「広島さん、友達になってください」

kenkyukan2018-07-25

 今回は、芳文社まんがホーム連載「広島さん、友達になってください」(こみちまい)を取り上げたいと思います。もともとはまんがタイムファミリーの連載でしたが、同誌の先日の休刊に伴い移籍した形となってます。いずれも、このサイトでは珍しくきらら系でない芳文社の4コマ雑誌です。きららより読者年齢は高く大人の読者が中心の、いわゆるファミリー4コマということになるでしょうか。

 「広島さん」のタイトルどおり、広島で暮らす女子高生とその友達、家族の日常を描くほのぼの日常系4コマです。主人公のキミは、自由な父親に引っ張られる形で引っ越しを繰り返し、行く先々で友達が出来なかったこともあって思い切り人見知りな性格。しかし、ついにこの広島で長く定住することになり、今度こそこの土地に馴染んで友達を作っていこうと奮闘することになります。
 キミは、広島に受け入れられようと様々な知識を本で仕入れてきますが、やはりその性格が災いして中々溶け込むことが出来ない。しかし、そんな彼女の元に地元広島の女子高生・紅と真理が話しかけてきて、明るい性格の彼女たちに半ば引っ張られる形で、少しずつこの広島の生活に馴染んでいくことになります。

 事前に知識を仕入れているとはいえ、やはり初めて直に接する広島の文化はひとつひとつ新鮮で驚きの日々。「ぶち」「じゃけえ」「たいぎい」など独特の言い回しに満ちた広島弁を皮切りに、お好み焼きや牡蠣(カキ)、もみじまんじゅうに代表される地元グルメの数々、大鳥居や千条閣、水族館などの名所が満載の宮島、そしてなんといっても広島と言えば広島カープ! 時には真面目に平和公園の資料館(原爆資料館)や爆心地にも赴き、かつての歴史に向き合うエピソードも盛り込まれています。

 面白いのは、広島は初めてながら事前に知識を仕入れてきたキミの方が、地元民である紅や真理よりも時に広島に詳しい様を見せること。考えてみると、広島の地元民がそう頻繁に宮島に観光に行くことはないですし、土産物であるもみじまんじゅうを食べることもあまりない(お好み焼きは食うけど)。細かい歴史に関してもキミの方が詳しかったり、「地元民だからといって必ずしも地元に詳しいわけではない」という、あるあるな感覚が随所で見られて面白いです。

 もうひとつ、タイトルの「広島さん」は、主人公のキミが初めて暮らす広島の地を敬愛を込めて呼んでいる呼び名で、誰か特定の人物を指しているわけではありません。そんな風に、他からの移住者ながらこの土地に敬意を払って馴染もうとするキミと、それをおおらかに受け入れる同級生ら広島の人々の温かな交流が随所に見られる、ハートフルなコメディになっていると思います。非きららの4コマということで、普段そちらを読んでいる人にはやや縁遠い作品になるかもしれませんが、興味を持たれたら是非一度読んでみてほしいと思いますね。