終末旅行の終わり。

kenkyukan2018-01-23

 先日、秋よりテレビアニメも好評放送中だった「少女終末旅行」の原作が終了しました。数カ月前から展開が急激に佳境に差し掛かっていて、「もうじき最終回なのではないか」と読者の間ではもっぱらの噂でしたが、予想通りの終了。「終わるまでは終わらないよ」がキャッチフレーズだった本作にもいずれ終わりは来る。アニメが非常な好評だったこともあって、Twitterでの最終回告知には多数の反応が寄せられ、ウェブサイト(くらげバンチ)の連載ページには多数のアクセスが殺到し、しばらく繋がりにくいという一幕もありました。
 終末旅行の最後。それはふたりが都市の最上層へと到達し、そこで目にした景色が最後の光景となる形で終わっています。その結末は、およそ自分が予想していたほぼその通りのものでした。
 「少女終末旅行」の舞台は、上下に幾重にも多層となった構造の巨大機械都市。ほとんどの生物が死に絶え廃墟となっていますが、しかし比較的新しい時期に作られた上層ならば、まだ都市が機能しているかもしれず、生き残っている人も大勢いるかもしれない。そんな一縷の望みにかけてひたすら最上層を目指していった彼女たちですが、どこまで登っても生きているものはほとんどおらず、ただ巨大な廃墟が続いているのみ。そんな状況で最上層まで行って一体そこに何があるというのか。それは誰もが予想できる結末ではなかったかと思います。

 むしろ、その最後の結末よりも、そこに至るここ数カ月の展開にも見るべきものがあったと思います。頼れる移動手段だったケッテンクラートがついに修復不能となり、バラバラに分解され使えるパーツのみを持っての過酷な徒歩移動。食糧も次第に少なくなりほとんどなくなり、気候も冬が来たのか一気に寒冷化し、疲労困憊するまで歩いて眠り寒さで目を覚ます日々。暖を取るためにあらゆるものを燃やし、ついにはチトが書いてきた日記まで燃やすシーンはことさら堪えました。

 すなわち、持てるあらゆるリソースをかなぐり捨てて、すべてを前へ進むエネルギーへと変えてかろうじて旅を続ける絶望的な日々。最終回のラストシーンを見て「これから先もまた旅を続けていくのではないか」という意見もありましたが、自分としてはこの最終回前の展開を見るに、もはや最上層に辿り着いた時点で体力も資産も何も残ってはおらず、もうここで眠りについて終了なのではないかと思わざるを得ませんでした。

 むしろ、わずかな希望を感じたのは、一足先に終了を迎えたアニメのエンディングだったかもしれません。アニメは原作の最後までは辿り着かず、中盤のエピソードで終了を迎えたのですが、その終わり方もまた最高でした。連載中盤のエピソード「月光」でのセリフに着想を得たと思われる「最後は月に行こう」と明るく話して終わるラストシーン。最上層には何もなかったけど、月まで昇って昇ってついに辿り着いたら今度こそ救いがあるかもしれない。アニメがそんな希望を抱かせる終わり方で本当に良かったと思うのです。