比べると知名度は低いですが、これも見逃せない良作だったと思います。

 これ以外にも、初期のGファンタジーには、「白のテンペスト」(斉藤カズサ)や「サリシオン」(久保聡美)のような本格ファンタジー、「勇者はツライよ」(松沢夏樹)や「スマイルはゼロゴールド」(佐野たかよし)に代表されるギャグ作品、「アクトレイザー」(加藤元浩)や「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」(かぢばあたる)などのゲームコミックと、読ませる連載は多かったです。そして、これが96年以降のさらなる盛り上がり、全盛期につながることになります。