「裏世界ピクニック」にまつろう話まつろわぬ話。

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 先日、SFマガジンが2年ぶりにまた百合特集を組むと聞いて、「今ならば『裏世界ピクニック』を中心に据えた特集になるのかな」と予想したのですが、案の定その裏世界ピクニックが表紙で対談なども組まれる大きな特集となっていました。そう、かれこれ1年近く前にアニメ化が告知されていた『裏世界ピクニック』の放送が、ついにこの1月から始まるのです!

 

 『裏世界ピクニック』は、ハヤカワ文庫で2017年から刊行されているSF小説。作者は宮沢伊織。刊行当初から一部読者の間でかなり大きな話題になったことで、わたしもその噂は耳にしていましたが、直接的に知るきっかけとなったのは、翌2018年からガンガンで始まったコミカライズでした。「スパイラル」の作画でも人気を集めた水野英多さんが作画を担当し、その作画の出来が非常に良かったこともあって、一気にはまることになりました。

 

 「裏世界」というタイトルからも類推されるとおり、内容はSFでありつつオカルトやホラーの要素が強い。それも、近年ネットで盛んに噂になる「八尺様」や「きさらぎ駅」などの都市伝説をメインテーマに据えたことが、大きな注目を集めるきっかけとなったようです。また、より直接的に影響を受けた作品として、ロシアの作家ストルガツキー兄弟の小説「ストーカー」(原題:Roadside Picnic)が挙げられています。これは、異星人が残した謎の地帯「ゾーン」で遺物を求めて探索を繰り返す者たちの物語ですが、この「裏世界ピクニック」も、「裏世界」と呼ばれる異界の探索と物品を持ち帰る女子大生2人の冒険を描いた物語。また、この小説を原作に制作された映画や、あるいはFPSのゲームシリーズ(「S.T.A.L.K.E.R. 」)の影響もあるようです。とりわけ主人公のふたりが銃器を使って敵と戦ったり、アメリ海兵隊のような本格的な軍事装備をした部隊が登場する展開は、こうしたゲームからの影響や作者の趣味も強いのかなと思っています。

 

 また、昨今の都市伝説との関連でも、例えば「きさらぎ駅」に行ったとする体験者の報告が、この世界とは違う異世界のような場所に赴いて、そちらで異界の住人や何か恐ろしい存在に遭遇したとするものが見られるのも、こうした作品との共通性がありますね。こうした近年のオカルト的流行をうまく設定に取り入れた作品とも言えそうです。

 

 しかし、もうひとつ、この「ストーカー」と並んで、あるいはそれ以上に直接的な原点となった作品があると思われるのです。それは、ずばり「秘封倶楽部」。原作は一連の同人作品シリーズのひとつとして出た音楽CDですが、CDに付属されたブックレットのイラストとショートストーリーが人気を博し、一部のコアなファンの間で同人人気が発展。単独の同人イベントが開かれたり、あるいはこの人気に影響を受けたのか原作のCDも長いときを経て続編が出るなど、熱心なファンの間で息の長い人気作品になっています。

 

 そして、どうもこの「秘封倶楽部」に影響を受けて作られた作品も、かなり多くあるようで、その中でも一番の代表作と言えるのがこの「裏世界ピクニック」なのです。「秘封倶楽部」のブックレットに描かれたストーリーは、科学が発展した未来世界の女子大生ふたりが、大学でオカルトサークルを結成、オカルトスポットと思われる廃墟へと探索へ赴くいう掌編。あるいはごく明るい小旅行のような逸話もあり、一方で入り込んだ別世界から深刻な影響を受けて帰ってくるというシリアスな一編もある。これが「裏世界ピクニック」の直接的な原点となっているのは間違いないところです。主人公のひとり空魚の右目が、裏世界の存在を見通す異様な能力に目覚めているのも、「秘封倶楽部」のキャラクターからの直接の影響が感じられます。

 

 そして、これはそうしたオカルト的な探索設定だけではなく、キャラクター同士の関係性、とりわけ今回のSFマガジンの特集にもなっている「百合」的な関係も、作品最大のポイントとなっています。今回のアニメでも、むしろそちらの方で期待している視聴者も多いかもしれない。水野英多さんのコミカライズも、きれいな作画でキャラクターの魅力満点でしたし、アニメでもそうした楽しさに期待したいと思いますね。

思わぬ良作(?)「おちこぼれフルーツタルト」アニメ総括!

