博多豚骨ラーメンズ!

kenkyukan2018-02-22

 このサイトは一応スクエニのマンガが中心のはずなのですが、最近は他社の作品に半ば興味が移っており、またスクエニも一時期の盛り上がりからは少し遠ざかった印象があり、アニメ化作品も一時期に比べれば減っていて少々寂しいところです。今季もスクエニ純正の原作アニメはないのですが、ただ他社のコミカライズでスクエニ雑誌で連載している作品がふたつあります。ヤングガンガンで連載中の「りゅうおうのおしごと!」とGファンタジーで連載中の「博多豚骨ラーメンズ」です。

 「博多豚骨ラーメンズ」は、KADOKAWAメディアワークス文庫で2014年から刊行されている小説。現在8巻まで巻を重ねています。Gファンタジーでのコミカライズは2016年から始まり、最初のエピソードは全2巻で終了。現在はその後の2番目のエピソードを「第2幕」と称して連載中となっています。エピソードごとに巻数がリセットされる形式は、以前に同誌でコミカライズされた「デュラララ!!」のスタイルを踏襲しているのかもしれません。

 タイトルからするとまるでグルメ小説のようにも思ってしまいますが、実際には博多の裏社会で活動する殺し屋たちの活躍を描いた物語で、多くのキャラクターたちの動向が同時進行で進むいわゆる「群像劇」のスタイルを呈しています。これらの要素は、先ほどタイトルを挙げた「デュラララ!!」とも共通したところがあり、同じメディアワークスの作品ということで、過去にはコラボレーション企画が組まれたこともありました。

 アニメでもそのスタイルをうまく構成しており、各キャラクターたちの動向を見ているだけで楽しい。中心となっているのは博多で表向きは探偵を営んでいる殺し屋の馬場と、妹を殺された復讐のために活動する殺し屋・林のふたりですが、そこに東京の殺人請負会社から左遷された気弱な元高校野球の投手・斉藤、ネットカフェを本拠地に情報屋を営む榎田、復讐を請け負う稼業を営む「復讐屋」のジローとその助手ミサキ、彼の知人である「拷問師」のホセ、美容クリニックの院長だが裏稼業は死体の処理を行う「死体屋」の佐伯、中州のクラブのホストだが本業はスリの大和(やまと)、さらには刑事でありながら殺し屋とも通じている重松、ラーメン屋(屋台)の店主ながら殺し屋の仲介役を務める剛田と、まさに個性派揃い。そんな彼らの独自の活動がやがて結び付いていき、ついにはみなが馬場と林に協力する形となりひとつの事件の解決へとつながる。この最初のエピソードの構成の巧みさには思わず引き込まれてしまいました。

 加えて、現実の博多の街を詳細に描いているのも大きなポイントで、アニメでは天神や中洲、福岡駅前など博多の有名どころのカットが頻繁に登場、その街並みの詳細な再現に大きく力を入れていて、これも大きな魅力になっています。最近では聖地巡礼の定着からか、具体的な現実の舞台を設定してその背景を意識して描くアニメが増えているようですが、この「博多豚骨ラーメンズ」の力の入れ方は特にすごいと思いました。
 また、グルメ作品ではありませんが、「豚骨ラーメンズ」のタイトルどおり、要所でラーメンを食べるシーンも登場。上で述べた中州の屋台は多くのキャラクターたちが訪れる場所でもあり、彼らにとって情報の収集場所であると同時にひとときの憩いの場にもなっているようです。

 殺し屋たちの活動ということで頻繁に人が殺され、あるいは直接的な暴力シーンや犯罪の描写も幾度も登場するなど、そこで人を選ぶところはあるかもしれませんが、しかしストーリー自体は非常に面白いと思います。また、裏社会の暗い部分だけでなく、博多の明るい街並みやグルメ、野球などの娯楽要素もバランスよく加味され、そこにも大きな魅力を感じました。アニメで興味を持ったら原作やコミカライズにも触れてみてはどうでしょうか。