「Why did I enter the Art Course?」

kenkyukan2017-08-30

 「ご注文はうさぎですか?」「きんいろモザイク」「ステラのまほう」とヒット作の続くきららMAXから、さらなる注目作品として「どうして私が美術科に!?」(相崎うたう)を紹介したいと思います。まだ1巻が出て間もない今のうちにこそおすすめしておきたい。
 「どうして私が美術科に!?」は、タイトルどおり美術科のある高校が舞台のコメディ4コマ。美術部や美術科を舞台にした作品は、これまでもいくつも出ており、きらら4コマでも「ひだまりスケッチ」「GA 芸術科アートデザインクラス」という初期の頃からの名作はよく知られていると思います。この「どうびじゅ」こと「どうして私が美術科に!?」も、まさにそうした作品のひとつとも言えます。が、ちょっと違うのは、主人公の桃音(ももね)が、手違いから高校の美術科に入ってしまい、当初は美術とはまったく縁のなかった生徒であるということ。

 当初は間違えて美術科に入った自分を恥ずかしがり、美術のことを何も知らないことに不安と怖さでいっぱいだった彼女ですが、課題が出来ずに取り組んでいた居残りの場で個性的な生徒たちと出会い、彼女たちと一緒に課題に取り組むことで少しずつ美術に対して前向きになっていく。美術に対する知識や技術どころか興味もなかった場所からの、いわば「ゼロからの取り組み」の過程が描かれていることが、とても面白いと思いました。

 一方で、個性的過ぎる生徒たちによる、かなりぶっ飛んだネタのコメディがふんだんに描かれているのも楽しい。一見してクールで目つき悪くて怖そうに見えるけど、実は普段はローテンションでしょっちゅう眠っている黄奈子(きなこ)、面白いこと・食べること・動くことが好きなムードメーカー蒼(あおい)、美術には真面目に見えてどこかずれた関西弁少女・紫苑(しおん)、そして美術室のだるまに入って寝泊りしたり妙な口調でしゃべったりと最大の個性派とも言える生徒・翠玉(すいぎょく)と、ひとりひとりとても面白い。課題への取り組みや日常の生活でもどこかずれていたり、そのドタバタ感がとても楽しい。

 それと、主人公の桃音と彼女が最初に出会った黄奈子、このふたりの間に見られるほのかな依存関係にとても惹かれますね。間違えて美術科に入って不安に駆られていた桃音に対して、黄奈子も最初は好きで美術科に入ったわけではないという事情を抱えており、桃音に出会ったことで少しずつ自分も美術に対する向き合い方が変わっていく。桃音の方もそんな黄奈子の思いを知って惹かれていく。そんな微細な関係がとてもいい。

 キャラクターがポップでかわいらしく、カラーイラストも鮮やかに見栄えがするのもいいですね。好調のきららMAXでも「2巻の壁」で早期終了する作品が相次ぐ中、まだ早いうちにこの作品をおすすめしておきたいと思います。すなわちコミックス1巻を買ってくださいお願いします。