クローズアップ現代の「君の名は。」特集について考えた。

kenkyukan2016-11-29

 先日、NHKクローズアップ現代+で「君の名は。」のヒットの謎について考えるという特集があり、もう2ヶ月も経って大ヒットが確定した今ちょっと遅すぎるのでは・・・と思いつつ、それでも興味深く見ることになりました。
 内容は、口コミで盛り上がった単語や観客の年代などのデータ考察、新海監督インタビュー、そして実際に50人程度の観客を招いての鑑賞会と、中々の構成。特に最後の鑑賞会で寄せられた感想が、ヒットの理由を決める大きな決め手になっていました。当初は10代、20代の若者をターゲットに作られた本作ですが、ヒットを受けて30代以上の来場者も増え、とりわけこの上の年代層がどんな感想を抱いたのか、それが大きなポイントであると。
 しかし、そこから出た結論は、個人的にはやや意外なものでした。作中に出てきた「結び」の概念、神様が人と人とを結び付けるという設定に注目し、つまり人と人との繋がりに多くの人が惹かれたのではないかと言うのです。年配の方の感想でも、自分のかつての体験と重ね合わせて心動かされる人が多かったと、そういう話になっていました。

 自分としては、確かにそうした要素はあるものの、しかしそれが最大の要因とまで言えるか?というとちょっと疑問に思ってしまいました。むしろ、この「君の名は。」という作品は、元々若い世代をターゲットに作られており、あるいは以前からの新海監督の創作を受け継いだところもあって、すなわちファンタジー的、あるいはオタク的とも言える要素もふんだんに盛り込まれているわけです。上の年代層からの反応としては、そうしたことに対する言及が出ないのはちょっと意外で、むしろ「今の若い世代にはこういう作品が受けるのか」とか、素直にそういう感想があってもよかったと思うのです。

 例えば、オタク的な要素としては、序盤にヒロインが扮することになる巫女を巡る話や、あるいは田中将賀によるキャラクターデザインもそうでしょう。あるいは男の子と女の子の入れ替わりというストーリーの根幹自体もそうです。地方の伝承や彗星を絡めたファンタジー・SF要素も際立ちます。あるいはより広く若い世代向けの要素としては、作中で4曲も流れるRADWIMPSの楽曲などもより直接的です。こうした今の時代ならではの作品作りに対する言及が、是非とも上の世代から出てきてほしかった。

 確かに、自分の体験と重ねるというのも、それはそれで優れた観賞方法かもしれませんが、しかし逆に言えば、それでは結局自分の世界から抜け出せてないとも考えられるわけです。単に人間の絆に惹かれたといういい話で終わっている可能性もある。むしろ、自分の知らなかったタイプの要素に触れる感想の方が、今の時代の新しい作品を理解し楽しむということに繋がっていいと思うのです。わたしとしては、そういう理解をする人が1人でも増えることを期待したいと思ってい ます。