「すべての人類を破壊する。~」に垣間見える98年という時代。

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「性能的にはスターランサーなんだけど、コスチューム的にはフェンリルナイトなんだよねえ」

「なんでリースのとこにくいついたんですか」


 これは、少年エース連載「すべての人類を破壊する。それらは再生できない。」の4話に出てくるセリフです。かつての90年代のMTGを描いていることで話題のこのコミック、当時流行っていたテレビ番組やゲーム、映画、時事など様々な世相が織り込まれているのですが、奇しくも当時流行っていたゲームのひとつ「聖剣伝説3」が、今になってリメイクされて発売されることになり、偶然にも今とつながってしまいました。また、主人公の男の子はこれも当時大人気だったFF7にはまっているらしいのですが、そちらのリメイクも発売されることが決まっています。20年以上前のゲームが、直近の新作ゲームとして話題になっているとは、今は一体いつの時代なのかと思ってしまいます(笑)。

 

 このマンガには、他にも多数の流行が極めて積極的・意識的に取り込まれています。スポーツでは長野五輪とフランスでのワールドカップ。映画ではディカプリオ主演の「タイタニック」が大ヒット。J-POPではGLAYの人気が最高に達しており(シングル「誘惑」「SOUL LOVE」は2枚同時リリース)、国際政治ではインド・パキスタンの核実験が大々的に報じられる。当時はいずれも当たり前のように話題になったことばかりですが、今となっては「あああれはあの頃だったのか」と改めて感心するばかりです。

 

 主人公たちの大きな趣味・関心事であるアニメについても詳しい。「YAT安心!宇宙旅行」は、ヒロインのはまっていたアニメとして何度となく登場しますが、これは当時NHK教育で放送されていたアニメながら、マニアックなオタクに大人気となった作品。この後のNHKのオタク路線のさきがけとなったような気がします。


 「アキハバラ電脳組」も当時オタクの流行となった作品。少し前(94~95年)の放送ですが「覇王大系リューナイト」の話題もちらっと出てきます。今になってみると、最近の深夜アニメとはちょっと雰囲気違うな懐かしいなと思ってしまいますが、あの頃はあの頃でマニアの間で話題をさらったアニメはしっかりと存在していました。当時はネット黎明期でまだSNSでバズるようなこともなかったですが、あの頃アニメを見ていた人なら、こうしたタイトルに色々思うところはあるのではないでしょうか。

 

 ゲームやアニメに対してマンガに関する話題は、作中1巻の時点ではあまりないのがちょっと意外ですが(主人公はマンガはさほど読まなかったのかもしれない)、ここはわたしから補足させてもらうと、98年といえばジャンプで「ONE PIECE」と「HUNTER×HUNTER」が始まったばかりで、一気に人気を集めていた時代でした。いずれも今に至る大ヒット作品として続いているのが感慨深い。それともうひとつ、現在アニメが好評放送中の「ジョジョ」第5部の連載もまさにこの時です(95年~99年)。20年前のマンガが今になってアニメとして一手に話題を集めているのを見ても、やはり今はいつの時代なのかと思ってしまいます(笑)。少し前には「封神演義」の再アニメ化もありましたが、この原作の連載もまさにこの頃でした。

 

 最後に、肝心のこのマンガのメインテーマであるMTG(マジックザギャザリング)について。当初(最初の発売は93年)は海外からの輸入ゲームとして一部マニアの間で流行ってる程度だったのですが、96年に日本語版が発売されて取り扱い店舗が増えてから一気に知名度・人気が拡大。とりわけ97年~98年に発売された「テンペスト」ブロックのカードセットの頃に、日本でも人気は最高潮となりました。作中で主人公たちが遊んでいるのはまさにこの時期で、当時の他の流行に負けず劣らず、MTGというゲームにおいてもこの時代が全盛期のひとつだったのです。そのこともまた心に留めていただければ幸いです。

これは面白い! 浜弓場双新連載「小さいノゾミと大きなユメ」。

 