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 もうかれこれ2年近く前の話になるでしょうか。まんがタイムきららキャラットで「3号連続重大発表」という企画が発表されたことがありました。次号から3号に渡って重大発表を続けるというもので、その内容は当初すべて伏せられていて、一部読者の間では様々な推測で持ちきりになりました。

 

 アニメ化という推測が最も有力で、蓋を開けてみればやはりすべて連載作品のアニメ化でした。最初に発表された第1弾が「まちカドまぞく」、第2弾が「恋する小惑星」、そして最後に発表されたのが今回取り上げる「おちこぼれフルーツタルト」です。いずれも当時のキャラットで雑誌の中心的な人気作品だったので、おおむね納得できる結果ではあったのですが、ただこの「フルーツタルト」だけは、原作連載時から色々と物議を醸す問題作であっただけに、この時から「アニメ化されて大丈夫か?」という声が聞かれたことをよく覚えています。

 

 その後、2019年夏「まちカドまぞく」、2020年冬「恋する小惑星」とそれぞれのアニメ放送が好評を博し、そして最後に2020年秋になってこの「おちこぼれフルーツタルト」のアニメスタート。3つの作品の中では最も後になり、さらには新型コロナの影響での制作の遅れも手伝って、最初の発表からかれこれ2年近くが経過していたのです。

 

 タイトルの「フルーツタルト」は、作中で登場するアイドルユニットの名前。売れない子役・売れないミュージシャン・売れないモデルなど芸能界の「おちこぼれ」たちと、上京してきたばかりのアイドル志望の女の子で新規アイドルユニットを結成。彼女たちが住むアパートの存続をかけて再起の芸能活動に挑むという、明るくにぎやかなコメディとなっています。

 

 作者は浜弓場双さんで、あの名作「ハナヤマタ」の作者の新規4コマ連載でもありました。当初は並行して連載していたのですが、前作の「ハナヤマタ」と比較すると、シリアスだったり暗いエピソードはほとんどなく、ギャグとコメディに振り切れた明るいコメディとなっていたのが最大の特徴で、こちらの作風でも非常な好評を博しました。

 

 しかし、それと同時に色々と物議を醸す問題作でもあり、主人公が緊張すると漏らす(漏らしそうになる)癖があったり、ストーカーだったりにおいフェチだったり、どこか(性的に)汚いネタがとにかく多く、前作のハナヤマタに比べると圧倒的にきたない(笑)。そのため、アニメ化が決まった当初から、「これをアニメ化して大丈夫か?」という声が絶えなかったのです。

 

 そして、そんな噂が各所で聞かれつつも、ついにこの秋からアニメ放送がスタート。当初から期待と不安の声が入り混じっていましたが、ふたを開けてみると思った以上の出来となっていて、ハイレベルな演出とテンポの良いギャグで心の底から楽しめる良作になっていたのです!

 

 懸念されていたきたない系のネタも、明るい雰囲気とテンポの良さでうまく緩和されているようで、確かにやばいネタはいくらでも散見されるものの、それ以上に明るく楽しめるコメディに昇華されていて、これには感心してしまいました。なにげにアイドルものらしいライブシーンの素晴らしさは特筆に値します。また、原作の時から舞台は小金井に設定されていて、各所の風景が積極的に取り入れられている作品でもありましたが、アニメの制作も当地に本社を置くフィール(feel.)が担当。東小金井駅前を筆頭にやはり各所の風景が綺麗な作画で描かれ、さらには当地の行政も全面協力して聖地巡礼のコラボ活動を積極的に行うなど、ご当地アニメ的な魅力も十分なものになっていました。

 

 原作の方の汚さは、あと2回くらいレベルアップを残しているほどやばいものでもあるのですが、アニメとしてはこれで十分ではないかと思います(笑)。2年前から楽しみにしていたキャラット3大作品のアニメ化。それは最後の作品まで有終の美を飾るものであったと思います。

「なんで鳥取なのかしら?」

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 先日放送された「宇崎ちゃんは遊びたい!」10話。これが全編に渡って鳥取推しの観光ガイドのような特別編になっていて、驚いた人も多かったのではないかと思います。前話最後にくじ引きで鳥取旅行が当たったことをきっかけに、キャラクターたちがこぞって鳥取へと向かうという内容だったのですが、それまでの話で特に鳥取が出てくることはなく、あるいは原作でも特に鳥取と関連することもなく(いわゆるアニメオリジナル)、作中のキャラクターのセリフそのままに「なんで鳥取なのかしら?」という感想しか出てきませんでした。

