「つくろぐ。」でものづくりの楽しさを再発見しよう!

kenkyukan2016-12-07


 このところコミックキューンの新作もまたいい感じなんですが、その中でもまずはこの11月にコミックス1巻が発売された「つくろぐ」(今村朝希)を紹介したいと思います。数ある4コマの中でも、DIY(日曜大工)や庭作りにスポットを当てた作品はちょっと珍しいと思いました。
 肝心の内容ですが、学校の近くの下宿先に引っ越してきた女子高生・華(雪丸華)が、下宿先でふたりの女の子と出会い、そのふたりから日曜大工や料理のテクニックを教わりながら、楽しく毎日の生活を彩って過ごしていく姿を描く「ハンドメイド4コマ」とも言える作品となっています。

 華は、もともと整理整頓が不得意だったこともあって、引っ越しした直後はまだ荷物のダンボールすら片付けられていない殺風景な部屋のまま。しかし、工業高校の建築科所属で日曜大工が得意な同居人・創李(つくり)が、そんな彼女にアドバイスしつつ様々な家具や小物、調度品をハンドメイドで作り上げ、最初はむき出しのフローリングだけだった部屋が、かわいい装飾に彩られたセンス溢れる部屋にリフォームされていく。殺風景だった部屋が、ちょっとした工夫で見違えるように華やかになる様子に、思わず引きこまれました。

 さらには、もうひとりの同居人で料理学校に通う菓子(かこ)は、料理が得意な女の子で、こちらもちょっとした工夫で美味しいスイーツを作り上げ、不器用で料理も不得意だった華に少しずつその楽しさを教えていく。「伊○家の食卓」で学んだちょっとしたアイデアも面白く(笑)、なるほど工夫次第でこんなに意外なほど簡単に作れるのかと感心しきりでした。

 さらには、日曜大工や料理は不慣れで不得意でも、主人公の華にも得意分野がありました。農業高校の園芸科に通う彼女は、鉢植えの植物を育てたり野菜作りをするのが得意で、荒れていた庭に植物を植えて華やかにするガーデニングに取り組むことになるのです。小物作りに長けた創李のアイデアで、バケツやペイント缶をおしゃれな鉢にデザインする手助けも受けて、寂しかった庭に賑やかに鉢植えが並ぶことになる。3人がそれぞれの得意分野を生かして、生活に彩りを添えて楽しく暮らす工夫に満ちた一作となっています。

 もうひとつ、実際にこのマンガのそうした描写にどれだけ実用性があるか?現実に役に立つか?というのも気になるところですが、ここは「存分に役に立つ!」と言い切ってしまいましょう。少なくとも「伊東家の食卓」と同じくらいには役に立ちます!(笑)。ダンボールを包装紙やマスキングテープで飾るだけでかわいい箱が出来たり、ホットケーキミックスと電子レンジだけで簡単にクレープ生地が出来たり、そういう実用的な発見に満ち溢れている。あるいはちょっと本格的に、すのこをばらして工作しておしゃれなテーブルを完成させる話もあります。どれも自分で出来る、やってみたいと思えるものが揃っているのです。

 まさに「ものづくり」の楽しさを再発見する4コマになっています。作中の女の子たちの生活描写が楽しいばかりでなく、現実の自分の生活にもフィードバックしてみようとという意欲までかきたてられる一作。こんな作品が出てくるとは今のコミックキューンはやはりあなどれない!