「怠惰への賛歌」─うまる・ガヴ・ゆるゆり・・・動画工房ドロップア

kenkyukan2017-12-20

 今季のアニメからはあのうまること「干物妹!うまるちゃん」の2期も面白すぎるんですが、最近ではこういうぐーたらライフを推奨する作品が、アニメでも増えているようでうれしい限りです。個人的には、このうまるを制作している動画工房の少し前の作品「ガヴリールドロップアウト」とも共通したものを感じます。
 うまるの主人公うまる(土間うまる)は、普段では品行方正成績優秀な生徒で通っているようですが、自分の家の部屋では毎日のように夜更かししてコーラとポテチ食べて飲みまくりゲーム三昧の日々を送り、あるいは外でもゲームセンターにしょっちゅう通う凄腕のゲーマーともなっています。そして、そんなぐーたらな生活を、作中でほぼ全肯定しているところに惹かれました。

 これは、今年の初めにやはり動画工房の手でアニメ化された「ガヴリールドロップアウト」の主人公・ガヴリール(ガヴ)とも重なっているところがあり、彼女はかつて天界では非常に優秀な天使でしたが、地上に降りてからしばらくして触れたネットゲームに思い切りはまってしまい、部屋は乱れ一日中ネットゲームに興じ、性格まで堕落してしまうという設定になっています。そして、こちらでもその姿は必ずしも悪いものとしては描かれておらず、そんな「ドロップアウト」して生きる姿を楽しく描こうとするコンセプトが見て取れます。

 作品自体の方向性はかなり変わりますが、かつて動画工房によってアニメ化された「ゆるゆり」にも一部通じるところがあるかもしれません。中学生の主人公たちが茶道部の部室を勝手に占拠し、毎日放課後は思い切り遊んで過ごしているという設定で、厳しい部活に日々励む学園ものの作品とは正反対の姿がそこにありました。こうしたゆるい部活の姿を描く作品は、近年他にも多数目立つようになりましたが、ゆるゆりもその先駆けのひとつとなったような気がします。

 動画工房からは外れますが、今季のアニメからひとつ「ネト充のススメ」も取り上げておきたいと思います。30歳にして会社を辞めてニートになってネットゲームにはまる生活を始めた女性の話で、同じくネットゲームで知り合った男性と付き合う大人の恋愛ものとして大変面白かった。しかしこれ、どうも予定では最後はまた社会に戻る話だったらしいのです。しかし、脚本担当の一声で変更になったとのこと。「また社畜に戻るの??って。そんな偽善テーマは今時駄目。折角幸せになったんだから、そのまま幸せなままで居ろ。」と。

 これも「今時そんなテーマはダメ」っていうところが実に今時らしいと思いました。ようやく「働かないことが幸福である」ということが当たり前のこととして分かられてきたようで、それがアニメ作品でもこうして広く見られるようになったのは、大変良い傾向だと思っています。「幸福へと至る道は労働の組織的な縮小のうちにある」(バートランド・ラッセル「怠惰への賛歌」1932)