「刻の大地」連載再開決定に寄せて。

kenkyukan2017-09-20

 先日、かつてのガンガンの人気連載「刻の大地」の連載再開の話が、作者の夜麻みゆきさんから告知され、その資金を集めるためのクラウドファンディング企画が立ち上がるという大きなニュースがありました。これは非常に大きな反響を呼び、8月31日に募集期間が終了したクラウドファンディングも、目標額の800万円の2倍の1600万円以上が集まるという結果となり、改めてかつての人気の高さと、今でも支持する根強いファンの多さを再確認することになりました。最近再アニメ化された魔法陣グルグル最遊記もそうですが、やはり昔のガンガン、エニックスの作品の潜在的な人気は本当に高いです。

 わたし自身も、今回の連載再開の話はとてもうれしかったのですが、同時に本当に意外でもありました。かつて作者自身の口から「もう描くことは出来ない」といった発言を聞いた記憶もあり、また連載終盤における中断の経緯からしても、再開の可能性は極めて低いと感じていたのです。

 この「刻の大地」、これまで散々取り上げてきた「エニックスお家騒動」による連載中断ではありません。いや、確かにその影響もあったと思います。お家騒動に至る路線変更において、ガンガンでトップクラスの人気を誇っていた「刻の大地」は、ガンガンの誌面に合わないという理由だけでGファンタジーへと移籍させられることになりました。Gファンタジー移籍後の内容は、明らかに精細を欠いていたところもありましたし、こうした措置が作者になんらかの動揺を与えた可能性は否定できません。

 しかし、中断した本当の理由は、おそらくは作者自身の精神的な理由にあったと思うのです。具体的には、連載中盤以降明らかに休載が多くなり、作画も乱れ、実際にはGファンタジー移籍前から精細を欠き始めたところがありました。そして、連載終盤は明らかに内容的にも調子を崩し、継続が難しい様子も感じられ、そのまま中断してしまったのです。その後の夜麻さんも、「刻の大地」以外の作品の執筆を行うことはありましたが、この作品だけはどうしても描けない様子が感じられ、もう商業で再開の話が出ることもなくなっていたのです。

 これは、他にも当時のエニックスの作家の何人かにも見られた現象で、例えば「まもって守護月天!」の桜野みねねさんも、連載の途中で突然調子を崩し、そのまま連載中断したという経緯があります。こちらも、最近になってついに正式に再開したあたりで共通しています。また、お家騒動でマッグガーデンに移籍した作家が何人も、早い時期に連載を中断して姿を見せなくなったのも、やはり共通したものを感じます。誰もが自分の作品に対する思い入れが強すぎて、何かのきっかけで調子を崩すと継続が難しい。そんな雰囲気も感じられました。

 そんな中で、この「刻の大地」が、連載中断から15年が経過した今になって連載再開の決定が下されたのは、本当に勇気のいる決断だったと思います。クラウドファンディングが成功した後、この10月にもウェブ上で連載が再開されるようで、再開後1話を楽しみに待ちたいと思います。