 先月発売の講談社モーニング・ツーから浜弓場双さんの新連載が始まっています。双さんと言えば最近は「ハナヤマタ」に「おちこぼれフルーツタルト」と芳文社での人気連載が長く続いていますが、しかし以前は電撃で「ToHeart2」のコミカライズを連載していたり(「ToHeart2 AnotherDays」)、あるいは白泉社で方でもエロゲーのコミカライズを連載していたり(your diary)、あるいはライトノベルや児童小説でイラストの仕事を多数手掛けていたり、意外なほど幅広く仕事を手掛けているので、今回のモーツーでの連載も、それほどの驚きはなかったかもしれません。しかし、その新連載の内容は、思ったより意外性があって非常に面白いものでした。

 

 新連載のタイトルは、「小さいノゾミと大きなユメ」。タイトルどおり、望実と由芽というふたりの女の子が主役となっていて、さらには望実の方は、何らかの理由で手のひらサイズの非常に小さな身体となってしまっています。


 そんな身体で野外を放浪した末に迷い込んだのは、ゴミ屋敷と化した由芽の部屋。実は、由芽はとある理由で引きこもりのニートとなってしまい、散らかり放題の部屋で日々酒を飲んでは寝てすごすダメな大人になっていたのです。そんな部屋でなんとか生き延びようとする望実は、しかし机の上によじ登って寝床を確保しようとするだけで四苦八苦。冗談でなく命の危険にさらされるような小さな大冒険を繰り広げることになります。

 

 一言で言えば「汚いアリエッティと言えるような内容で、むしろそうとしか言いようのない内容でした(笑)。机の上から眺める光景は一面がゴミの山で物理的に汚い。郊外の瀟洒で美しい屋敷ではなく、都会のゴミ屋敷で繰り広げられるファンタジー。あるいはコメディとして非常に面白いと思いました。

 

 もうひとつ面白いのは、新連載1話は望実が主役で彼女の視点で語られるものの、2話では一転して部屋の主人である由芽の視点となり、彼女がこういう生活を送ることになった事情と、物陰で動き回る望実に正体不明の恐怖を感じて怯えまくるリアクションが、最高に面白い話となっています。言わば視点の異なるふたりが共に主人公のダブルヒロイン形式。1話と2話が対になっている構成もいきなり面白くて、のっけから作者のマンガ力の高さを感じてしまいました。

 

 作画が比較的以前の絵柄に戻ったように感じるのも個人的には高評価でした。実は、ハナヤマタの初期以前とここ最近では作者の絵柄がかなり変わっていて、以前の方が好きだったので、今回の連載はその点でもかなり好みですね。ハナヤマタ終了以来のストーリーマンガの新作としても期待したいと思います!

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のんのんびよりアニメ3期決定。原作ももうじき10周年!

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 少し前の発表になりますが、あの「のんのんびより」のアニメ3期が発表されました。個人的には何よりもアニメの続きをやってほしい作品で、しかし長い間その話がなかったので、この発表でようやく安心まで覚えてしまいました。先日の劇場版アニメの制作で、これがテレビアニメ3期につながる動きかもしれないと思っていただけに、予想が当たって喜びもひとしおでした。

 

 アニメを待望していた何よりの理由は、なんといってもいまだ原作の長期連載が健在であり、やってほしいエピソードがまだまだ数多く残っている(もしくは増えている)こと。原作は、作者のあっとさんがアニメのヒットにさほど左右されず、まったく変わらぬマイペースで連載を続けていることに好感を覚えます。

 

 アニメは、2期まででおよそ原作の8巻あたりまで消化しています。しかし、原作の連載ペースの遅さもあり、これでもストックが足りなかったようで、2期では多数のアニメオリジナルのエピソードも投入しています。また原作6巻掲載の沖縄旅行編は、ストックが少ないにもかかわらずこれのみテレビアニメ化されず、ずっと後に劇場版としてようやく回収される運びとなっています。

 