 

 実際のところ、これは鳥取県と強力にタイアップした企画であり、そのために本当に観光ガイド的な1話になっていました。しかし、それが10話というアニメの終盤になって、特に予告もなく始まるのはかなり意外で、誰もが驚くのも無理はありません。(実際には7月の放送開始時からタイアップの企画は始まっていたようですが、それまでのアニメで鳥取が出てくることはほとんどなく、実質的なタイアップはほぼ10話のみに集中していました。)

 

 その内容も非常に気合の入ったもので、冒頭の空港でいきなり鳥取知事が登場したのを皮切りに、鳥取砂丘三朝温泉・白兎神社・大山・境港の水木しげるロードなど、鳥取県中の主な観光地を網羅する勢い。空港(鳥取砂丘コナン空港)が全面的にコナン推しになっている光景にもまず驚いたのですが、水木しげるロードでも彼の妖怪画をそのままアニメで動かすなど強いこだわりが感じられました(どちらも許可を得ての登場)。

 

 最も印象に残ったのは、この回だけの特別エンディングの画像で、本編で登場し切れなかったところまで鳥取の名所の数々が1枚絵で次々と登場。実際の風景を取り入れた膨大なカット数に驚いてしまいました。まさに1話まるごと鳥取観光ガイドと言ってよい。

 

 これを見てちょっと思い出したのが、先日春より放送された「邪神ちゃんドロップキック」2期の最後に登場した「千歳編」です。こちらは、なんとふるさと納税の制度を使って集めた資金で、千歳を舞台にしたアニメの特別編を制作するというもので、やはり千歳市ぐるみの企画。アニメ本編にも企画に関わった市長や関係者が登場、支笏湖を初めとした観光地各所を邪神ちゃんたちが巡るというもので、今回の宇崎ちゃん鳥取編とかなり近いコンセプトを感じました。

 

 このふたつの企画が、これまでの「聖地巡礼」を推す活動と異なるのは、作品の舞台となった地元が聖地(舞台)を推して盛り上げるのではなく、本来特に関係ない場所が外から作品を呼び込んで観光企画を行うというものです。どちらも行政が積極的に絡んでいる点も特徴で、これまでの聖地巡礼よりもさらに積極的で、これが今のコンテンツツーリズムの最先端なのかもしれない・・・と感心してしまいました。

 

 作品と本来まったく関係ない場所が、観光を盛り上げるために作品を利用するのはどうかと思う向きもあるかと思いますが、個人的には大いに歓迎したいところですね。詳細に描かれた実在の名所を見るだけで楽しいし、そんな場所でキャラクターがいつもどおりの行動を取るのも楽しい。なんで千歳? なんで鳥取? と視聴者の間でネタになるのも楽しい(笑)。いいんじゃないかと思いますね。

「紅心王子」まさかの再開&完結・・・!

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 先日、「紅心王子」の作者である桑原草太さんが復帰され、「紅心王子」が再開するという話を耳にして、まさかとは思っていたのですがこれが本当でした。そして、先日12日に待望のコミックス続巻である17巻と最終18巻が同時発売され、かつての読者を中心に大きな反響が巻き起こっています。何らかの理由で連載が立ち消えになってはや6年。もはや連載が復活することはほとんどないだろうと思っていただけに、復活しただけで本当に驚きでした。

 

 「紅心王子」は、かれこれ2007年に少年ガンガンで始まった連載。ある課題(試験)をこなすために人間界にやってきた魔界の王子(悪魔)・さくら紅次郎が、とあるアクシデントから人間界の少女・花と共に暮らすことになる。当初は人間を悪魔よりも下等なものとみなしていた紅次郎ですが、心優しい花と暮らし、あるいは人間界の学校に通うことで、少しずつその心に変化が訪れる。悪魔や天使がなんらかの試験のために人間界を訪れるという話はよく見られますが、これはその中でも花を初めとするキャラクターの優しさ、愛おしさが全面に出たハートフルなコメディになっていると思います。

 

 加えて、紅次郎と花の過去(前世)からつながる秘密、このふたりを巡る魔界および天界の人々の思惑が交錯するシリアスなストーリーも見逃せないものがありました。連載が中断する直前には、いよいよクライマックスに差し掛かるまでに盛り上がっていたのですが・・・。

