「ユーベルブラット」がついに最終回。

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 今月のビッグガンガンの次号予告で、あのユーベルブラット」(塩野干支郎次の次号終了が告知されていて、ああついにこの作品も終わるのかと思ってしまいました。ヤングガンガン創刊と同時に始まったのが2004年。ビッグガンガンに移籍されたのが2012年。まさかこんなに長い連載期間になるとは思いませんでした。

 「ユーベルブラット」は、闇の軍勢(モンスター)の脅威に怯える異世界が舞台のダークファンタジー。初期のヤングガンガンは、こうした本格ファンタジー作品をいくつも打ち出していて、その中にはあの「ロトの紋章」の続編「紋章を継ぐ者達へ」や、FF11を原作にしたゲームコミックもありました。しかし、まず最初にヒットして真っ先に成功したのは、オリジナル作品であるこの「ユーベルブラット」であったと記憶しています。

 その物語は、闇の領邦へと討伐任務に赴き辛くも成功を収めた主人公(ケインツェル)たちが、かつて離脱した仲間たちに裏切られて殺され、しかしただひとり妖精の力で生き延びたケインツェルが、今では英雄にして国の支配者になった裏切り者たちへの復讐の旅に赴くというもの。残虐なシーンや苛烈なシーンも多いまさにダークなファンタジーですが、過酷な運命の中で力を得た主人公が、仲間の助けも得て悪人である英雄たちを倒していく物語には爽快感があり、とりわけ連載開始直後の序盤の展開は非常に面白かったと思います。

 おそらくはドイツの領邦国家をモデルにして、そこに闇の軍勢やドラゴン、飛行船や空中城砦などのファンタジー要素を加えた世界観も魅力で、詳細な設定に裏打ちされた世界を、黒を基調とした迫力の作画で描いたビジュアルにも見応えがありました。

 しかし、連載から数年が過ぎたあたりで、突然連載は休止状態になり、長い中断を経ての再開後も、かつての勢いを取り戻すことはできませんでした。ストーリーも序盤の頃の勢いが失われたように思えて、中盤以降は連載が話題になることもなくなってしまいました。2012年にビッグガンガンに移籍された後も様子はあまり変わらず、掲載誌が変わったことで読者の知名度はさらに落ち、最近はもう連載が続いていること自体知っている人も少なくなっていたと思います。

 ゆえに、今になっての連載終了も目立たない形になってしまいましたが、しかしヤングガンガン最初期に連載が始まった頃は、確かに雑誌の看板クラスの人気作品のいとつだったのです。しかし、他の人気作品の多くがアニメ化を達成する中で、これだけは結局アニメ化までは行かなかった。それだけが非常に心残りですね。

「えんどろ~!」って楽しいよね!

 前々回の日記で、今季不在のきらら系アニメの穴を埋める「私に天使が舞い降りた!」を紹介しました。しかし、今季は、もうひとつ以前よりきららや日常ファンに期待されていた作品があるのです。こちらはオリジナル作品のファンタジーコメディ「えんどろ~!」です。

 

 半年ほど前に情報が公開されたこのアニメ、「ありそでなかった日常系ファンタジー」という触れ込みから、そうしたファンの注目を大いに集めていました。加えて、監督にゆゆ式のかおり、シリーズ構成にゆるゆり・うまる・ガヴのあおしまたかし、キャラクター原案にゆるゆりのなもり、キャラクターデザインにたまゆらがっこうぐらし!飯塚晴子、そして制作にきんいろモザイクやとなりの吸血鬼さんのStudio五組という、まさに日常系アニメのオールスターのようなスタッフで、大いに期待が高まっていたのです。そして、実際に放送が始まったアニメは、まったく期待に違わない素晴らしいものとなっていたのです。

 

 タイトルの「えんどろ~」は、エンドロールの意味。その名のとおり、1話冒頭でいきなり勇者のパーティーが魔王を倒し、開始4分でエンディングが流れ始めるという驚きの展開。さらに、最終決戦で倒された(別世界に飛ばされた)魔王が、過去の世界へと辿り着き、勇者たちの通う冒険者学校の先生となり、まだ子供時代の勇者たちの邪魔をし自分を倒すクエストを阻止しようとする・・・という始まりになっています。

 