 しかし、あれからははや4年。原作はゆっくりのペースながらすでに13巻まで達しており、さらに面白いエピソード・アニメ化してほしいエピソードがいくつも増えました。個人的に一番にアニメ化してほしいエピソードは、なんといっても12巻掲載のキャンプ回でしょうか(85・86話)。沖縄に海に行った話と対になるような山でのキャンプエピソードで、いつものメンバーがいつもの調子でキャンプに挑むそのドタバタ感があまりに面白い。折りしも「ゆるキャン△」のヒットも記憶に新しいところで、このエピソードもアニメでやれば大いに受けそうです。

 

 もうひとつ、11巻から登場する新キャラクター・篠田あかねさんの登場も楽しみなところです。そもそも原作の時点で「あののんのんびよりで今になって新キャラが?」と驚いた記憶があるのですが、これが他のキャラクターに負けず劣らずかわいい。高校生のこのみの後輩に当たる生徒で、彼女と一緒に所属する吹奏楽部での活動の描写にも期待したいところです。
 既存のキャラクターでは、最近ではすっかりレギュラー化したれんげの姉・ひかげの、俗っぽいギャグキャラとしての面白さに磨きがかかっています。もともとは都会の高校に通う生徒で、たまにしか(帰省時にしか)登場しない設定だったはずですが、今ではほとんど常時レギュラー(学校はどうした?)。夏海と組んでの相変わらずの悪ガキっぷりが面白すぎるので、3期でも変わらぬ活躍に期待したいと思います。

 

 そして気が付けば、原作の連載開始からもうじき10年に届こうとしています(2009年11月連載開始)。原作者のあっとさんは、これ以前の連載(こあくまメレンゲ)やイラストの仕事から追いかけてきましたが、まさかここまでの長期連載になるとは思ってもみませんでした。このペースなら10年を超えても何事もなかったように連載は続いていきそうで、これからも末永く楽しみたいと思っています。

「虚構推理」アニメ化決定の話。

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 前回のガンガンの話と少し関連するのですが、あの城平京の小説「虚構推理」のアニメ化が、先日発表されています。城平京さんと言えば、あの「スパイラル~推理の絆~」以降、ガンガン連載のコミック原作を長い間手掛けていましたが、これは講談社から出た小説。さらにはその講談社の雑誌(少年マガジンR)でのコミカライズも長期連載中で、今ではそちらの方に活動の場が移った形になっています。

 

 「虚構推理」の原作小説が最初に出たのは2011年。もう随分と前の話になりました。「スパイラル」原作者久々の小説新作ということで、当初からファンの間ではかなり注目を集めていましたが、実際の内容でも大きな反響を巻き起こしました。


 その特徴は、まずひとつは怪異(妖怪)が実際に存在する世界でのミステリーという点。現実ならばオカルトで非論理的な怪異や妖怪が、実際に存在してしまっている世界でのミステリー。もっとも、こうした物語は、「スパイラル」や「ヴァンパイア十字界」「絶園のテンペスト」など、ファンタジー要素の入った原作を多数手掛けてきた城平京なら、むしろ想定の範囲内と言えるかもしれません。


 しかし、もうひとつ最大の特徴として、推理によって真実を突き止めるのではなく、「あえて嘘の話を流布してそれを信じ込ませる」のが目的という点があります。ネット上で様々なテクニックと駆け引きを駆使して、ネットユーザーたちにそれが本当なのだと本気で信じ込ませる。真実よりも「どうやって人々を納得させるか」に重きが置かれているミステリー。今で言うならば、まさにフェイクニュースの制作と拡散そのものであり、こうしたコンセプトの作品が、2011年という比較的早い時期に書かれたことは、この作者ならではの慧眼だと思いました。

 

 こうしたミステリーとして異色のコンセプトは、当初一部で物議を醸したようですが、しかし最終的には大きな評価を得たようで、翌2012年に第12回本格ミステリ大賞も受賞しています。そして、原作刊行からしばらく経った2015年、講談社の新雑誌「少年マガジンR」の創刊号からコミカライズがスタート。講談社は、当初からこのコミカライズを相当推していたようで、創刊時からほぼ看板作品となり、原作小説のコミック化が一通り終了した後も、続編小説の執筆とそのコミカライズという形で連載が続いています。

 

