ガンガンJOKER10周年を振り返る。

 今月号でガンガンJOKERが10周年を迎えたらしく、誌面で様々な記念企画が組まれています。今は作者が去って久しい「妖狐×僕SS」と現在好評連載中の「賭ケグルイ」のコラボ表紙が組まれたり、もう連載が終了したかつての人気作品が1回限りで復刻したりと、昔から読んできた自分には思わず懐かしくなってしまいました。

 

 ガンガンJOKERが創刊されたのは2009年。当時はスクエニ雑誌が大再編の時期で、このガンガンJOKERもその再編の結果として生まれました。それまで続いていたガンガンパワードガンガンWING、ふたつの雑誌を休刊させ、一足先に始まっていたウェブ雑誌・ガンガンONLINEとこのJOKERへと多くの作家を移籍させ、大再編を行ったのです。休刊した雑誌のうちパワードはまだ堅調でしたが、WINGの方の落ち込みは激しかったようで、その救済の意味は大きかったと思います。

 

 新しく生まれたふたつの雑誌のうち、ガンガンONLINEは新興の本格ウェブ雑誌として非常な成功を収めます。対してガンガンJOKERは、スクエニの中でもややマニアックなコア読者を対象とした雑誌として、安定して続く雑誌となりました。休刊したガンガンWINGが不振を極めていたので、この再編は成功を収めたのではないかと思います。

 

 創刊されたJOKERは、休刊した雑誌からの移籍作家と、このJOKERでデビューすることになった新人作家の連載を中心にスタートします。特にWINGからの移籍作家は多く、中でも小島あきらさんと藤原ここあさんが、当初から最も注目された人気作家になりました。小島さんは深刻な体調不振から連載は長続きしませんでしたが、一方でここあさんの妖狐×僕SSは、非常な支持を集め、アニメも見事にヒットして大人気作品となりました。

 

 対して新人作家による新規連載からは、アニメ化された黄昏乙女×アムネジア」(めいびいをはじめ、プラナス・ガール」(松本トモキヤンデレ彼女」(忍)、少し遅れて「アラクニド」(村田真哉・いふじシンセン)、さらにはあのアカメが斬る!」(タカヒロ田代哲也などの良作が生まれました。一方でうみねこのなく頃に“文学少女”シリーズのコミカライズも長く続く名作となりました。コミカライズをひとつの主軸としつつ、ラブコメやバトルものを中心とするオリジナル作品を打ち出していくスタイルが、初期の頃から確立していたようです。

 

 さらに、創刊から数年経った頃のヒット作としては、一週間フレンズ。」(葉月抹茶繰繰れ!コックリさん」(遠藤ミドリが強く印象に残ります。どちらも読み切りからの連載昇格で、前者は記憶喪失の少女を中心に据えたセンシティブな青春ストーリー、後者は狐の妖怪と電波少女を中心にした爆笑ギャグマンガ。いずれも2014年にアニメ化され、非常な支持を集めたのはいまだ記憶に新しいところです。正直いずれも2期がなかったのが残念でならない!

 

 さらに近年のヒット作としては、なんといっても賭ケグルイ」(河本ほむら尚村透「ハッピーシュガーライフ」(鍵空とみやき)を挙げるべきでしょう。前者は原作者と作画担当者の力が光るギャンブルマンガ、後者は主人公とヒロインの強い関係を中心に据えたサイコサスペンス。とりわけ「ハッピーシュガーライフ」の鍵空さんは、これ以前は優しい雰囲気のラブコメ(「カミヨメ」)やあの「TARI TARI」のコミカライズを手がけていたのですが、新作では一転してダークな作風を見せてきて、その今まで知らなかった引き出しに驚きました。最近のJOKERでは、この作品のヒットを受けてか、猟奇的なサスペンスやホラーの連載が増えてきたように感じます。

 

 ここ直近の1、2年は、中堅の良作と言える連載は多いものの、アニメ化するほどの突き抜けたヒット作は、ちょっと少なくなったように感じられます。その中でも「ジャヒー様はくじけない!」(昆布わかめ)は、次の最有力作品として期待したい。魔界No.2の実力者(だった)ジャヒー様が、力を失った人間界で魔界復興のために涙ぐましい庶民的な努力を続けるシチュエーションコメディ。毎回本気で笑えるギャグマンガなので、これは是非ともアニメ化まで行ってほしいと思っています。

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