 学校に通う勇者たちの日々は非常にコミカルで楽しい毎日の連続。それを象徴するのが、毎日宿屋に泊まっている勇者たちが、夜寝る前におしゃべりをするシーンで、パジャマパーティーのような楽しさに満ち溢れています。毎回パジャマパーティーを見られるとはなんと幸せなアニメか! きらら系、日常もののアニメを愛する自分としては、十分満足する出来栄えでした。

 

 しかし、きらら系としての要素も十分備えていますが、同時にこの「えんどろ~!」には、もうひとつの方向性があるように思われます。それは、かつてのRPGのパロディものとしての要素。RPGのお約束をギャグにしたそのコメディは、あの魔法陣グルグルを彷彿とさせるものがあり、あるいはさらにその元ネタであるドラクエを直接パロディ化した箇所も多い。というか、登場するモンスターやキャラクター、世界観、そして使用される音楽など、明らかにドラクエのそれをそのまま意識しているようにも思われます。このあたり、グルグルやドラクエ4コマに代表される、かつてのエニックス・ガンガン系のRPGギャグコメディに通じるものがあり、そうしたマンガを愛読していた自分のつぼにもぴたりとはまる作品になっていました。

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 ちなみに、今季のアニメでは、「ぱすてるメモリーズ」というアニメやゲームを露骨にパロディ化するアニメがあるのですが、そちらでもドラクエの世界をそのままぱくったかのような屈指のパロディ回があり、そちらでも大笑いして見ていました。いまだにドラクエというゲーム、そのほのぼのとした世界観に対する根強い人気を実感すると同時に、そうしたテイストを受け継ぐオリジナルアニメが出てきたことをうれしく思いました。

・メイドラゴン待望の2期!

 先日、あの「小林さんちのメイドラゴン」のアニメ2期の情報が飛び交い、まさかと思っていたのですが、数日後にそれが本当に告知されて驚きました。1期が放送されたのは約2年前の2017年の1月。いまひとつ売れ行きが芳しくなかったとも聞いていて、2期の可能性は低いと思っていたのですが、まさか本当に実現するとは。これほどうれしいことはありません。

 

 「小林さんちのメイドラゴン」は、月刊アクション連載中のクール教信者先生の作品。クール教先生は、他にも多くの作品を手掛けており、一度に多くの連載を抱えていたことでも著名ですが、その中でも代表作だと言えるでしょう。これ以前に「旦那が何を言っているかわからない件」「小森さんは断れない!」も2作品もアニメ化されていますが、それらはいずれもショートアニメ。30分枠でのアニメ化はこの「メイドラゴン」が初でした。

 

 その内容は、主人公にして26歳の独身OLである小林さんが、酔った勢いで山中で偶然であったドラゴンを助けたことをきっかけに、そのドラゴン(トール)がメイド服を着た人間の姿で家に押しかけ、やがて他のドラゴンたちも次々とやってきて共同生活を送るようになるというもの。ドラゴンたちはこの世界とは異なる異世界からやってきているらしく、その異世界と人間世界とのギャップ、人外のドラゴンと人間との一風変わったしかし幸せな交流が楽しいコメディとなっています。

 

 ドラゴンたちの住む異世界は、どうもこちらとは違って殺伐とした世界であるらしく、ドラゴンと人間が争ったり、あるいは人間同士の間でも戦乱が絶えないような場所であるようなのです。そんな世界からこちらへとやってきたトールたちは、元の世界のことを時折気にしつつも、しかしこちらでの穏やかな生活や人間ならではの娯楽文化を満喫する。当たり前にある身近な人間世界の安心感。それが端々で感じられてとても心地よい幸福感を増していると思うのです。

 

 人間の世界にも様々な問題はあり、SEの仕事をしている小林さんのブラックな労働環境や、あるいは近所の人たちとのトラブルも時に描かれるものの、それらはトールたちドラゴンの強大な能力や、あるいは小林さんたち人間の努力によって解消に向かう。アニメでは埼玉県越谷市の街が舞台モデルとなっていて、そこの商店街にトールが毎日のように買い物に行ったり、そこの人たちと気軽な交流が交わされたり、そうした庶民的な生活描写も魅力のひとつとなっています。

 