 そのように当初から相当力を入れた連載だったので、今回のアニメ化も満を持しての決定と言えそうです。一方で、原作者の城平さんのスクエニ(ガンガン)での活動は、2017年まで続いた「天賀井さんは案外ふつう」が現時点で最後の連載となり、長い間作画担当での相方だった水野英多さんも 、今では別のSF小説(「裏世界ピクニック」)のコミカライズを担当している状態です。結果として彼もまたスクエニから講談社へと移籍した形となっているようで、「虚構推理」のアニメ化を喜ぶその一方で、そこだけ一抹の寂しさを感じてしまいました。

現在のガンガンの誌面を紹介してみる。

 かつて「鋼の錬金術師」が終了を迎えた後、ガンガンの部数が2万部を切ったことが話題になったのももう5年以上前になりました。今ではさらに部数は落ちていると思われ、その雑誌の内容、連載マンガについて話題になることもほとんどなくなりました。もう実際に読んでいる人、毎月買って追いかけている人も、非常に少なくなっているのではないでしょうか。そんなかつてガンガンを読んでいたが今は離れてしまった方のために、今のガンガンがどうなっているのか、一応毎月購読している自分なりに紹介してみたいと思いました。

 

 まず、一応今の連載の主流となっているのは、ガンガン的なバトル・ラブコメ・ファンタジーといったところでしょうか。最新号でアニメ化が告知された「戦×恋(ヴァルラブ)」や、あるいはちょっと前に話題となった能力バトル「無能なナナ」が、その代表でしょうか。どこかダークな設定やストーリーを持つ作品も多く、今のひとつの流行りかもしれません。ただ、あまり印象に残らないで終わる連載が多く、かつての人気マンガのように広く知られることは少なくなりました。これが、今のガンガンの不振・限界を象徴していると思います。

 

 しかし、そんな中でも、これはと思える連載はいくつかあります。まず、10年以上前から続くとある魔術の禁書目録のコミカライズ。近年はさらに作画技術や演出に磨きがかかり、安定した連載が続いています。かなりいまいちな出来だったアニメ3期より、こちらの方が面白いのではないかと思います。
 近年アニメ化を果たした「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」も安定してますね。ガンガンの中でもごく少女マンガ的な作品ですが、4コマコメディとして毎回楽しく笑わせてくれます。matoba先生の綺麗な絵も非常に映えますね。

 

 最近の新作では、あの「スパイラル」の水野英多さんが作画を担当する「裏世界ピクニック」はかなりの期待作です。都市伝説の怪異をテーマにしたオカルトホラー・ミステリーで、主人公2人の関係性にも見るべきものがある。「スパイラル」から続いていた城平京作品の後を継ぐガンガンのミステリー枠として、これには頑張ってほしいと思いますね。水野さんの作画も変わらず安定していますし、怪異の不気味さも非常によく描けている。
 もうひとつ、最新の新連載で「ばらかもん」の最終回を迎えたヨシノサツキの次回作「ヨシノズイカラ」。これは本当に面白いです。「ばらかもん」が離島の田舎での書道家の活動を描く話なら、こちらは島で活動するマンガ家の話。画材を揃えるのにも苦労する田舎ならではの苦労や、そんな場所でも等身大のオタクライフを楽しむ若者たちの姿に、非常にリアルなものを感じました。新しいタイプの漫画家漫画として大いに期待したいですね。

 

 個人的に気になっているのが、「旅とごはんと終末世界」。崩壊した世界でいなくなったご主人様を探して旅を続けるロボットの少女の物語。最近ではひとつのトレンドとなっているポスト・アポカリプスものの中でも、とりわけ穏やかで叙情的な作品として気に入っています。

 

 ここ最近は、ガンガンONLINEやマンガUP!などオンラインからの移籍・出張掲載がひとつの中心ともなっている感もあるガンガン。もはや紙雑誌として単独でやっていける時代ではなく、こうしたオンラインコミックと連携してやっていく体勢になっているようです。そもそも「ばらかもん」も元はガンガンONLINEからの移籍(同時掲載)ですし、最近では「おじさまと猫」もそうです。かつて90年代のロト紋・パプワ・グルグルから始まる黄金時代や、2000年代でも「鋼の錬金術師」や「ソウルイーター」が存在感を放っていた頃のような圧倒的人気作品は、もはや望むべくもありませんが、移籍やコミカライズも含めて安定した良作がいくつかは読める雑誌として考えれば、そこそこは楽しめるものに落ち着いたと考えるしかなさそうです。

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そうだ筑波へ行こう! 「恋する小惑星」聖地巡礼のすすめ!