 

 桑原さんによる中性的で優しい絵柄、雰囲気も最大の魅力。総じて「ガンガン系」の持つイメージ(中性的である種少女マンガなイメージ)をそのまま体現したようなマンガでもあったと思います。桑原さんは、この連載と同時期に芳文社でも「ココロ君色 サクラ色」という連載を続けていましたが、そちらも同等の優しい雰囲気でひどく好感が持てました。かつては芳文社は今より女性向けの雑誌も多かったので、そちらの求める作風にも合っていたと思います。

 

 しかし、そうした活動が堅調であったはずの2014年頃、突然「紅心王子」が休載に入り、再開されなくなってしまいます。同時期に「ココロ君色 サクラ色」も連載終了。また、当時桑原さんはTwitter上でもかなり積極的に活動していた記憶がありますが、そちらの活動も次第に縮小され、ついにはネットでの消息も途絶えてしまいました。

 

 活動が途絶えた理由はいまだによく分からないところで、一部には病気療養のためと言う話も聞きました。いずれにしてもまったく音沙汰なくなってからはや6年近くが経ち、もう「紅心王子」の再開はまずないだろうと思っていました。そんなところでまさかの連載復帰&完結。これほど驚いたことはありません。久々に見た桑原さんの絵は、以前とまったく変わっておらず、懐かしいと思うと同時に本当にうれしいものがありました。今のところ「紅心王子」以外の活動はまだ見られませんが、それでもこうして生存が確認されただけでもうれしい。もうずっと過去の作品となってしまいましたが、これを契機に少しでも新しく作品に触れる人が出てくればこれ以上の喜びはないですね。

「魔女の旅々」待望のアニメ放送迫る!

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 かれこれ1年近く前でしょうか。GA文庫からふたつのライトノベルのアニメ化が発表されました。ひとつは「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」、そしてもうひとつが「魔女の旅々」。いずれもスクエニの雑誌でコミカライズされており、非常に面白い作品として追いかけていただけに、どちらもアニメ化発表はとてもうれしいものがありました。そしてあれから1年。まずは「魔女の旅々」の方がこの秋からの放送が近づいてきたので、いよいよおすすめの記事を書きたいと思います。

 

 「魔女の旅々」は、原作・白石定規によるライトノベル。ジャンルはおそらくは純粋な異世界ファンタジーと言えるもので、近年目立つ異世界転生やMMORPGの要素のない本格ファンタジーとして注目していました。加えて、あずーるさんによる挿絵イラストが素晴らしく、それを目にして注目し始めたという理由も大いにあります。

 

 タイトルの「魔女」は、この物語の主人公である魔女イレイナ、あるいは同業の魔女たちのこと。この世界では、魔法の技術が広く普及し、その中でも最も優れた能力を持っているとされるのがこの「魔女」たちのようです。魔女や魔女見習い、あるいは魔道士たちは、特定の仕事を受け持っている者も多いようですが、イレイナは特定の仕事には就かず、タイトルどおりこの世界の旅を続けながら、行く先々で何らかの依頼を受けて路銀を稼ぐのがなりわいのようです。

 

 18歳と若くして魔女として非常に優れた能力を持つイレイナですが、彼女が旅先で遭遇する出来事の数々は、魔女ですら容易には対応できないようなものも多い。むしろ、彼女の卓越した能力でも本質的な解決は出来ず、そのまま通りすぎるような形で旅を続けることも多いのです。人間の負の側面をまざまざと見せ付けられるような暗い話に遭遇することもしばしばで、むしろそれが彼女の旅の本質かもしれない。このあたり、過去の名作から「キノの旅」や「棺担ぎのクロ。」を彷彿とさせるところもありますね。

 

 しかし、必ずしも暗いばかりの物語でもありません。その魔女と魔女の繋がり、知識と技術の継承と思えるエピソードも、この作品のもうひとつの骨子となっています。イレイナが旅先でたまたま出会った異国の魔女志願の少女・サヤを助けて導いたり、かつて自分を導いてくれた師匠・フラン先生と再会して旅を続けるアドバイスを受けたり。そのフラン先生に教えを受けた時の過去エピソードも大きな見所になっています。フランの教えは、必ずしも明るいことばかりではない彼女の旅を助ける大きな力となっているようです。

 

