「はやしたてまつり♪」

kenkyukan2017-07-27

 1カ月前のコミックスになってしまいましたが、6月のきらら新刊より「はやしたてまつり」(高坂曇天)を紹介したいと思います。ここ最近、きららではいわゆる日常ものに加えて、女の子たちが何かに取り組んでいく作品を、ひとつのコンセプトにしているような気がしますが、これもその中のひとつだと思いました。この「はやしたてまつり♪」で主人公たちが取り組むのは、祭りのお囃子。中でもその主役となる太鼓です。
 新聞部の女の子2人が、地元のお囃子の演奏家だという人に取材に行ったことをきっかけに、自分もお囃子の演奏に興味を持ち、とりわけ太鼓を叩いた時の心臓に伝わる響きに感動を覚え、少しずつその世界へと入っていくというストーリー。強面の年配の人だと想像していたお囃子の演奏家の人は、実は高校生の女の子でしかも同じ学校の隣のクラスメイトだったという展開で、その取材の成果の新聞記事を書いたところ、役所のふるさと振興課のお姉さんの目に留まり、彼女の誘いで地域新興の活動を始めることになります。彼女の紹介で笛を担当する女の子も加わり、4人で練習して地元のイベントに出ることになる。

 中でもこれはいいと思ったシーンは、そのイベントで緊張を乗り越えて初めて演奏を始める場面。4人の音が合わさり、初めはゆっくりと、そして少しずつ駆け足でテンポが上がり、ついにはお祭りの賑やかな音に満たされる。そのお祭りの空気感が画面から伝わってくるようで、心地良くも華やかなシーンになっていると思います。

 高坂さんの絵がいい感じに柔らかで優しい雰囲気を出しているのもいいです。とりわけカラーページは華やかさも加わってとてもいい。太鼓や笛など楽器から出る音が、ぼんやりした光の玉や花びらで表現されている演出もいい。そのあたり一面の空気を響かせる音の広がりをそのまま描いているようで、とても面白い演出だと思います。

 和楽器という点では、きららフォワードに「なでしこドレミソラ」という先行作品があり、こちらとも音の演出という点でちょっとした共通感を覚えます。練習してイベントで成果を発揮する部活動的な取り組みという点では、同じくフォワードの「ハナヤマタ」を思い出すところもあり、あるいは地元新興のための活動という点では「ろこどる」的な要素もある(笑)。それでありながら、お祭りのお囃子、響き渡る太鼓というダイナミックな活動で、こうした先行作品ともまた違った魅力を持つ作品になっていると思いますね。