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 先日のきららキャラット3号連続重大発表の中で「恋する小惑星」だけ単独の記事を書いていませんでした。しかし、個人的な本命は間違いなくこの作品であり、最近の4コマの中でも一番に注目していたりします。

 

 最大の魅力は、「小惑星を見つける」という遠大な目標に向けたストーリーでしょうか。小さな子供の頃に一度だけ会った女の子との約束を覚え、高校で再会したことをきっかけに再び大きく夢が動き出す。高校で部活に勤しむ日常描写も楽しいですが、それに加えて主人公の大きな目標に向けた一歩一歩の努力と、その物語の行く末も見逃せないものがある。個人的には、遠大な目標へ向かうストーリーと学術的なテーマという関連性で、あの名作「宇宙よりも遠い場所」と少し近い方向性も感じます。

 

 そしてもうひとつ、その学問的なテーマとして「地学」をフィーチャーした点が見逃せません。かつて高校にあった天文部と地質部が合併し、地学部という新しい部活になった。かつてそれぞれの部員だった生徒たちは、今では部内で「天文班」と「地質班」に分かれ、少しの興味分野の違いこそあれ、その共通性を認めて共に活動することになる。
 「地学」とは、地質学や気象学など地球的な学問分野と宇宙をテーマにした天文学を包括した総合的な学問。一見してまったく違う方向に向けた学問にも見えますが、宇宙から見れば地球もまたひとつの星。そのふたつは大きく共通しつつ、それぞれの視点からひとつの事物を見る面白さもある。こうした学問の楽しさを、このマンガを通して理解できると思います。

 

 そして、そんな学問的興味のハイライトと言えるのが、コミックス1巻最後で訪れる筑波の研究施設。巻末のおまけページでも詳しく解説されており、まさに聖地巡礼的な興味をそそられる構成になっています。

 

 作中で最初に訪れる「地質標本館」では、彼女たちも館内で試みたように、実際に拾った化石を鑑定してもらうことが出来る。もちろん珍しいきれいな鉱物や恐竜関連の展示物を見るだけでも楽しい場所となっています。


 2番目に訪れる「JAXA 筑波宇宙センター」は、筑波でも最も有名な人気施設かもしれません。本物のロケットをはじめ様々な展示物があり、見学ツアーに参加できればさらに貴重なエリアを見学することも出来る。ここは舞台探訪の最大の目玉ではないかと思っています。


 最後に訪れる「地図と測量の科学館」は、ややマニアックながら地図や測量に興味がある人には大いに楽しめる場所かと思います。伊能忠敬の「大日本沿海輿地全図」などの貴重な古地図、古地球儀や基準点標石、あるいは解体されたパラボナアンテナの展示など、興味深い展示が多い。作中でははしゃいでいるイノ先輩がかわいすぎますが、そんな風に学問的興味のある人を惹き付ける施設になっていると思います。

 

 コンテンツの聖地巡礼としては、作中で登場する場所を特定してその場所に立つ楽しみもありますが、この「恋する小惑星」の舞台探訪は、作中のキャラクターが体験した施設を自分も追体験する、そういう楽しみが大きいと思います。コミックス2巻の発売とアニメ化を控える今のうちに是非とも一度行ってみてはどうでしょうか!

