陰キャならロックをやれ!!!!「ぼっち・ざ・ろっく!」

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 先月のきらら新刊より、ちょっと前より話題になっていた「ぼっち・ざ・ろっく!」(はまじあき)の1巻が発売されました。発売前の公式からの告知で、「陰キャならロックをやれ!!!!」という意外性あるキャッチコピーで注目を浴びたこの作品、内容的にもまさにそのとおりのマンガになっていて非常におすすめです。

 

 「陰キャ」とは、要するに性格の暗いいけてない人を指す言葉で、非リア充やオタク、ぼっちなどと言った言葉とも近い類の呼び名。タイトルにもなっているように、主人公の後藤ひとりは「ぼっち」でもあり、ネガティブなオタク的性格を満載したようなキャラクターになっています。そんな「ぼっち」ちゃんがロックをやるというタイトルからして、ダメな陰キャでぼっちでオタクなキャラクターが、無理にロックに挑戦しようとしてひどい目に遭う話なのかと思ってしまいますが、ほぼまったくそのとおりの話なので安心してください。

 

 主人公のぼっちちゃんは、かつて中学時代からネガティブな暗い性格でした。しかし、ある日お父さんがやっていたギターに興味を持ち、これで自分を変えようと毎日6時間も練習し続け、ネットの配信では一定以上の評価をもらえるまでになりました。しかし、そこまでやってもリアルでは人見知りがあだとなって、音楽活動はおろか結局友達はひとりも出来ずに中学を卒業。心機一転して音楽仲間を見つけようとした高校でも、やはり浮いた存在になってしまって友達はひとりもできずにはや1カ月。しかし、ついにそこでバンドでドラムをやっているという虹夏という女の子に声をかけられ、ついにバンド活動を始めることになるのです。

 

 当初は臨時のサポートとして入ったぼっちちゃんでしたが、やがて正式なバンドメンバーとして迎えられ、「結束バンド」と名づけられたそのバンドで、日々活動することになります。しかし、陰キャでコミュ障が過ぎるぼっちにはすべてが苦痛。資金稼ぎのために虹夏の姉が運営するライブハウスのバイトをやることになっても、ろくにドリンクを注ぐことも出来ない。普通の(?)音楽作品で、今までダメでぱっとしなかった主人公やキャラクターが、音楽に挑戦することで自分を変える、成長するという話なら、割とよくある定番のストーリーかもしれませんが、しかしこのマンガはまさにその逆。コミュ障がすぎるぼっちちゃんが、人前での活動でしんどい目に遭い続ける様が、毎回のようにひたすら描かれています。

 

 しかし、そんなぼっちちゃんでも、必死に活動を続けるうちに、ついには成長することもありました。個性的なバンドメンバーたちと共に、自分も所属する結束バンドを最高のものにする。そんな新たに出来た目標に向けて懸命に頑張る。1巻最後に見せた必死の演奏シーンには大いに惹かれるものがありました。

 

 作者のはまじあきさんは、ひとつ前に「きらりブックス迷走中!」という書店を舞台にしたマンガの連載を行っていたのですが、「前作が終わったあと突然バンドにはまった」らしく、それがこの連載のきっかけのようです。しかし、それでいきなりここまで尖った作品を出してくるとは思わなかった。このマンガの主人公のぼっちちゃんのネガティブぶりは、あのかおす先生(こみっくがーるず)に匹敵するものがありますね。最近ではこういうオタクやコミュ障や引きこもりのようなネガティブなキャラクターをよく見かけますが、またひとり最強のぼっちキャラクターが爆誕してしまった。それも音楽活動、バンド活動という、本来ならそれとは正反対のリア充的な活動を描く作品において、そういうキャラクターをぶち込んできたのが非常に衝撃的ですね(笑)。あの「けいおん!」の連載スタートからすでに10年。きらら音楽4コマはついにここまで進化した!