「棺担ぎのクロ。」最終7巻発売。

kenkyukan2018-08-01


 先日、ついにあのきゆづきさとこさんの「棺担ぎのクロ。」の最終7巻が発売されました。6巻の時点で「次で完結」と告知されて、ああもう終わってしまうのかと思っていましたが、ついにその時が来てしまいました。少し前に、きゆづきさんのもうひとつの代表作「GA-芸術科アートデザインクラス-」も、一足先に終了を迎えていましたが、ついにこちらの連載も終了。ひとつの時代が終わった感もありました。

 「棺担ぎのクロ。」が始まったのは、まんがタイムきららの2005年1月号。創刊から数年が経っているとはいえまだきららの黎明期で、その当時の連載陣の中でもひときわ目立った存在でした。その特徴は、まず4コマながらストーリーの連続性を強く意識したストーリー4コマであったこと。通常の4コマでも次の4コマに話が続く作品は珍しくないですが、最初からそのつながりとストーリーを強く志向した作品は、黎明期からのきらら4コマのひとつの特徴であり、その中でもこの「クロ。」はその代表だったと思います。

 もうひとつの特徴は、とにかく美麗で緻密な作画に惹きこまれるビジュアル4コマであったこと。とりわけカラーページの美しさは必見で、寓話的なファンタジー世界の奥深さを緻密に描いたその作風には、毎回目を奪われるばかりでした。ダークファンタジーであることを意識してか、コマの周囲が黒く塗られているのも特徴で、明るくカラフルな世界観が特徴の「GA」とは対を成しているようでした。

 肝心の内容ですが、どこか童話的な雰囲気も感じられる異世界を舞台にしたファンタジー物語でしょうか。全身黒ずくめの服装でなぜか棺桶を背負って旅を続ける少女・クロと、彼女の相棒で蝙蝠の姿をした人間の青年・セン(センセイ)、そして道中立ち寄った家で邂逅した幼い双子「ニジュク」と「サンジュ」、彼女たちのある目的に向かった旅を描くロードファンタジーです。「ダークファンタジー」とも呼ばれるとおり、暗く陰鬱な雰囲気とエピソードが特徴的で、ある「呪い」を受けたクロの旅は、目的に近付くごとに暗く険しいものとなる。彼女の物語とは直接の関係の薄い道中のエピソードも多数ありますが、いずれも暗く悲しいものが多い。ただ、時には明るめのエピソードもあり、あるいは毎回の4コマでは気の効いたコメディでオチが付くことも多く、読んでいてそこは救われるところでした。

 ただ、連載が佳境に差し掛かった最後の数巻では、彼女を取り巻く物語はいよいよどす黒く陰惨なものとなり、道中で邂逅するエピソードもさらに暗いものとなりました。しかし、物語の真相が語られる最後の結末は、それまでの展開から予想されるいずれのものでもないエンディングとなっていて、一抹の寂しさの中にも明るさを感じる最後で、これには言葉もなく救われる思いでした。

 個人的には、終盤の6巻でクロが立ち寄った「霧の王国」の国王が、エピローグで再び登場したのが嬉しかったですね。その国は、とある理由からクロを苛む呪いからは隔絶された場所であり、そこに留まっていれば一時の安らぎを得ることが出来ました。しかし、クロはそこに長く滞在することなく再びつらい旅を続けることを決意する。「ここにいたら確実に”クロ”はこの世界からいなくなる」。それがその理由でした。そして、その国の王が最後に今一度登場してくれたことで、このエピソードにも心残りのない結末が付いたと思ったのです。