ガンガンJOKER10周年を振り返る。

 今月号でガンガンJOKERが10周年を迎えたらしく、誌面で様々な記念企画が組まれています。今は作者が去って久しい「妖狐×僕SS」と現在好評連載中の「賭ケグルイ」のコラボ表紙が組まれたり、もう連載が終了したかつての人気作品が1回限りで復刻したりと、昔から読んできた自分には思わず懐かしくなってしまいました。

 

 ガンガンJOKERが創刊されたのは2009年。当時はスクエニ雑誌が大再編の時期で、このガンガンJOKERもその再編の結果として生まれました。それまで続いていたガンガンパワードガンガンWING、ふたつの雑誌を休刊させ、一足先に始まっていたウェブ雑誌・ガンガンONLINEとこのJOKERへと多くの作家を移籍させ、大再編を行ったのです。休刊した雑誌のうちパワードはまだ堅調でしたが、WINGの方の落ち込みは激しかったようで、その救済の意味は大きかったと思います。

 

 新しく生まれたふたつの雑誌のうち、ガンガンONLINEは新興の本格ウェブ雑誌として非常な成功を収めます。対してガンガンJOKERは、スクエニの中でもややマニアックなコア読者を対象とした雑誌として、安定して続く雑誌となりました。休刊したガンガンWINGが不振を極めていたので、この再編は成功を収めたのではないかと思います。

 

 創刊されたJOKERは、休刊した雑誌からの移籍作家と、このJOKERでデビューすることになった新人作家の連載を中心にスタートします。特にWINGからの移籍作家は多く、中でも小島あきらさんと藤原ここあさんが、当初から最も注目された人気作家になりました。小島さんは深刻な体調不振から連載は長続きしませんでしたが、一方でここあさんの妖狐×僕SSは、非常な支持を集め、アニメも見事にヒットして大人気作品となりました。

 

 対して新人作家による新規連載からは、アニメ化された黄昏乙女×アムネジア」(めいびいをはじめ、プラナス・ガール」(松本トモキヤンデレ彼女」(忍)、少し遅れて「アラクニド」(村田真哉・いふじシンセン)、さらにはあのアカメが斬る!」(タカヒロ田代哲也などの良作が生まれました。一方でうみねこのなく頃に“文学少女”シリーズのコミカライズも長く続く名作となりました。コミカライズをひとつの主軸としつつ、ラブコメやバトルものを中心とするオリジナル作品を打ち出していくスタイルが、初期の頃から確立していたようです。

 

 さらに、創刊から数年経った頃のヒット作としては、一週間フレンズ。」(葉月抹茶繰繰れ!コックリさん」(遠藤ミドリが強く印象に残ります。どちらも読み切りからの連載昇格で、前者は記憶喪失の少女を中心に据えたセンシティブな青春ストーリー、後者は狐の妖怪と電波少女を中心にした爆笑ギャグマンガ。いずれも2014年にアニメ化され、非常な支持を集めたのはいまだ記憶に新しいところです。正直いずれも2期がなかったのが残念でならない!

 

 さらに近年のヒット作としては、なんといっても賭ケグルイ」(河本ほむら尚村透「ハッピーシュガーライフ」(鍵空とみやき)を挙げるべきでしょう。前者は原作者と作画担当者の力が光るギャンブルマンガ、後者は主人公とヒロインの強い関係を中心に据えたサイコサスペンス。とりわけ「ハッピーシュガーライフ」の鍵空さんは、これ以前は優しい雰囲気のラブコメ(「カミヨメ」)やあの「TARI TARI」のコミカライズを手がけていたのですが、新作では一転してダークな作風を見せてきて、その今まで知らなかった引き出しに驚きました。最近のJOKERでは、この作品のヒットを受けてか、猟奇的なサスペンスやホラーの連載が増えてきたように感じます。

 

 ここ直近の1、2年は、中堅の良作と言える連載は多いものの、アニメ化するほどの突き抜けたヒット作は、ちょっと少なくなったように感じられます。その中でも「ジャヒー様はくじけない!」(昆布わかめ)は、次の最有力作品として期待したい。魔界No.2の実力者(だった)ジャヒー様が、力を失った人間界で魔界復興のために涙ぐましい庶民的な努力を続けるシチュエーションコメディ。毎回本気で笑えるギャグマンガなので、これは是非ともアニメ化まで行ってほしいと思っています。

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