「虚構推理」アニメ化決定の話。

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 前回のガンガンの話と少し関連するのですが、あの城平京の小説「虚構推理」のアニメ化が、先日発表されています。城平京さんと言えば、あの「スパイラル~推理の絆~」以降、ガンガン連載のコミック原作を長い間手掛けていましたが、これは講談社から出た小説。さらにはその講談社の雑誌(少年マガジンR)でのコミカライズも長期連載中で、今ではそちらの方に活動の場が移った形になっています。

 

 「虚構推理」の原作小説が最初に出たのは2011年。もう随分と前の話になりました。「スパイラル」原作者久々の小説新作ということで、当初からファンの間ではかなり注目を集めていましたが、実際の内容でも大きな反響を巻き起こしました。


 その特徴は、まずひとつは怪異(妖怪)が実際に存在する世界でのミステリーという点。現実ならばオカルトで非論理的な怪異や妖怪が、実際に存在してしまっている世界でのミステリー。もっとも、こうした物語は、「スパイラル」や「ヴァンパイア十字界」「絶園のテンペスト」など、ファンタジー要素の入った原作を多数手掛けてきた城平京なら、むしろ想定の範囲内と言えるかもしれません。


 しかし、もうひとつ最大の特徴として、推理によって真実を突き止めるのではなく、「あえて嘘の話を流布してそれを信じ込ませる」のが目的という点があります。ネット上で様々なテクニックと駆け引きを駆使して、ネットユーザーたちにそれが本当なのだと本気で信じ込ませる。真実よりも「どうやって人々を納得させるか」に重きが置かれているミステリー。今で言うならば、まさにフェイクニュースの制作と拡散そのものであり、こうしたコンセプトの作品が、2011年という比較的早い時期に書かれたことは、この作者ならではの慧眼だと思いました。

 

 こうしたミステリーとして異色のコンセプトは、当初一部で物議を醸したようですが、しかし最終的には大きな評価を得たようで、翌2012年に第12回本格ミステリ大賞も受賞しています。そして、原作刊行からしばらく経った2015年、講談社の新雑誌「少年マガジンR」の創刊号からコミカライズがスタート。講談社は、当初からこのコミカライズを相当推していたようで、創刊時からほぼ看板作品となり、原作小説のコミック化が一通り終了した後も、続編小説の執筆とそのコミカライズという形で連載が続いています。

 

 そのように当初から相当力を入れた連載だったので、今回のアニメ化も満を持しての決定と言えそうです。一方で、原作者の城平さんのスクエニ(ガンガン)での活動は、2017年まで続いた「天賀井さんは案外ふつう」が現時点で最後の連載となり、長い間作画担当での相方だった水野英多さんも 、今では別のSF小説(「裏世界ピクニック」)のコミカライズを担当している状態です。結果として彼もまたスクエニから講談社へと移籍した形となっているようで、「虚構推理」のアニメ化を喜ぶその一方で、そこだけ一抹の寂しさを感じてしまいました。