 アニメは、あの京都アニメーションの制作で、その鋭い描写と作りこみでさらに原作の魅力を引き出しています。それと、原作のクール教先生の絵はまあなんというかえろいのですが(笑)、アニメはそのあたりでもバランスの取れたデザインになっているようで、親しみやすさも増していると思いました。日常ものの雰囲気も強く、きらら系などが好きなアニメファンの間でも大きな人気を獲得しました。


 しかし、円盤の売り上げなどはそれほどでもなかったようで、ここまで続編の話はまったく聞かれなかったこともあって、2期の可能性は低いと思っていました。それがここにきてまさかの2期発表。この2017年冬のアニメは、他にも多くのヒット作がありながら、その多くが「けものフレンズ」の圧倒的な話題性の前に霞んでしまった感がありましたが、ようやくひとつ真価を発揮したようでありますよ。

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今季最大本命「私に天使が舞い降りた!」

 今季2019年冬アニメで(主に一部クラスタの間で)絶賛放送中の「私に天使が舞い降りた!」(椋木ちなつ)を満を持して取り上げようと思います。原作は百合姫連載のコミックですが、そちらの知名度がそれほど高くなかったこともあって、最初の頃の話題はそれほどでもなかったと思います。しかし、実際には予想以上の出来となっていて、一気に盛り上がることになりました。

 

 その内容ですが、オタクで人見知りだった女子大生・みやこの家に、ある日妹に連れられて天使のような女の子・花ちゃんがやってくるというもの。花ちゃんだけでなく、姉にひたすら懐いている妹のひなた、となりに引っ越してきたハーフの女の子・乃愛(のあ)、彼女たちのクラスメイトで学級委員の小依(こより)と夏音(かのん)と、みんな明るくて人の良い子供たちばかり。まさにタイトルどおりの天使たちで満たされた作品になっています。

 

 特筆すべきは、ただ小学生の女の子と彼女たちに慕われる女子大生のかわいい日常を描くことに集中していて、そこに至るまでの何らかの努力や苦難、暗い境遇などは見られないということ。主人公が何かの努力や苦難を重ねた結果として報われるとか、不幸な境遇で過ごしていたところに天使がやってくるとか、決してそういうドラマではない。主人公のみやこは、オタクで引きこもり気味で人見知りとはいえ、普段は家でのんびり暮らしているようで、特に不幸な境遇ではなさそうです。そんなところに天使のような女の子がやってきてただ家で戯れる、あるいは彼女たちの楽しい学校生活を描くという、楽しさ100%の作品となっている。まさにきらら系や日常系そのままの作風で、そうした作品のファンにそのまま受け入れられることになりました。

 

 百合姫連載の作品としては、いわゆる百合描写は少なめで、強い恋愛や結び付きを描く百合作品とは少し印象が異なるかもしれません。しかし、メインキャラクターの中で学級委員コンビのこよりとかのんの関係は、ドジで先走りしがちなこよりと有能なかのんがサポートするという関係に見えながら、実際にはかのんもこよりに依存しつつふたりで寄り添って仲良く過ごしているという関係になっていて、ここには百合的な関係が垣間見えると思います。

 

 元々、今季の2019年冬のアニメは、久しぶりにきらら原作のアニメが放送されないということで、そうしたアニメを求めるファンには寂しい思いがありました。そんな中で作風が近くて期待できそうなアニメということで、この「私に天使が舞い降りた!」に白羽の矢が立ったのですが、実際の内容が期待以上のものがあったことで、さらに評価が高まった感があります。制作を担当する動画工房は、ひとつ前にも「ウチのメイドがウザすぎる!」という共通感のある内容の原作をアニメ化していて、まさにここの得意中の得意ジャンルの面目躍如。こういうアニメを臆面もなく作り続ける動画工房に心から乾杯したいと思います(笑)。

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時は来た! 「まちカドまぞく」アニメ化決定!

