・競技ゲームにおけるデジタル環境の優位性について(1)。

kenkyukan2018-01-16

 先日、あのマジックザギャザリング(MTG)における禁止改定(禁止カードの制定・解除)の発表があり、思った以上に多数の重要なカードが禁止にされて、プレイヤーの間ではその話題でもちきりになりました。実は、このところ1年ほど前から、MTGはこのように禁止カードを頻繁に多数出すようになり、以前の安定した運営方針とは一線を画するようになっています。

 この方針の変更に対しては賛否様々な意見が出ていますが、その中にひとつ目を引くものがありました。それは、「MTGがここまで禁止カードを頻繁に多数出すようになったのは、ひとつにはデジタルTCGの影響を受けてるのではないか」という見方です。

 デジタルTCGとは、純粋にPCやスマートフォン上だけでプレイを行うTCGトレーディングカードゲーム)のこと。MTG遊戯王など従来のカードゲームにもオンライン版はありますが、このデジタルTCGの場合、最初からオンラインのデータのみで「リアルの紙のカードが一切存在しない」ところで一線を画しています。2013年にリリースされた「ハースストーン」のヒットがそのきっかけで、日本では「シャドウバース」や「ドラクエライバルズ」などの後発の類似ゲームも非常な盛況を博しています。

 そして、こうしたデジタル環境のみのゲームの場合、アップデートによるルールの変更やバランスの調整がずっと容易です。禁止カードまで出さなくとも、一部のカードの強さ(パラメータ)を書き換えるだけでもバランス調整が出来る。こうしたデジタルでの利点から、従来のカードゲームに比べて細かい変更が頻繁にされるのが特徴で、それもまた大きな強みになっているようです。

 デジタルの利点はこれだけではありません。以前から他にも紙のカードよりも便利な点が多数あり、それがそのままデジタルTCGの圧倒的なヒットに繋がっているようなのです。

 まず、オンラインで対戦相手がいつでもどこでもいるところが大きすぎます。こうしたTCGトレーディングカードゲーム)の場合、ある程度多数のプレイヤーがいて、様々なデッキと対戦できる環境がないと成立しません。いくらゲームシステムが素晴らしくても、肝心のプレイヤーがいなければ成立しない。特に人口の少ない地方ではこれは大問題ですが、オンラインでいつでも全国・全世界のプレイヤーと繋がっているなら問題ないわけです。

 さらには、肝心のゲームのプレイでも利点は大きい。今まで人間が手動でやっていた面倒なルールの処理をCPUに任せられる。例えば、MTGでは、熟練したプレイヤー同士の対戦でもライフの数え間違いをすることがよくありますが、コンピュータが数字を管理してくれるならそんな心配はまったくない。多数の細かいルールが折り重なる複雑な場面でも、コンピュータなら確実にひとつひとつ全部処理してくれます。むしろ、こうしたゲームはデジタル環境でやる方が妥当で、人間が全部手動で管理することに限界を感じることも多いくらいです。

 こうした様々な利点から、以前からデジタルでのTCGに有利な点が大きすぎるなとは感じていたのですが、今回の禁止改定の動きによって、さらにその見方を強めることになりました。そして、これはMTGのようなカードゲームだけでなく、およそ他の多くの競技ゲームにおいても言えているのではないかと思えるのです。