 イレイナという個性的な主人公自身も、また作品の大きな魅力のひとつ。原作のあずーる先生の絵がかわいすぎるというのがまずあるんですが、アニメの作画でもその魅力を存分に再現しているようで期待十分。また、自分のことを「清廉な魔女」「誰もが振り返り、ため息をこぼしてしまうほどの美貌」などど自称するような飄々とした性格で、ある意味非常に俗っぽい性格とも思えます。ある国では偽占い師として本当に詐欺行為を働くほどで、そうしたイレイナの活躍(?)を追うのも楽しい。原作小説は常に一人称なのですが、アニメではそのあたりどう描かれるのかそれも楽しみです。

 

 現在、原作小説は13巻まで出ていますが(最新14巻が10月刊行予定)、スクエニからコミカライズも行われており、こちらはコミックスが2巻まで出ています(作画:七緒一綺)。こちらの七緒さんの作画は、原作イラストのあずーるさんとは若干の絵柄の違いが感じられますが、しかし原作の面白さをコミックでよく再現していると思います。まだ刊行数も浅く作品の導入には最適だと思いますし、アニメと合わせてこちらもおすすめしておきたいですね。

時!本当に来てるぞ!「まちカドまぞく」2期決定!

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 きらら作品のアニメで2期を期待している作品は枚挙に暇はないわけですが、その中でも「まちカドまぞく」は間違いなく最有力候補のひとつで、絶対にやってくれるだろうとずっと期待していましたし、反面もしこのアニメまで2期なかったらどうしようとずっとやきもきしていたところもありました。それがついにこの時期に決まってほんとにうれしい! いやうれしいだけでなく、まさにほっと胸を撫で下ろしたところまでありました。

 

 「まちカドまぞく」は、原作者本人の紹介によれば、「まぞくが魔法少女に挑むアニメ」らしいですが、その紹介のとおりのコミカルなギャグコメディとしても存分に楽しめつつ、魔族と魔法少女の過去から続くシリアスなストーリーにも見ごたえがあり、さらには個性的なキャラクターとその関係性の魅力でも人気を集めました。

 

 もともと原作の4コマの時点で評価は非常に高く、きらら4コマの中でも大本命と言われていましたが、アニメの出来も良くまさに期待通りの大ヒット。百合的な作品としてもひときわ注目を集め、それを発端としたよく分からないワードが流行するという珍現象でも話題を集めました。円盤の売り上げも予想以上のものがあったようで、放送後のイベントの競争率も予想外の高さだったようです。近年のきららアニメの中でも突出したヒット作となり、これが2期なければどうなるんだと思っていた矢先だったのです。

 

 アニメ1期は原作の2巻までの範囲で終わり、これは原作の密度の濃さとストーリーの区切りを考えれば必然でもあったものの、しかし3巻以降でさらに面白いエピソードを多数抱えている作品でもあり、それが見られなかったのは本当に惜しいと思っていました。その点でも今回の2期に期待するところは大きい。

 

 個人的に2期で見たいエピソードは、まずは3巻以降で登場する「純喫茶あすら」の白澤店長と妖狐のウェイトレス・リコちゃん絡みのすべてですね。とりわけリコちゃんは個人的にも一、二を争うほど気に入ってるキャラクターだっただけに、アニメでついに見られることになって本当にうれしい。
 さらには4巻のメインストーリーとなるミカンとウガルルのエピソード。ミカンが「ミカンママ」と呼ばれるようになった最大のゆえんであり、彼女の”呪い”の正体に迫る感動のエピソード。これはアニメ2期では大きな見せ場となるエピソードに違いないでしょう。
 さらに先に進むならば、5巻で登場する”多魔川の水神”こと蛟(みずち)絡みのエピソードでしょうか。こちらはごせんぞことリリスが活躍する笑って泣ける面白い話になっていて、これも(もしそこまで進むなら)是非とも見たい話ですね。

 

 ただ、1期が2巻分までしか進まなかったことを考えると、2期はもしかして4巻まで?とも考えられますし、あるいはあえて今回も2巻分にとどめて、さらに3期以上の展開まで期待するのもありかなと思ってます。そこまでの大作として末永く楽しめるコンテンツになってほしい。今からそんなことまで期待してしまいました。

次にくるきらら4コマを考える。

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現在、「芳文社70周年記念キャンペーン」と銘打って、Kindle芳文社のコミックス約1200冊以上が一冊77円で販売されるというセールをやっています。