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 前回書いた日記の予想通り、ついに「まちカドまぞく」(伊藤いづも)のアニメ化が発表されました。連載開始当時から圧倒的な人気と評価を獲得していた本作のまさに待望のアニメ化。しかし、2014年の開始以来、もうかなり長く連載が続いている割には、これまでアニメ化の話は意外にも聞かれず、3巻発売後もそのような話がなかったこともあって、「もしかしたらアニメ化されないのではないか」とちょっと不安なところはありました。今回の「時は来た!」という告知も、そうした経緯を踏まえての万感の思いが感じられたのです。

 

 「まちカドまぞく」は、多摩市の聖蹟桜ヶ丘(をモデルにした架空の街)を舞台にした日常ファンタジー。普通の(?)女子高生として暮らしていた主人公・吉田優子は、ある日先祖返りをして突然闇の魔族として覚醒。シャドウミストレス優子(シャミ子)という名前を受け、宿敵である魔法少女との戦いに挑みますが、しかし覚醒しても大した力を持たなかったシャミ子は連戦連敗。むしろ宿敵であるはずの魔法少女・千代田桃に同情され、ついには仲良くなってしまう有様。そんな魔族と魔法少女が織り成す楽しいコメディと移り行く関係性、そして魔族としての秘密が次第に明らかになっていくストーリーと、見所の多い面白い作品になっています。

 

 特筆すべきは、4コママンガとしての密度の濃さ。圧倒的に描きこまれた画面と多彩な台詞回し。吹き出しの多さとセリフの量の多さが特徴的で、読むのにかなり時間がかかる反面、作品の充実度はとても高い。そうしたことも連載初期からの圧倒的な高評価につながりました。

 

 もちろんきらら系ならではのキャラクターの個性とかわいさは健在。へっぽこ魔族のシャミ子、真面目な反面意外に適当な性格をしてるところも魅力の魔法少女・桃、シャミ子のご先祖様で珍妙な邪神像に封じられた魔族のリリス、やがて登場するもうひとりの魔法少女・ミカン、シャミ子がバイトをする喫茶店のオーナーとそこのウエイトレスの狐少女リコと、巻を重ねるごとに増える個性派キャラクターと広がる関係性も魅力。アニメでもどこまでやるか期待が高まります。

 

 今のところ、アニメの具体的な情報はまだ何も出てませんが、告知の時期からして放送開始は夏か秋あたりでしょうか。現在久しぶりにきらら原作アニメが途絶えて、やや寂しい思いをしている最中ですが、これはそんな状況を払拭するに十分な本命中の本命。来るべき放送開始を楽しみに待ちたいと思います!

きららキャラットの3号連続重大発表の予想をしてみる。

kenkyukan2019-01-24

先月号のきららキャラットの誌面で発表された「3号連続重大発表」。これには読者の間で大きな反応があったようですが、いよいよ最初の発表が行われる今月号の発売を前にして、その予想をしてみたいと思います。ちなみに、マンガ雑誌の「重大発表」というと、そのほとんどはアニメ化だったりします。今回のキャラットもその可能性はかなり高いと思いますが、今季きららアニメが久しぶりに途切れてしまったこともあって、次のアニメ化を待望する声は大きいと思います。では、もしアニメ化だったとして肝心の作品は何なのか。

 まず、真っ先に挙げられる最大の本命としては、「まちカドまぞく」(伊藤いずも)は絶対に外せないところです。魔族と魔法少女たちの間の絶妙な関係性、キレのいい楽しいギャグコメディ、描き込まれた作画に密度の濃い会話と、連載開始以来ずっと次期最有力候補として絶大な評価を受けてきました。4コマ読者有志の間で開催される投票企画「4コマオブザイヤー」では、毎年1位に入るのがもはや定番になっています。アニメ化もまさに読者待望の展開であり、3号連続の発表のひとつには絶対に入っていてほしいですね。

 次いで個人的な期待作としては、「恋する小惑星」(Quro)も是非とも入ってほしいところです。地球物理学と天文学の双方を包括する学問「地学」をフィーチャーしたテーマは、自分の知的興味にぴたりとはまってますし、「小惑星を見つける」という幼い頃の夢に向かって進むストーリーにも大いに惹かれます。筑波の宇宙センターや地質標本館を訪問する聖地巡礼的な魅力もありますし、是非ともアニメ化でより多くの人にこの作品を知ってほしいと思うのです。

 さらにもうひとつ、「おちこぼれフルーツタルト」(浜弓場双)もアニメ化が待たれる有力候補です。「ハナヤマタ」の浜弓場双さんの新作はアイドルもの。ハナヤマタからシリアス要素をほぼなくしてギャグとエロコメディに特化した、底抜けに楽しいアイドルものになっています。これも連載初期の頃からずっと人気で、そろそろアニメ化の話が来てもいい頃です。

