12年目のARIA。

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 先日、あの「ARIA」の新作制作の告知がなされ、2020年の今になっての展開に驚いてしまいました。最後に劇場公開された新作エピソードを見たのがいつだったかなと思ったのですが、調べてみると2015年。すでに4年以上経っていることに驚く反面、これはまだ4年前だったのかという思いもありました。

 

 なにしろ、原作のコミックの連載が始まったのが2001年。そして連載が終了しアニメもほぼ同時期に終了したのが2008年。もはや作品が続いていた時期よりも、終了してからの時間の方がずっと長くなっていたのです。今ではもうこの作品を未体験の方も増えていると思われますし、改めて作品の紹介も兼ねて、かつての展開を振り返ってみます。

 

 前述のとおり、「ARIA」の連載が始まったのは2001年。最初の掲載誌はエニックスのステンシルでした。当時のタイトルは「AQUA」。作者は天野こずえさんで、これ以前よりエニックスでの活動を長く続けており、すでに人気作家となっていました。これは「浪漫倶楽部」「クレセントノイズ」に続く3作目の連載になりますが、当初からこの作品も人気で、新しい注目作になるかと思われました。


 しかし、連載始まって間もなくしてあの「エニックスお家騒動」が巻き起こってしまい、混乱の中でこの連載も中断を余儀なくされます。その後、しばらくして移籍先となったマッグガーデンコミックブレイド「ARIA」とタイトルを変えて連載を再開したという経緯がありました。お家騒動で中断・休載が相次ぐ当時の連載の中で、騒動を通して数少ない成功作となった貴重な作品でもありました。

 

 肝心の内容ですが、これは未来世界の火星を舞台にしたSFコミックとなるでしょうか。テラフォーミングが進み水に覆われた惑星となった火星。 その火星の水上都市「ネオ・ヴェネツィア」で”ウンディーネ”と呼ばれるゴンドラの漕ぎ手兼水先案内人として働く主人公・水無灯里(あかり)と彼女の友人や先輩たちの活動を描いています。ウンディーネとしての仕事ぶりとそれを通じたキャラクターの成長を描く物語でもありますが、同時に水上未来都市ネオ・ヴェネツィアの未来的で美しい光景や、時間がゆっくりと進む穏やかな日常と時に街角で繰り広げられる素敵なエピソードも丹念に描かれていて、そうした作風は連載初期の頃から大きな反響を集めました。

 

 2005年にはアニメ化され、こちらでも大きな人気を得て2008年の3期まで制作されています。2008年に原作の連載とアニメシリーズが終了した後も長く人気は持続し、最終的には2015年に劇場公開もされた新作OVAの発売まで結び付きました。その後はさすがに新しい動きはなくなっていたのですが、この2020年になって再びの新作告知。今回もまた根強く大きな反響が見られるあたり、その人気は不変だと思いました。

 

 かつての作品は「癒し系」の代表のようにもよく言われていましたが、原作の段階で「未来型ヒーリングコミック」と銘打たれていたように、確かにそうした側面はあったと思います。「ヒーリングコミック」という表現は、穏やかな水上の光景に満ちたこの作品の雰囲気を表すにふさわしいものがありました。また、いわゆる日常系作品として扱われることも多いですが、主人公たちの着実な成長を描くストーリーが中心に据えられていることで、後に出るこのジャンルの作品とはやや異なるニュアンスがあると思っています。それでも、のちのこうした作品の先駆けのひとつとなったことは間違いないところで、今でもかつての名作として挙げる人は多いですね。

 

 今回の新作が、テレビアニメなのか劇場版なのかOVAなのかまだ分かりませんが、いずれにしても今の作画レベルで再現される最先端のビジュアルを見たいような気がします。最初のテレビアニメが放送されたのは2005年。当時からその美しい世界観で話題になりましたが、今見ると一昔前の作画にとどまっているような気もします。できれば、あの美しい世界を今の最高の作画技術でもう一度見てみたい。今からそう期待してしまいますね。