今季のアニメの舞台を振り返る!

kenkyukan2018-03-01

 ここ最近、聖地巡礼が広く浸透したからか、アニメ制作の側でも、意識して作中で特定の舞台を描く作品が増えているような気がします。明らかに以前より舞台を設定するアニメが増えているという調査結果もありますし、今季のアニメだけを見ても、「ゆるキャン△」(山梨・静岡・長野各所)・「宇宙よりも遠い場所」(館林)・「りゅうおうのおしごと!」(大阪)・「博多豚骨ラーメンズ」(博多)・「三ツ星カラーズ」(上野)・「citrus」(豊洲他都内各所)と、目立つものだけでも枚挙に暇がありません。

 まず、舞台の描写という点では、「ゆるキャン△」は真っ先に挙げるべきでしょう。もともと、原作の時点で、実在する場所が多数登場することに感動し、アニメでもその描写に期待していたのですが、実際に放送が始まると期待以上でした。キャンプ地に広がる美しい光景が、徹底的に緻密に描かれていて本当に素晴らしい。舞台の中心となる身延町を初めとする街並みや駅の描写にも余念がないですね。

 「宇宙よりも遠い場所」も、舞台の描写にかなり力を入れています。主な舞台は群馬の館林で、館林駅や最寄りの茂林寺前駅、駅周辺の各所が幾度も登場。さらには主人公たちが序盤に赴く新宿の歌舞伎町や、南極へ向かう途中の寄港地であるシンガポールフリーマントルなど、現実の舞台の魅力をダイナミックに描いていこうという姿勢が強く感じられます。

 「りゅうおうのおしごと!」は、将棋がテーマの作品ですが、舞台は大阪。棋士たちの本拠地となる関西将棋会館を初めとする大阪の各所が、やはり極めて積極的に描かれています。地元密着というか各所で大阪の下町の庶民的な雰囲気が出ているのもいいですね。

 さらに意識的に地方の舞台を描いているのが「博多豚骨ラーメンズ」。タイトルどおり博多の天神や中洲、博多駅前などの有名どころのカットが次々と登場。現実の場所をそのまま詳細に描こうというコンセプトが強く感じられ、極めて直接的な舞台描写になっていると感じます。

 「三ツ星カラーズ」の舞台となる上野の描写も素晴らしい。雑多で賑やかな活気に満ちたアメヤ横丁の商店街や、四季折々の自然の姿を見せる上野公園の緻密な描き込みに目を奪われます。「子供たちが上野の街を守る」という作品のテーマもあって、この作品の舞台描写への力の入れ方もすごい。これを見て思わず上野に行きたくなりました(笑)。

 「citrus」も舞台は都内でこちらは豊洲近辺が中心。主人公が豊洲のマンションに住んでいるという設定で、有楽町線豊洲駅の入り口の他、ショッピングセンターのららぽーと内部の様子が頻繁に登場。また6話においては、靖国近辺から京成上野駅まで主人公2人が自転車の二人乗りで爆走するという超展開を披露(笑)。奇しくも三ツ星カラーズと舞台が一瞬かぶってしまいました。

 他にも変り種として「スロウスタート」の軽井沢、「刀使の巫女」の岐阜羽島や鎌倉などもあります。とにかく実在の舞台を見せる作品が一気に増えた印象が強いですね。

 これまでも、どこか現実の場所をモデルにする作品はいくつもありました。しかし、ここ最近は、単に背景のモデルにするだけでなく、特定の舞台を設定してその場所を詳細に描くタイプの作品が、ひとつのトレンドになっているような気がします。「たまゆら」や「ガールズ&パンツァー」のような舞台探訪ブームを起こしたアニメのヒット、さらには「君の名は。」や「この世界の片隅に」など一般にも広く聖地巡礼が浸透した作品の影響は、かなり大きいものがあったと見ています。

 個人的には、昔はよく見られた個性に乏しいどこにでもあるような架空の地方都市よりも、こうして各地域の特色を積極的に描く作品が増えたことは、非常にいい傾向だと思っています。これが地方の活性化にも貢献する一助となれば幸いですね。