あの「TWIN SIGNAL」がついに新作始動!(2)

kenkyukan2018-04-27

 前回の日記では「TWIN SIGNAL」の連載の概略を記しました。今回は、より具体的な内容、とりわけ特徴的な設定やテーマについて少し突っ込んで書いてみたいと思います。

 もともとコメディ要素強めの作品として始まったシグナルでしたが、のちに本格的なSFへとシフトすることで、改めて詳しい設定が書き加えられる形になりました。最新鋭ロボット・シグナルのボディが「MIRA」という可変金属で出来ているという設定は、確か当初からあったと思うのですが、中盤以降ここにも極めて具体的な設定が追加されることになっています。「ロボットの排熱は髪を通して行う(ゆえにみな髪が一様に長い)」など、人間型ロボットの身体構造に関わる設定はとりわけ具体的で、作者が非常にこだわっていたことが窺えます。

 また、シグナルのロボットたちは、現実でロボットのボディを持つだけでなく、電脳空間でもプログラムとして活動できるという設定で、その空間で普段から活動したり侵入者とバトルを行うといったストーリーにも惹かれるものがありました。中には、そもそも現実空間で身体を持たず、電脳空間でプログラムとしてのみ存在するロボット(エモーション)や、電脳空間では人型だが現実では鳥型のボディといった、現実と仮想空間で異なる外見を持つロボット(コード)も登場し、90年代半ばにしてこうした設定も実に先進的なものがありました。

 さらに、最も取り上げたい要素として、ロボットの存在意義に関わる一貫したテーマがあります。それは、主人公たちに敵対する冷酷なロボット工学博士・クエーサーの思想として登場するもので、「ロボットは、人間には出来ない人間を超える能力を求めて作られる。しかし、いざ本当に人間を超える存在が出来上がってしまうと、人間はそれに恐怖を感じるようになり、人間にとって大きな脅威となる(ゆえに破壊しなければならない)」というもの。これも90年代半ばの作品にしては、非常に鋭く先進的な思想だったと思います。

 折りしも、近年はAIの進化が大きくクローズアップされ、AIの超越的な計算能力によって人間には想像できないような決定が下され、将棋などのゲームにおいても人間では到底敵わないような強さをまざまざと見せ付けられるようになりました。ここにおいて、AIに対して何か漠然とした不安感を抱く人も、少なからずいるのではないでしょうか。そんな今の時代において、改めて90年代の「TWIN SIGNAL」の長い連載において、最後まで一貫して打ち出されたこのテーマを思い出してしまうのです。

 今回の続編企画に際しての「近年のAIやロボットの進化を見て触発された」という作者の大清水さんのコメントを見ても、この「TWIN SIGNAL」には、まさに今ならではの現代性があると思うのです。このテーマが現代においてどんな風に描かれるのか、今回の続編ではそれも楽しみに待ちたいと思います。