 これらが新作での有力候補ですが、すでにアニメ化された作品や長期連載からはどうか。「キルミーベイベー」「Aチャンネル」「NEW GAME!」「ブレンド・S」 など、再アニメ化が待たれる人気作品は数多い。キルミーベイベーのアニメ化がもし決まったら超絶的な話題を集めそうです(笑)。あるいはいまだAチャンネルの2期を期待するファンも多いようで、その根強い人気も心強い限り。
 それともうひとつ、「はるみねーしょん」(大沖)のアニメ化を期待する声も大きいようです。2008年から続く長期連載で、カルト的な人気を誇る大沖さんの代表作。昨今のきらら作品とは作風の異なる異色作とも言えますが、ゆえに今これが再注目されるのも面白いと思いますね。

教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?

kenkyukan2019-01-17

 MF文庫Jメディアファクトリー)の次の期待の新作として、コミックアライブでコミカライズも始まっている「教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?」を一押ししたいと思います。原作小説の作者は、『変態王子と笑わない猫。』の作者でアニメ「クオリディアコード」や「ガーリッシュナンバー」の脚本も担当したさがら総。とある街(調布市)の進学塾を舞台にした教師と教え子のラブコメといった作品ですが、その内容は意外なところもあって、コミカライズで読んで一気に注目することになりました。

 物語の主人公は、27歳の進学塾講師・天神(てんじん)。かつては熱血講師だったようですが、とある出来事をきっかけに半ばやる気をなくし、今は日々しんどい思いをしつつなんとか仕事をこなしている状態です。そんな彼が、あることをきっかけに中学三年生の教え子に半ば脅迫され、放課後の夜に強制的に課外授業に付き合わされることになる。まさにタイトルどおりの作品になっています。

 これだけならライトノベルでよく見られるラブコメ作品と言えますが、しかし実際の内容は決してそれだけではなく、むしろ主人公の講師としての仕事にスポットが当たっている点に注目しました。むしろ、主人公が同僚である講師陣と絡む話も多いです。

 教員免許が必要な学校の先生と違い、塾の講師には特に資格は必要としないらしいですが、しかし生徒に勉強を教える仕事の煩雑さとしんどさはさほど変わらないようです。毎日の講義に加えてテストの用意と採点、次のカリキュラムの準備、さらには授業後の補習(この作品では「質問教室」という名前)や学校が休みの間の講義合宿、果ては子供たちのお見送りまで、その仕事は尽きることがない。さらには周囲の他塾との競争や成果を理由に無理を強いる上司の存在など、そういったブラックな職場の事情がかなり詳細に描かれています。原作者のさがらさんがそうした経験があるのか、あるいは何か思うところがあって調べたのか分かりませんが、いずれにせよ面白い切り口の話だと思いました。講師たちが集まって次の仕事の相談をしたり愚痴を言い合ったりするシーンが、この作品のひとつの見せ場ではないかとも思えます。

 それともうひとつ、主人公の天神を脅迫(?)する中学三年生・星花が、ライトノベルの執筆に本気で取り組んでいるというもうひとつの要素もあります。塾ではトップクラスの成績優秀な生徒ながら、重厚長大なファンタジー戦記の執筆に取り組み、その添削指導に国語教師の主人公が付き合わされることになります。ライトノベルの作家が主役の作品も、今では枚挙に暇がないですが、これはそのライトノベルの「作家志望者の指導」という方面から描かれるところも、興味深いポイントだと思います。

 もちろん、タイトルどおりの年の差ラブコメディとして見ても面白い。大人の講師である主人公の天神が、補習授業で小中学生の女の子たちの面倒をみてやるシーンは、なんとなく「りゅうおうのおしごと!」を思い出すところがありますね。原作小説の1巻では、白鳥士郎が熱い作品解説を寄せていたりします(笑)。

 ここ最近のアライブのコミカライズの中でも、当初からこれはと注目するものを感じましたし、なにげに次の最大の期待作ではないかとも思い始めています。今月のアライブの表紙でも、リゼロとよう実という人気アニメ化勢と共に中央に配置される抜擢ぶり。かつてリゼロがコミカライズの良作を経てアニメで大ヒットしたように、次はこれが来るのではないかと期待しています。