「Dr.STONE」

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 夏アニメからもうひとつ。7月より開始されている「Dr.STONE」のアニメも、期待以上にはまって見続けているところです。ジャンプで連載が始まった時からずっと注目していたのですが、満を持してついにアニメ化。そしてアニメの出来も十分すぎるものがあったのです。

 

 原作が週刊少年ジャンプの連載なので、他の原作アニメより知っている人は多そうですが、それでもアニメから新鮮な感覚で見始めた人は多かったのではないでしょうか。原因不明の人類石化現象でほぼすべての人間が活動を停止し、文明が崩壊してしまった世界が舞台。強靭な精神力で石化中も意識を保ち続けた科学少年・千空が、3700年後の世界でついに復活。原始の時代まで戻ってしまった世界で、かつて得た科学知識をフル動員して人間の文明を一つ一つ取り戻す・・・。冒頭から非常にスケールの大きい話となっています。

 

 今とは異なる世界に現代の常識を持ち込んで奮闘するという点で、ライトノベル異世界ものと共通感を持って見る感想も散見されたのですが、この「Dr.STONE」の場合、実在する科学に強く依拠している点と、その科学の復興に向けた「ものづくり(クラフトワーク)」の楽しさが、とりわけ大きくクローズアップされている点がポイントだと思います。

 

 当初は身ひとつで活動を再開し、石器作りから始めてなんとか衣食住を確保するだけで精一杯だった千空ですが、かつての同級生で心強い仲間・大樹の助けを得て、あるいは奇跡的に邂逅した人間の村の文明レベルに接触することで、文明の復活に向けたものづくりの活動が一気に加速。とりわけ、この人間の村(石神村)で活動を始めた後の展開は、一気に文明レベルが第2ステージに入った感があり、さらに面白さが倍増しました。炉を作ってふいごで製鉄作業に励み、苦労を重ねて製造した鉄に雷を当てて磁石を確保、そこからついにエジソンの電球を復活させる。さらには化学の発展には必須のガラスを製造、近くの泉から硫酸を確保する。目指す目標に向けて千空が描いたものづくりのロードマップを見るだけで最高に楽しいです。

 

 ジャンプのマンガとして、バトル的なシーンや展開もあるにはありますが、それよりもものづくりで文明を発展させている方が面白いという、ジャンプの連載としてはやや変則的な作品でもあります。しかし、こうしたものづくりと技術の発展、コンテンツにおいてアクションや冒険と並ぶほどの娯楽要素ではないかと思うのです。最近ならライトノベルを中心に人気の異世界系作品、ゲームならマインクラフトや文明発展系のシミュレーションゲームがまさにそれですし、テレビならば「鉄腕DASH!」がまさにそうです。この「Dr.STONE」も、そのスケールの圧倒的な大きさから、ある意味こうした作品の究極系ではないかと思っています。

 

 もうひとつ、原作の作画担当・Boichi(ボウイチ)の圧倒的なビジュアルを、アニメでもほぼ完全に再現しているのも素晴らしいです。Boichiさんは、元々は青年誌で活動していた韓国出身の作家で、その圧倒的に緻密な作画レベルですでに大きな注目を集めていました。わたしがこの「Dr.STONE」に最初に注目したのも実はこれが理由で、「あのBoichiが少年ジャンプで連載?」と驚いたものです。
 青年誌でのリアルで写実的な作風に比べると、「Dr.STONE」はかなり少年マンガに寄った作画になっているようですが、それでもその重厚な作画の魅力は健在。アニメでもそのビジュアルをかなり高いレベルで再現していて、キャラクターの描写も壮大な背景も素晴らしいの一言。

 

 ついでに劇伴の音楽も印象に残るものばかりで、壮大な世界観を強烈にバックアップ。全体的に非常に贅沢なアニメ作品に仕上がっていて、昨今のアニメの技術レベルの高さを象徴しているような作品でもあると思います。ジャンプの人気作品でもありこれは2クール以上やるかと期待していましたが、期待通り2クール目の放送も告知されました。原作はかなり先までストーリーが進んでいますが、アニメでどこまでやるかまだまだ楽しみです。