芳文社といえば(我々にとって)きらら4コマこそが最大の目当てであるわけですが、このコミックスは1冊900円前後とかなり高めで、コミックスの購読には躊躇する人も実は多いのではないかと思っています。そのため、今回の77円は破格の大チャンス。この機会にこぞっておすすめのコミックスを紹介する動きが広がっているようですが、わたしも期間終了間際(7月16日まで)に駆け込みでいくつか紹介したいと思います。

とりわけ、ここ近年の新作から、「次にくる」とも呼べるきらら4コマの期待作からいくつか紹介したいと思いました。

 

「初恋*れ~るとりっぷ」(永山ゆうのん)

かつてはきらら作品で同人活動を長く続け、きららでもすでに「みゅ~こん!」で連載デビューしていた永山ゆうのんさん最新作。前作も期待していたけど早期の終了で残念に思っていたのですが、こちらの作品はのっけからかなり評判いいようで今度こそ期待したい。

仙台駅を中心に高校の鉄道部の活動を描く。仙台圏の有名どころの駅を積極的に訪問するエピソードは、鉄道趣味の魅力十分。さらには鉄道部をひとりで守ってきた顧問の先生が、部活の部員の中心になっている点が、またちょっと新鮮かもしれません。

きららにも百合的な関係が見られる作品は数ありますが、かわいい顧問の先生に憧れて活動を進める展開には、独特の微笑ましさと年上の指導者に守られ導かれる心地良さがあります。絵柄なども含めて個人的な好みでは一推し。

 

「旅する海とアトリエ」(森永ミキ)

こちらは海外の旅紀行4コマ。旅先で知り合ったふたりの少女がポルトガル・スペイン・イタリアと南欧諸国を巡っていく。自らのルーツややりたいことを旅の果てに求める感傷的なストーリーと、グルメネタを中心とした軽快なコメディがバランスよく織り込まれた良作観光地や街角の描写、その薀蓄の解説など名所観光ガイド的な魅力も十分。

ゆるキャン△(キャンプ)あたりがそのきっかけだと思いますが、ここでも鉄道に旅とアウトドアな趣味を描く作品が、ひとつのトレンドになっているような気がします。

 

「ぼっち・ざ・ろっく!」(はまじあき)

おそらくは次にくるきらら最有力作品。陰キャ・オタク属性全開の高校生ぼっちちゃんが、あえてバンド活動でロックに挑む。

ずっと以前からオタクを主役にした作品には枚挙に暇がありませんが、これは本格的な音楽活動とがっちり絡めた作品として、ひとつの決定版にして最大の名作になるかもしれません。オタク・コミュ障ならではの笑える(笑えない)自虐的なコメディでひたすら爆笑し、一方で懸命にバンド活動に取り組む熱い物語にも強烈に引き込まれる。

主人公たちのモデルがアジカンなのも個人的にはポイントが高い。有名CDのジャケットをタイトルイラストに採用したり、積極的に盛り込まれた音楽ネタも魅力ですね。

 

「みわくの魔かぞく」(ごぼう

母親の再婚によって魔王の父親と吸血鬼の姉妹と家族になった女の子の話。金髪美少女の吸血鬼と黒髪美少女の人間の女の子。こ、これは・・・。

きんいろモザイク」リスペクトの「となりの吸血鬼さん」が、一周回って芳文社きららに帰ってきた!(笑) コミックス表紙はすごく綺麗でかわいいですが、中身は思ったよりコミカルな絵柄でギャグ度も中々に高い作風。芳文社ならではの異種族コメディを存分にご堪能あれ。

 

「紡ぐ乙女と大正の月」(ちうね)

大正時代にタイムスリップした現代の女子高生・紡と同時代の女子学生が同居して学校に通う大正モダンコメディ。この時代ならではの慣れない慣習と厳しい世相を描きつつも、それでも存分に楽しいと思えるのは、紡を助けてくれた公爵令嬢・唯月(いつき)のおおらかな優しさにあると思うんですよね。自身も必ずしも恵まれない境遇にありつつも、それでも大いなる寛容さで紡を守ってくれる。

学校で出会い友人となる女子学生たちもみんなかわいくて、百合的な展開も存分に楽しめます。当時の風俗を積極的に取り入れた描写も魅力。この時代を舞台にした作品は数ありますが、きららならではの明るい作風になっていると思います。