教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?

kenkyukan2019-01-17

 MF文庫Jメディアファクトリー)の次の期待の新作として、コミックアライブでコミカライズも始まっている「教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?」を一押ししたいと思います。原作小説の作者は、『変態王子と笑わない猫。』の作者でアニメ「クオリディアコード」や「ガーリッシュナンバー」の脚本も担当したさがら総。とある街(調布市)の進学塾を舞台にした教師と教え子のラブコメといった作品ですが、その内容は意外なところもあって、コミカライズで読んで一気に注目することになりました。

 物語の主人公は、27歳の進学塾講師・天神(てんじん)。かつては熱血講師だったようですが、とある出来事をきっかけに半ばやる気をなくし、今は日々しんどい思いをしつつなんとか仕事をこなしている状態です。そんな彼が、あることをきっかけに中学三年生の教え子に半ば脅迫され、放課後の夜に強制的に課外授業に付き合わされることになる。まさにタイトルどおりの作品になっています。

 これだけならライトノベルでよく見られるラブコメ作品と言えますが、しかし実際の内容は決してそれだけではなく、むしろ主人公の講師としての仕事にスポットが当たっている点に注目しました。むしろ、主人公が同僚である講師陣と絡む話も多いです。

 教員免許が必要な学校の先生と違い、塾の講師には特に資格は必要としないらしいですが、しかし生徒に勉強を教える仕事の煩雑さとしんどさはさほど変わらないようです。毎日の講義に加えてテストの用意と採点、次のカリキュラムの準備、さらには授業後の補習(この作品では「質問教室」という名前)や学校が休みの間の講義合宿、果ては子供たちのお見送りまで、その仕事は尽きることがない。さらには周囲の他塾との競争や成果を理由に無理を強いる上司の存在など、そういったブラックな職場の事情がかなり詳細に描かれています。原作者のさがらさんがそうした経験があるのか、あるいは何か思うところがあって調べたのか分かりませんが、いずれにせよ面白い切り口の話だと思いました。講師たちが集まって次の仕事の相談をしたり愚痴を言い合ったりするシーンが、この作品のひとつの見せ場ではないかとも思えます。

 それともうひとつ、主人公の天神を脅迫(?)する中学三年生・星花が、ライトノベルの執筆に本気で取り組んでいるというもうひとつの要素もあります。塾ではトップクラスの成績優秀な生徒ながら、重厚長大なファンタジー戦記の執筆に取り組み、その添削指導に国語教師の主人公が付き合わされることになります。ライトノベルの作家が主役の作品も、今では枚挙に暇がないですが、これはそのライトノベルの「作家志望者の指導」という方面から描かれるところも、興味深いポイントだと思います。

 もちろん、タイトルどおりの年の差ラブコメディとして見ても面白い。大人の講師である主人公の天神が、補習授業で小中学生の女の子たちの面倒をみてやるシーンは、なんとなく「りゅうおうのおしごと!」を思い出すところがありますね。原作小説の1巻では、白鳥士郎が熱い作品解説を寄せていたりします(笑)。

 ここ最近のアライブのコミカライズの中でも、当初からこれはと注目するものを感じましたし、なにげに次の最大の期待作ではないかとも思い始めています。今月のアライブの表紙でも、リゼロとよう実という人気アニメ化勢と共に中央に配置される抜擢ぶり。かつてリゼロがコミカライズの良作を経てアニメで大ヒットしたように、次はこれが来るのではないかと期待しています。