待望の水野英多最新作は「裏世界ピクニック」!

kenkyukan2017-11-15


 先日、あの「スパイラル」の水野英多さんのガンガンでの新作として、「裏世界ピクニック」(宮澤伊織)のコミカライズが告知され、これには大いに驚きつつも喜んでしまいました。水野さん自身の最近のツイートで「裏で何かしら活動している」と書かれていて期待していたのですが、まさかこれがその次回作だったとは。
 「裏世界ピクニック」は、ハヤカワ文庫JAから出ている宮澤伊織さんの小説。宮澤さんは、これまではMF文庫J一迅社文庫から小説を出していましたが、今回ハヤカワ文庫から出たこの作品が、発売まもなくしていきなり話題となり、一気に注目されました。原作の単行本はまだ2巻までしか出ていませんが、このタイミングでコミカライズが決まるのも納得です。

 肝心の内容ですが、現代日本を舞台に都市伝説を題材にした異世界探索もののSFホラーでしょうか。ハヤカワということでSF作品というジャンルではあると思いますが、同時にファンタジー色、ホラー色も強い作品です。「裏世界」というタイトルどおり、日常のすぐ裏側に怪異が潜む非日常があり、その非日常の怪異が表側の日常へと侵食してくる恐怖、それが実に巧みに描かれています。関連作品として、旧ソ連ストルガツキー兄弟の「ストーカー」の名前を出す動きも一部で見られ、そうした作品に興味のある人ならより楽しめると思います。

 また、この作品が注目を集めた大きな一因として、最近になって盛り上がりを見せている都市伝説の話、とりわけインターネットで広がる噂話「ネットロア」を取り上げていることが大きいです。1巻の範囲内でも「くねくね」「八尺様」「きさらぎ駅」など、今では広く知られるようになった有名な都市伝説が登場。こうした都市伝説が、ビジュアル要素の強いコミカライズでどんな風に再現されるか、そこにも注目が集まります。

 さらにもうひとつ、主人公が女子大生の女の子ふたりであり、このふたりの百合的な関係がクローズアップされたことも、人気を集めた大きな一因となりました。立場や目的の異なるふたりが共同して異世界探索に当たるその関係性の面白さが見られ、これはあの「秘封倶楽部」との共通性も指摘され、一部クラスタの間で異様に注目される形にもなっていました(笑)。実際に作者の意識にもこの作品があるようで、今回のコミカライズでさらにそうした方面での注目も集めそうです。

 水野さんと言えば、かつては城平京原作の「スパイラル〜推理の絆〜」の作画担当として大きな人気を集め、スピンオフの「スパイラル・アライヴ」やあるいは外伝小説の挿絵やそちらのコミカライズの仕事も一手に手掛けています。最近も同じ城平京さんと組んで「天賀井さんは案外ふつう」という新作連載の作画を担当していました。また、「うみねこのなく頃に」のEP(エピソード)7のコミカライズの仕事も担当したことがあります。今回のSFホラー小説のコミカライズも、こうした過去作品の経歴からの抜擢ではないかと思いますが、しかしまだ始まって間もないシリーズのコミカライズはやはり驚きです。いよいよ落ち込みの激しい最近のガンガンで、久々に大きな注目作が出てきた点でも期待したいと思います。