「社畜さんは幽霊幼女に癒されたい。」

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 今月のガンガンの新連載社畜さんは幽霊幼女に癒されたい。」(有田イマリ)を遅ればせながら紹介したいと思います。今月からの新連載なのに、雑誌発売の数日前にコミックス1巻が先に発売されており、実は作者がTwitterに投稿したマンガを商業連載化したという、まさにいまどきのマンガ雑誌を象徴するような連載となっています。

 

 タイトルどおり、社畜と呼ばれるようなしんどい労働環境にあるIT会社に勤めるお姉さんが主役。深夜まで働く彼女の元に、出ると噂になっていた幽霊が現れますが、見つけたそれは見た目かわいい幼女。人を怖がりつつ必死に「たちされ・・・」を連呼するその幽霊に逆に癒された彼女は、それで元気をもらってその日の仕事をこなすようになる。そんなめちゃかわいいオフィスコメディ(?)になっています。

 

 最近ではブラック企業の労働環境がクローズアップされる世相を反映してか、こうした「社畜」的なキャラクターが登場するマンガやアニメが一気に増えていますが、これは社会問題になるような暗い部分よりも、幼女に癒されるお姉さんの和み描写に全力をかけているところに好感が持てます(笑)。過去作との比較で見ると、「小林さんちのメイドラゴン」の小林さんのイメージにちょっと近い。IT企業の社員が幼女に癒されるという点では、先日アニメ放送された「世話やきキツネの仙狐さん」とも共通したところがありますが、舞台が会社である点と主役のお姉さんのビジュアルや雰囲気では、小林さんのそれに最も通じるものがある。こうした作品が好きなら文句なく楽しめると思います。

 

 もともとは作者のTwitterアカウントに2月に投稿されたショートコミックの連作でした。しかし、これが公開直後から大ブレイク。思い切り「バズる」結果となり、Twitter界隈で大きな話題となっていました。それが、スクエニの手でついに商業化され、連載に先走るかのようにコミックスも発売。こちらには描き下ろしのコミックが45ページも掲載されており、Twitter掲載分と変わらぬ癒しを見せてくれます。

 

 作者の有田イマリさんは、昨年までガンガンで「はっぴぃヱンド。」というマンガを連載していました。かわいい絵柄ではこちらと共通していますが、内容は過激な描写も多いサイコSFのようなストーリーで、そのギャップに面白いものがあったと思います。しかし、読者の好みが割れるところもあったのか、大きなヒットまでは至らなかったと思いました。それが、連載終了直後に始めたTwitter投稿マンガが、こうして大ブレイクしてこちらもガンガンで連載されるまでに至るのだから、世の中何が起こるのか分からない。もともと絵は非常にかわいいところがあっただけに、こうしたコメディでも行けるのではないかと思っていましたが、予想以上の人気に驚いています。もともとガンガン作家だっただけに、これがガンガンでも雑誌を支える次のヒット作品になってくれるとうれしいですね。